第307話 情けない!

「──なるほど、それでカナデさんは引き返すと言われたわけですね?」


 ドリアードさんの所からの帰り道。

 きっと、彼女が言っていた目印なのだろう。

 小精霊が集まり、道のりに点々と、見るも綺麗な七色をした光の花を咲かせていた。


 そんな道中、俺は不思議そうにしているシバ君に、先程のやり取りの内容を説明し終えたところだ。


「あぁ、嫌な予感もしたしな。それに俺の世界には、触らぬ神に祟りなしって言葉があって、面倒ごとは関わるなって教えがあるんだよ」

 

「なるほど……勉強になります!」


 小精霊に負けず劣らず、目をキラキラと輝かせるシバ君。


 ……どうしよう、信じちゃったよ。


 教えってよりは俺の信念っていうか願いでもあるんだけど……。


『そんな大層なものじゃないシ……ただ関わりたくないだけカナ。その子いい子なのにカナデを慕うとか、見る目がないカナ……ダメになっちゃうシ』


 ……おい、それはどう言う意味だよ。


 なんか言葉にトゲがあるんだよな、もしかしてミコ、何か怒ってるのか?

 行きに無視したからか? それともミコとドリアードさんを、心の中で比較したから……。


『──両方カナ、プンプン!!』


 あ~……かなりご立腹みたいだ。


「──でもそれなら、あの魔石を壊す方法を探すのも手かもしれませんね。そうしたら浄化石も貰えそうじゃないですか? なんて……」


 俺の足は不意に止まった。

 シバ君は今なんて言った? 確か……。


「壊す方法を探す? って待てよ──!?」


 なんでその発想が出てこなかったんだよ!?

 物を斬るのは俺のアイデンティティーみたいなものだろ? 


「ドリアードさんは、じいちゃんは聖剣でさっきの魔石を斬ることは出来なかったって言ってた……。でも、俺の手元には聖剣ですら斬ることのできる無銘があるじゃないか!?」


 無意識に、じいちゃんが出来なかったから自分も出来ないって思ったのか……まったく、情けない!!


 今からでも遅くない、試してみる価値は十分にあるはず……。


「──カナデさん緊急事態です!!」


「ど、どうしたんだシバ君……まさか、レクスバジリスクがここに向かってるのか!?」


「いえ、先程も居た方からあの魔物の臭いがします……ドリアード様は無事なのでしょうか?」


 そうだ、彼女にレクスバジリスクの事も伝えていなかった。

 何やってるんだよ……ダメすぎるだろ!?


 すると突然、目の前を、紅葉した無数の葉が舞い落ちる──。

 おかしい、さっきまであんなに青々としてたのに……。


「カナデさん……葉が落ちて」


 これはきっと、何かあったに違いない……。

 面倒事が嫌とか、言ってられないよな。


「シバ君は一人でユニコーンの所まで戻れるか?」


「は、はい! 幸い、目印は残ったままなので……カナデさんは、どうするつもりなんですか?」


 そんなの……決まっている!


「じいちゃんの友人を放っておけるかよ! 俺は、ドリアードさんの様子を確認してくる!?」


「──カナデさん、危険です!?」


 シバ君が止める声も聞かず、ドリアードさんの居た広間に駆け出した。

 彼女の身に何かあった……そんな悪い予感を感じながら──。

 

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