第282話 パーティー会場2

 ん~……なんだろうな、女性と腕を組んでるのに──ってそんな事より。


「あの……つかぬことを御伺いしますがトゥナはここには来てないんですか?」


 俺もただ、食料の確保(仮)をしていたわけではない。


 当然、会場に居るかもしれない、トゥナとルームを探しながらだった訳で。

 しかしどれだけ探しても、彼女達を見つけることは出来なかったのだ。


「会場に来る際にも声は掛けたんだけどね。私はいい、とただそれだけさ。一緒にいたドワーフの少女も遠慮していたよ」


「そ、そうですか……部屋ですか」


 これは……避けられているって事かな?

 何日ここに居れるかは分からないが、旅立つ前にもう一度トゥナに会いたいな……。


「えっと、ちなみに部屋の場所は教えてもらうわけには──」


「意外と積極的じゃないか感心したぞ……とはいえ、教えてしまえば陛下に逆らうことになるし、なにより本人が望んでいない以上、私が教えるわけにもいかないだろう?」


「そう……ですよね」


 当然だよな、無理に聞いたら迷惑になるよな?

 そんな事を考えていると、ソインさんは突然目を丸くした。


「フォ、フォルテア様!?」


 フォルテア様──それって!?

 俺は振り返り、ソインさんの視線の先を追った。

 するとそこには、車椅子に乗った美しい獣人の女性と、それを押すメイド服の女性が立っていた。


「フォルテア──って確か、トゥナのお母さん!?」


 少し離れた位置に、車椅子に乗ったトゥナに良く似たケモミミ美人がいる。

 彼女がきっと……ソインさんが言っていた。


 トゥナの母らしき人は手招きをすると、そのままテラスの方へと去って行く。


「今、車椅子に? トゥナのお母さんは 足が悪いんですか?」

 

「車椅子……あぁ、いざり車のことか。私も詳しくは知らないけど、随分と昔から利用されているよ。一人で出歩くこともできず、不便している様子さ」


 なるほど……何かの病気なのだろうか?


「ところで今、手招きしてましたよね? ソインさん、どうぞ俺の事は気にしなくていいので、トゥナのお母さんのところに行ってください」


「君はまた……理解した上でとぼけてるだろう? 呼ばれたのは私ではなく君の方だ」


「う゛っ……やっぱりそうですよね?」


 気が重いな……しかし、見て見ぬふりって訳にも行かないよな?


「はぁ……本当に両親に挨拶することになるとは」


「安心していい。フォルテア様はお優しい方だ。まあ、陛下はなにやら藁人形を編んでいたようだけどね」


 藁人形って……。


「この世界にも、そんなのがあるんですね? 後、それは聞きたくなかったです」


 トゥナのおやじさん……いくらなんで親バカが過ぎるだろ?

 あぁー緊張してきた……行きたくないな。


「フォルトゥナ様に涙を流させたのは事実なんだ。男なら覚悟を決めることだね」


「ソインさん……実は少し楽しんでないですか?」


 組んでいた腕を離すと、ソインさんは手を高く掲げる──。


「ほら、フォルテア様を待たせるんじゃない!」


 そして俺を後押しするように、俺の背中をバチンッ! っと叩いたのだ。


「痛い──分かりましたよ、行ってきますよ……」


 俺はソインさんに見送られ、周囲の注目を集めながらも、嫌々ながらトゥナのお母さんのところに向かうことのなったのだった……。

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