第302話 麗しき伝鳥

「ふぅ、穴堀ってこんなにも大変なのか……」


 食事を終えると、手の空いた男どもはスコップを手に防御柵周りに穴堀を行っている。

 流石に地面を無銘で掘ることは出来ないからな。

 普通に土木作業……こんなにも大変なのか。

 

「カナデさん。アレ、カナデさん宛の伝鳥ですよね?」


 シバ君が指差す先に、半透明をした一羽の鳥が見える。

 あの色、それにじっと俺を見て居るところを見る限り、きっとティアからの連絡だろう。


 返事を送ってさほど経ってもいないけど、随分早いな。


「あぁ~……少しの間抜けていいか?」


 その問いかけに対し「ここは僕達に任せてくださ!」っと、熱く握り拳を作るシバ君。


 他のスコップ戦士達も、何故か黙って頷く。──何? この無駄に暑苦しい雰囲気、嫌いじゃないけど……。


 そんな彼らに対し、汗を拭いながら「すまない、ここは任せた!」と一言だけ残し、俺はその場を後にした──。



「ついてきてるな、やはり俺宛で間違いなさそうだ」


 人気の無い、森の入り口に向かう。

 浄化石に件だとは思うが、文通の内容を知られるのは、些かはばかられるものがあるからな。


「良し……ここなら誰もいないか?」


 周囲を確認後、地面に向かい指をさした。

 すると、俺についてきた伝鳥が指示した場所へと飛び姿を霧散させる。

 それは程なくして、地面の上に浮く文字へと姿を変えた──


『カナデ様のご連絡を受け、早速浄化石の情報を調べて参りました』っと……。


 ったく、本当にギルドの仕事をしてるのか?

 まぁ本音を言えば嬉しいし、助かるんだけど──お、文字が変わるぞ?


『しかし確認を取ったところ、残念ながらリベラティオには在庫の浄化石が無いようです』


 そうか……浄化石ってのは余程貴重なものみたいだな? 

 無いなら仕方がないし、他の手段を……。


『──しかし、ここで耳寄り情報です! カナデ様が居る開拓村から北に向かうと、獣人の住まう領地があります。そこの精霊の森と呼ばれている場所に、浄化石が有るとの情報を得ました、誉めてください!!』


 でかしたぞ! これで諦めなくて済む。

 後でお礼を言っておかないとな、じゃぁ早速、皆に……。


 ──って、まだ続きが?


『カナデ様の事なので、きっと向かいますよね? 現在、リベラティオ王がライオネルに立ち入る許可をとっております。結果は次の伝鳥で報告するので、少々お待ちください』


 まったく……ティアのやつ、良く分かってるじゃないか。

 麗しき観察者の二つ名伊達じゃないな。


『それでは……また』


「あぁ……またな?」


 文字に向かい、独り言のように呟いた。

 すると、伝鳥で出来た文字は繋がりハートに姿を変える……。──良かった! 周りに誰もいなくて良かった!?


 でもまぁ……面と向かうと照れるから、手紙で気持ちを表現されるの悪くないな……。


『じゃぁ、そう返事に書いておくシ! ティアリンに出すカナ、カナデが喜んでたカナ! って』


「──ってミコ! 余計なことするなって!?」


 浄化石、何とかなりそうだな?

 それにしても、中々この地に落ち着くことは出来ないみたいだな……。

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