第210話 終結、ストーキングキング 3

「──グハァ!」


 あっ……!


 しまった、思いのほか強めに殴ってしまった!


 ストーキングキングの顔を見たら、何故かイラっとして手加減抜きに普通に殴ってしまったのだ。

 頬に拳がめり込み、ストーキングキングは顔が歪み、足が浮き、半回転して地面にうつ伏せに倒れてしまう。


「お、おい……大丈夫か?」


「う、う、う、うるせぇ! 敵を心配してんじゃねぇよ!」


 ──ごもっともだ。


 それにして驚いた……。あれだけぶっ飛んだのに、立ち上がろうとしてるじゃないか……?

 こいつの長所、一つだけ見つけることができたかな──とっても、しぶとそうだ。


 それに、火球までもが中々にしぶとい……まだまだ消える様子がない。

 お約束の展開だと、相手の意識を刈り取ればいいのか? もしくは……。


 俺は火球を避けながら、ストーキングキングに声を掛けた。


「手……貸そうか?」


「ば、ばか野郎! 哀れむんじゃねぇよ! ま、まだまだ余裕だ、かかってこい!」


 膝に手をつき、なんとか立ち上がろうとしているようだ……。──もう諦めてくれないかな。弱いものイジメをしている気分だ……。


 その後も、何度も何度も殴り倒すがストーキングキングは諦めはしない……。


「そ……そろそろ疲れてきたんじゃないか? そ、そ、そ……そんな拳で、俺様をた、た、倒そうとか、ちゃんちゃらおかしいぜ 」


 虫の息のストーキングキングが、俺を指差し虚勢きょせいを張った。──足が生まれたての小鹿のようになってるぞ……。どうしたものか。


 しぶとい相手が、こんなにも厄介だとは思わなかった。

 どれだけ奴を痛め付けても、当然のように火球は疲れを知らない。


「もう十分だろ。奴の魔法をなんとかするか……」


 彼の不屈の意識……それは、この魔法に対する信頼なのかも知れない。

 自分が倒れなければ、魔法で相手を倒せると……。


「ストーキングキング……これが、三つ目の弱点だ」


 俺は火球から、距離を取るように走り出した。


 三つ目の弱点それはすなわち、奴の炎は操作しているのでは無く、俺を追跡していると言うことだ。


 本来、打ち合いの時に気づいて欲しかった。

 戦いながら、奴に火球が当たらない様に、俺が気を使って誘導しながら立ち回ってた事を……。


 俺は、そのまま噴水を飛び越えた。火球と俺は、噴水を挟み直線上に並ぶ。

 言うまでもない。結果、ストーキングキングの魔法は噴水に突っ込み、小さな音を立て呆気なく消えてしまった。


「う、嘘だろ?」


 ストーキングキングは、力無く驚きの声をあげた……。

 他にもこいつの弱点は山ほどある。しかし、これ以上教えてやるほど、俺は優しくない!


「──嘘じゃないさ」


 俺は噴水の中を突き抜け、ストーキングキングの死角を突き奇襲を仕掛けた。そして、サービスで決定的な弱点を教えてやることにした……。


「四つ目の弱点……。お前自身が、弱すぎるんだよ!!」


 抜刀の構えを取って飛び出した俺は、刹那の一閃を奴に浴びせる…………つもりであった。


「──メスコーン、駄目です! そっちは人集りです~!」


 噴水から飛び出した俺は、顔に激しい衝撃を受け、かなりの距離空中を舞うことになった。

 そして、痛みと共に地面に激突しのだ。──い、いてぇ……! メ、メスコーン……? どっかで聞いた名前と声だな。


「ちょっとメスコーン! い、今、轢きましたよ! 何をしてるんですか~!」


 やっぱりそうだ、ハーモニーが迎えに。


 んっ……轢かれたって……誰がだ。も、もしかして…………俺か?


「カ、カナデ様! 大丈夫ですか!」

「え! 今の人、カナデさんだったんですか~!」


 何とか体を起こそうとするものの、力が入らない……。

 その時、誰かが俺の新しい甚平を引っ張った感じと同時に、馬の鳴き声が聞こえたような気がした。


「んっ……誰カナ。とったぞぉ~~って大声出したの……。目がパチパチカナ……」


 その馬の声を聞いてか、マジックバックからミコが顔を覗かせた。──状況は全然分からないけど……なんとかしなければ……。


「ミ、ミコ……顔を出す……な」


 朦朧もうろうとする意識の中で、辛うじてそれだけ口にした俺は、その後すぐスッと意識を失ってしまったのだ……。




 

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