第217話 食事と休息
「カナデさん、材料持ってきましたよ~!」
森の方からこちらに向かい、大きな声を出すハーモニー。
俺はそんな彼女に自分の口に人差し指を当て、静かにするように促した。
「す、すみません……ミコちゃんとユニコーン達が寝てましたね」
岸についた俺達はユニコーン達を休めるために、いつもの様に焚き火を囲い休憩と食事を取ることにした。
「食料って、いったいどこに行ってたんだよ。ハーモニー……その手に持っているのは何なんだ?」
目の前から近づくハーモニーの両手には、何やら緑のものが握られていた。
「あれ、カナデさんはコレ知らないんですか~?」
ハーモニーは両手に一本ずつそれを持ち、顔の横に縦に持つ。
「トウモロコシです~!」
うわぁ~……なんだろ、この素朴な感じ。
ハーモニーのやつトウモロコシものスッゴい似合うな。──って違う! なんでそんな物もってんだよ。
エルフの大陸では、トウモロコシは自生してるものなのか?
考えられなくも無いが、形がすこぶるいいぞ。
「それって何処にあったんだ? 色々使えるし、他にもあるようならもっと欲しいけど」
「これですか? このトウモロコシしならあちらの方に畑があって……」
「──おいチビッ子! それは野菜泥棒って言うんだぞ!?」
俺の発言に、目の前で「チビッ子じゃないです!」と怒るハーモニー。
この子、なにしれっと盗難してるんだよ……。
「いいんですよ。エルフ間では【同胞同士は分かち合う!】がモットーですからね~」
エルフの仕来たりは知らないけど、もし怒られるような事があればハーモニーに謝らせよう。
きっと大丈夫だ。見た目は子供、中身は大人。大人は誰しもチビッ子には弱いからな……。
「カナデさん……今失礼な事を考えてましたよね~?」
「お、よく分かったな?」
俺の一言で怒ったのだろうか? ハーモニーがトウモロコシを振りかぶった。
「わ、悪かった! 悪かったから野菜で殴るな!」
しかし、振り下ろされたトウモロコシは俺に当たることはなく、目の前で寸止めされたのだった。
「罰です……今晩はカナデさんが食事当番です!」
どうやら、痛い思いはしなくても済みそうだ。
「……はい、よろこんで」
ハーモニーからトウモロコシを受け取り、今晩のメニューを考える。
マジックバックから、各町でこっそり集めていた食材や調味料を出し、にらめっこする。
パンが結構残ってるな。後は比較的玉ねぎが多いか? 調味料は……醤油とバター、後は砂糖が少しあるな。一品は焼きトウモロコシもう一品はコーンスープにするか?
乾燥した爆裂種のトウモロコシがあれば、ポップコーン何かも良かったかもしれないな……。
何処かで見かけるようなことがあれば、いつか作ってみてもいいかもな?
「ポップコーンが作れれば、ミコを静かにさせるには丁度いいかもな?」
そんなことを考え、ニヤけながらも俺は調理を開始しすることにした。
一本は皮事塩水に浸け、もう一本は皮を剥き、髭を取る。
皮を剥いた方は身だけを取り出し、芯を捨てず適当に切り分けた。
「前々から思ってはいましたけど……カナデさん、本当に手際がいいですよね」
玉ねぎも洗い、皮を剥き薄切りにスライスしていく。
「そうか……? まぁ、うちは一緒に住んでいたじいちゃんが、あまり料理をやりたがらなかったからな? あ、ハーモニーこれ皮の上から焼いておいてくれ」
塩水に浸けておいたトウモロコシを渡す、焼くのは彼女に任せよう。
焼きトウモロコシは直接身を焼いても良いが、皮の上から火を通すことによって、食べたときの実の食感が変わるのだ。
「はい、分かりました~。カナデさんのおじいさんのお話……興味ありますね~。どんな人だったんですか?」
俺はハーモニーの言葉に一瞬手が止まり、再度ポタージュ作りを開始した。
薄切りにした玉ねぎを、バターと一緒に火から遠ざけながら、弱火で炒めていく。
「う~ん、そうだな? 一言で言えば職人……だったのかな?」
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