第300話 作業割り振り

「それじゃ皆、手はず通りに頼むよ」


 水は容器に大量に、食料はそのまま直接大量にマジックバックに詰め込んで来たため、無人島生活のような食料から探す……なんて手順を踏まなくて良いのは助かる。


 事前の打ち合わせ通り、大工経験のある者に測量、丁張りをかけてもらう。


 一部の木材加工経験者には、建築予定箇所で邪魔になる木々の伐採。

 勿論伐採後の木々も有効利用していくつもりだ。

 ちなみに、俺はこちらのグループに参加している。


 そして何より、食料がある以上一番の優先は身の安全。

 該当しない者は、簡易的な防御柵の制作を行ってもらう。


「それではソインさん、残り二班の護衛お願いします」


「ああ、そちらも十分に気をつけるように」


 伐採班は俺を含めて二名とミコ。

 かなり少ない人数の割り振りだが、無銘があればさほど手間にはならないはず。


 風化した建物を中心に、北は廃墟の鍛冶場、その奥は紅葉が綺麗な山。

 南はリベラティオで、東には海へと続くだだっ広い平野。


 そして建物の西側には、池があり、その奥に森と川が通っている、目的地はその森。


 そして、歩いて程なくして──。


「村長、この木も伐ってもらっていいですか?」


 今回の目標は、川へと続く道の障害物となる木々の伐採。

 川から水が引ければ、そのまま飲み水には出来なくとも生活で使う水や、農業には活かせるはずだからな。


「分かった……ダズさん、離れてくれ──」


 今回、ペアで仕事をする仲間である、ダズさんに離れるよう声を掛けた。

 それにしても、いつしか村長が定着してる……。

 俺に与えられた領地なわけだし、断るのもおかしいよな。


「なるべく根本、この角度でお願いします」


「分かった、任せろ!」


 彼が伐採を行う木の指定をし、俺がそれを指示に従い伐るだけの作業。


 こちらの都合で伐り倒すが、致し方ない……確り有効利用するから、許してくれよ。


 無銘に触れ、目標を見定める──そこだ!!


「──よっと、倒れるぞー!」


 瞬く間の一閃……目標とした木が重さでズレ、大きな音を立て倒れていく。


 相変わらずの切れ味だ、ミコが居着いてくれてるから、自己修復もある、痛まない!!

 まさかこんな使われ方をするとは、じいちゃんも想像してなかっただろうな……。


 地球では竹を斬らせてもらったことはあるが、まさか俺も大木を伐る日が来るとは思っても見なかった。


「いやー流石村長! 凄く便利ですね!?」


「便利って……まぁいいや、次々指示をくれ、どんどん倒してくから」


 その後も、一本、二本と次々に斬っていく。

 彼の指示通り斬ると山に向かい、面白いほど倒れていく。


「よし、ダズさん次!」


 斬った木材はしばらくこのまま放置し、葉枯らし乾燥と言う手法で感想を行う。

 木の種類にもよるが、このまま三ヶ月近く寝かせて、木の水分が抜けるのを待つらしい。


「ダズさん──次!!」


 その後も、製材後に自然乾燥を行う。

 木材は乾燥工程を怠ると、割れや変形、強度にも影響するからな……。


 実際使えるのは、一年……いや、もっと先かもしれないな。


「まだまだ!」


 僕が一番、無銘をうまく使え……ってこの台詞は不味いか?

 理由ががある為、思う存分無銘が振るえる──こんな嬉しいことは……って止めとこ。


「──あの……村長?」


「どうした、問題か? それとも魔物か!?」


「い、いえ、少し伐採のペースが早くないですか?」


 ダズさんに言われ我に帰ると、昼前なのに目の前には川が見えていた……。

 距離にすると、二、三キロメール程あると思うのだが……。


「数日間のノルマ、終わってしまいましたね?」


 こ、これは流石に人間場馴れしすぎだろ?

 そうだ無銘、無銘が斬れすぎるから……。


「カナデ、今更だけどやっぱりヤバイやつカナ!!」


 俺はミコの言葉を否定する事が出来ず、その場に膝をついた。


 村に戻り、驚きと絶賛の嵐だったのは言うまでもない……。

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