第219話 エルフの集落 アウラ

「──カナデさん……カナデさん起きてください」


 まだ日も昇っていない時刻、辺りは闇に覆われている。

 塩湖までの道のりはハーモニーが仮眠を取っていたため、今回は俺が眠っていたのだが……。


「な、なぁ? 俺、始めからこんな所で寝てたか?」


 昨晩食事を取った後、二人と言うこともあり俺はハーモニーと星を見ながら雑談をして、その場で横になって寝てたはずだ。

 しかし何故か、起きたらハーモニーが俺を見下ろす様に見ており、頭の下には柔らかい感触がしている……。


「こんな所で、頭を地面につけて寝たら砂まみれになっちゃいますからね~……あ、塩まみれですかね? ですからコッソリ、カナデさんの頭を乗っけてしまいました」


 うっすらと頬を染めながらも、今日はいつものように顔を背けはしない。

 まるで、俺が照れている姿を楽しんでいるようだ……。──そうか、これは夢じゃ無いのか。って、おかしい! そんな癒し系キャラじゃないだろ!? トゥナが調子を悪くしたぐらいから、絶対におかしいって!


「な、なぁハーモニー、何かあったんじゃないか? 様子がおかしいぞ?」


「う~ん……そうですね。少し足が痺れてはいますかね~?」


 彼女の言葉を聞き「ご、ごめん!」っと言いながら、俺は慌てて起きた。


 逃げるように離れた俺をジッと見つめ、ハーモニーが俺に向かって指をさした。


「私が丸めた頭も、もう随分伸びてきましたね~? もう一度やりましょうか~?」


「──やらないからな!」


 ハーモニーはクスクスと笑いながらも、自分についた汚れを払い落とした。──なんか、誤魔化された気もするな……。


 不意に周囲を見ると、辺りはいつの間にか霧が立ち込めている。

 そこまで深くは無いものの、もし俺だけであったなら迷子は間違いなかっただろう。


「──カナデ、カナデ。こんな時、リア充爆発しろって言えば良かったのカナ?」


「ミコも起きてたのかよ……誰からそんな汚い言葉習ったんだ?」


 誰かは知らないが、うちの精霊に余計なことを吹き込まないで貰いたいものだ。すぐ影響されて──。


「──カナデがよく、カップルがイチャイチャしてた時に、割りと本気で念話で呟いてたカナ……妬みが凄かったモン」


 ミコさん、日常生活で人の頭の中を覗くのは止めてもらおうか?


「と、所で、オスコーンとメスコーンの様子はどうだ?」


「はい、もう二頭とも起きてますよ~?」


 俺の声が聞こえたのだろうか? メスコーンが霧の中から姿を表す。その後を続くようにオスコーンも着いてきた様だ。

 念のために鑑定眼で、オスコーンとメスコーンを確認した……。


「よし、オスコーンもメスコーンも、バッチリ回復してるな?」


 さて、早めに片付けて集落に向かわないとな。向かうにしても、この霧の中道が分かるのだろうか……?


「カナデさん、急ぎましょうか? この子達の足なら、日が昇る頃には着くはずです!」


 うん、どうやら大丈夫のようだな。


「あぁ、ちゃっちゃと片付けるぞ」


 俺は片付け、ハーモニーはユニコーン達を馬車に繋いでいく。 そして支度を終え、俺達は馬車に乗り込んだ。


 馬車は霧が立ち込める森の中を、奥に奥にと進んでいく。


「な、なぁ? どんどん霧が濃くなってるけど……大丈夫なんだよな?」


「大丈夫ですから信用してください。この森は、侵入者を迷わせる為に常にこんな感じなんですよ、エルフの案内役が居れば、迷うことはありません!」


 おぉ~チビッ子がたくましい!

 あれ? 今更ながら、チビッ子に手を引かれるように道案内されてるな……俺。


 更に奥に進むと、今度は霧は薄くなって行く。

 

 朝日が昇り始めたのだろうか? 薄暗かったかった森が色付いて行きた……。

 青々とした木々に色とりどりの花々、鳥のさえずりまで聞こえて来たぞ?

 童話に出てくるような、妖精やエルフが住む森のイメージその物だ。


「──カナデさん……見えました、あそこがエルフの集落アウラです」


「あれが、エルフの……。エルクシルもあそこにあるかもしれないんだな?」


 握る拳に、自然と力が入った。何としてでも、エルクシルを手にいれないと。

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