第208話 対決、ストーキングキング
「貴様……この俺をコケにしやがって!」
これでも結構紳士な対応をしたつもりだったのにな?
サーベルを構え、臨戦態勢を取るストーキングキング。
さて……相手がどう思ってるかは知らないが、向こうが真剣を抜いている以上これは試合ではない……死合だ。
気を抜くわけには行かないな。
「貴様、そんな木剣で俺様と殺し合う気か? 舐めるのも大概にしろよ!」
「ん? お前にはこれが
左手に持っている木刀を見せつける。──確かに本来、訓練用の物ではあるのは間違いない。しかし、奴は勘違いしている……名に刀と付くのは伊達ではない!
「刃は着いていないが、これでも相手を殺すことが出来る。そして、ストーキングキング! 今からこれが、お前の心と意志を殺すんだ。それにはコイツが適してるんだよ」
「──その呼び方やめい! くそ……舐めやがって。後で後悔しても知らないからな!」
ストーキングキングは叫び声をあげ、片手で下段にサーベルを構えたまま距離を詰め寄ってきた。
俺に向かい、サーベルを下段から斬り上げた。それを半身下がり、ギリギリの所で回避する。──初撃は……様子見だな?
「──上手いこと避けるじゃねぇか!」
大きく踏み込むストーキングキングは、今度は振り上げたサーベルを力強く斬り下ろした。──遅い……避けるのは簡単だが!
タイミングを計り、俺は木刀を鞘から引き抜いた!
そして抜刀の一振りは、金属に当たる甲高い音を響かせたのだ。
「──っな!」
ストーキングキングは、木刀で真剣を弾いたことに驚いている様だ。
それもそうだろう、普通に打ち合えば木刀に刃が食い込むか、場合によれば斬れるハズなのだから……。相手からしたら、驚くのは当然だ。
しかし、そのカラクリはそう難しいものではない。
「き、貴様、一体何をしやがった!」
「ん、見えなかったか?」
これ以上ティアに付きまとわせない為にも……ここでヤツの心を刈り取らないといけない……。──本気で行く!!
「──力動眼!」
俺のスキル発動と共に、ストーキングキングが動き出した。
奴が、全身を強ばらせているのが分かる。次は、一撃や二撃だけでは無い!
ストーキングキングは、右に左に、上に下にと次々とサーベルを振り回した。
その攻撃は、型などの洗練されたものではなく、ただひたすら
力動眼で相手の動き出しを先読みし、タイミングを合わせ、ストーキングキングの斬撃を抜刀で、全て切り落としてやった。──どうだ! 剣士であれば、心が折れるほど屈辱だろ!
「──く、くそ! 当たれ!」
攻撃が一切当たらず、奴の顔が次第に歪んでいく。
次々と放たれる連撃は次第に遅くなって行き、ストーキングキングの表情に疲労の色が見える。
そして何十本も打ち込むと、ストーキングキングの攻撃は止まった。
「おい──この程度か?」
周囲にはいつの間にか人集りができていて「お、おい、アイツ何者なんだよ……」との声も聞こえる。
よくよく見ると、さっきギルドにいた人間も大勢見られた。──野次馬かよ……止めに入れよな?
相当疲れたのだろう、肩で息をするストーキングキング。
それもその筈だ。特別大きくはないサーベルとは言え一キロ以上はあり、長さも七百mm程あるんだ。
そんなものを無呼吸であれだけ振るえば、疲れない訳がない。例えるなら、バットを振り回す様なものだからな。しかも奴は片手でだ。
「──はは……はっはっはは」
ストーキングキングは、サーベルを持っていない手で額を抱え、急に笑いだしたのだ。
なんだアイツ……急に笑いだして、俺がやり過ぎておかしくなったか?
「あ~認めよう、貴様は強い! 俺様が貴様の事を、ライバルと認めてやる!」
……い、いや。遠慮したいんだけど。
左手を前に真っ直ぐ向け、手を開いて俺に向けてきた。──こいつ……結局の所、何が言いたいんだ?
「貴様はもちろん、俺様が片手で剣を振っていたことには気づいていただろ? 何故片手剣士が盾も持たないのか……って思ってたんだろ?」
いや、片手なのは知ってたけどそこまでは……。
って言うか、正直なところ、お前にはそれほど興味は無いよ、怒りそうだから言わないけど……。
「理由を教えてやろう! それは、俺様が魔法も使う剣士だから、なのだよ!」
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