第220話 囚われのカナデ?
「到着しましたね~……」
疲れているのだろうか? ハーモニーの表情が若干険しい気がする。
確かに今回の移動は中々にタイトな日程だったからな……。
俺が見ているのに気付いたのだろうか? ハーモニーは俺に振り向くと笑顔を見せた。
「カナデさんは、ここの物陰で待っていて下さい。私が話をつけにいきますので~」
──えっ、俺はお留守番なのか?
「いや、なるべく速く手にいれたいし手分けして情報収集しないか?」
ここで待っているだけなんて、出来るわけないだろ? 今この時でさえ居ても立っても居られないのに……。
しかし、俺の発言にハーモニーは険しい顔になった。
「それなら、尚更ここにいてください。本来他種族は、エルフの集落には簡単には入れないのです。カナデさんがいきなり乗り込んだら、警戒されてしまいますよ。私がこの集落の
そう言う事なら、我慢して待つのが得策か。でも歯がゆいな……。
結局俺は、ハーモニーについてきただけじゃないか? トゥナを助けるとか、息巻いて居たくせに……。
「大丈夫ですよ、事情を説明したら呼びに来ます。それまではここに居てください。くれぐれも、綺麗なエルフのお姉さんを見かけても、ホイホイついていかないで下さいよ~? くれぐれも! ですよ~?」
俺の表情を見て察してくれたのだろうか?
ハーモニーはフォローするかの様な発言と共に、冗談を口にする。
「あぁ、わかってるって……。振りだろ?」
「カナデさん……後でシバくので、覚悟しておいてくださいね?」
それだけ言葉にすると、ハーモニーは集落の中へと走っていった。──えっと、冗談……だよな?
そして、俺はしばらくの間暇をもてあそぶ事になった──。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「──ハーモニーのヤツ……中々帰ってこないな?」
どれ程時間がたったのか分からないが、ずいぶん待たされている気がする。
「カナデ、落ち着きが無いカナ。ボクを見習った方がいいと思うシ」
いつの間にかマジックバックから飛び出していたミコが、生トウモロコシにかじりつき、むさぼり食べていた。──おい、それ何処から取ってきたんだよ……。
俺は血の気が引いた……ハーモニーだけじゃなくミコもかよ! しかも二本も──。
「──おい、そこのお前!」
男の声に驚き、俺は声の主をゆっくりと見た……すると、ソコソコ体格の良い数名の男が、武器を持ち立ってたのだ。
──さ、最悪だ!!
「す、すみません、保護者は俺です! か、金を支払うので、どうか見逃してください!」
ミコがモロコシ食ってる所を見られた、現行犯だ!? ほらミコも謝れって、お前がモロコシを──って二本目食うんかい!
明らかに挙動不審になる俺の肩を、エルフの男が掴む。
──あ、終わった……。
「いいから来い……!」
きっと、俺はしょっぴかれるんだ。
エルフ達の法での窃盗罪……どれ程重い罪に問われるんだろうか?
俺は、肩を落としながら彼の後について行くことにした。──罪に問われるのもそうだけど、助かったとしてもハーモニーにシバかれないか?
綺麗なエルフのお兄さんなので、これはセーフなのだろうか。
集落に入るなり、俺はエルフの人達の視線に晒された。
ハーモニーも言ってたもんな? 普通多種族入れないって……。
まさか、それが軽犯罪を理由に入ることになろうとは。
「あ、あの? すみません……うちの馬達がそのままなのですが」
刺激しないように注意を払い、エルフの男に声を掛けた。──何とか時間を稼ぐことが出来れば、ハーモニーが助けに来てくれるかもしれない!
「こちらで面倒を見ておく……心配はない……」
「あ、ありがとうございます……」
何ら時間稼ぎにもならなかった。
トゥナごめんよ……こんなアホな理由で、助る事が出来ないかもしれない。
当事者であるミコは、人目も気にせずフワフワ着いてきながらもトウモロコシを食べている。
片側から順々に……丁寧に食べられているソレは、見事なまでに芯に実が残ってはいない。
ひとまず俺は、自らの状況を諦め集落を一望することにした。
木を切り抜いたような家屋が多数見られる。
木の無い場所は木造建築か、その建物も
そして上を見上げると、背の高い木々の間から太陽の光が差し込んでいる。森林浴と言ったところか──。
「──温かい感じで、良い雰囲気の集落だな」
本当、こんな状況でなければ心癒される風景なのにな……泣けてきそうだ。
どうやら今向かっているのは、目の前の一際背の高い巨大な木みたいだ。もしかして、木の監獄か?
「離れるなよ……迷子になる」
この男、凄い綺麗な顔立ちなのに無愛想だな。
俺に嫌悪感を持っているのか? イケメンなのに勿体無い……。
巨大な木に付いている、入り口らしい扉を潜り中に入ると、木の中心が吹き抜けになっていた。
そして、その外側は
男は黙ったまま、階段を登っていく。──手すりがあるとは言え……上の方は中々スリルがありそうだ。
上へと昇る最中、階段の道中にはいくつかの扉がある。
恐らく、この部屋一つ一つが牢屋にでもなってるのだろう……。
「あ、あの? まだ上に上がるんですか? そんなに景色がいい部屋じゃ無くてもいいんですが……」
エルフの男は、俺の声に反応しようとしない。よっぽど俺の事が嫌いなのだろうか?
結局その後、最上階まで昇る羽目となった……。
せめてもの救いは、最上階のここだけ一面床になっており下が見えないことだろうか?
「さぁ……早く中に入れ」
それだけ言うと男は扉をノックし、誰かの返事と共に扉を開けるのであった……。
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