第154話 マール到着 ギルドにて
「あの~ティアさん。その布、従魔の証しなんですよね? なんでこんなに注目を浴びてるんですか……?」
町の門にさし掛かると、俺達は早速多くの人々から何故か注目を集めることになったのだ……。
「それはそうですよ。三人の清き乙女達が、従魔の証しを巻いたユニコーンを町に二頭も連れ歩いているのですから、目につかないわけがありません」
三人のって……そこは譲らないのか?
あぁ~、三人ってのはミコを含めて三人なのか……なんて突っ込みはやめておいた方がいいな。不機嫌になるのは目に見えている。
俺達がギルドに向かい歩き出すと、町の人々が道を開けるように次々と避けていく……。──流石に布を巻いていても、恐れられるものみたいだな?
町のメイン通りのを抜けようとした。しかしその時──トゥナが急にふらつき、倒れそうになったのだ!
「──大丈夫かトゥナ、どうかした!?」
「カナデ君……ごめんなさい。少し人に酔ったのかしら? 気持ちが悪いから、先に宿屋に戻っていいかな?」
疲れが出たのか? 言われてみれば、若干顔色が悪い……。ふらついている彼女を一人で帰すのは心配だ。
「ハーモニー、一緒に着いてやってくれくれないか?」
ギルド職員のティアと、ユニコーン達と会話が出来る俺がギルドに向かった方が良いだろう。
ティアが若干ごねたものの、理由を説明したら何とか納得してくれた。──俺だって本当はついていってやりたいけど……ユニコーンを連れたままギルドに報告に行かないわけにもいかないしな。
「ハーモニー頼んだぞ? トゥナも無理しないように」
二班に別れ、俺はギルドに向かった。──心配だが、ハーモニーがいれば大丈夫だろう。ティアに付き添いさせたら、その方が気が気じゃないしな……。
ギルドに到着すると、まずユニコーン達をギルドの
「大人しくしておくんだぞ?」
っと一言だけ残し、俺達はギルドの中に向かった。
去り際に、メスコーンの叫び声が木霊し、オスコーンが俺を睨んでるような気がしたんだが……。
「通訳するカナ?」っとミコが聞いてきたが丁重にお断りした。何となく内容は察しがつくからな……。
ギルドの建物内に入ると、中は中でユニコーンの話で持ちきりだ。──どうやらすでに噂になってるようだ……見世物になった気分だな。
「エ、エルピスの方々、無事にお帰りになられて何よりです! この度はこちらの不手際、誠に申し訳ありませんでした!」
白いスカーフをネクタイのように巻いた、ギルド職員服に身を包んだ男が慌てるように俺達の元に来ると、そう言いながら頭を下げた。
それと同じくして次々と他の職員も頭を下げていく……。──あれ、デジャブだぞ?
「い、いえ。あなた方が悪いわけでは無いので。それより報告をしたいのですが」
俺がそう言うと、彼は慌てた様に「は、はい。申し訳ありません! ささ、こちらへどうぞ!」と、俺とティアをギルドの奥に招待した。──普通の受け付けじゃないのかよ……完全にVIP対偶だな。
そのまま俺達は、客間の様な部屋に通され椅子を勧められた。スカーフの男がテーブルを挟み俺達の対面に座る。
「ご挨拶が遅れました。私が当ギルドのマスターをしている、アモルっと申します。どうぞお見知りおきを」
──って、ギルドマスター自ら登場して頭を下げたのかよ! なんて腰の低い……。
それだけ馬車の件が切羽詰まっていたのだろうか?
「はじめまして、俺はエルピスのリーダーしているカナデです。彼女はご存じだと思いますが、ティアと言います」
俺が紹介するとティアは「よろしくお願いします」と、いつもの姿とはかけ離れた、汚れや曇りのない日溜まりのような笑顔を彼に向けたのだ。──どちら様でしょうか……?
「ふっふっふ、存じておりますよ? 【ギルドの麗しき観察者】を知らないものは、この大陸の職員にはいませんよ」
俺は彼の発言を聞き、ティアを見た。──麗しき観察者って……ぷっ。
それが恥ずかしかったのだろう、ティアは俺に顔を見られないよう、横を向いた。しばらくはこれでからかってやろう。
「おほん……。所でアモル様、今回の依頼の報酬の件なのですが?」
正面に向き直ったティアは、わざとらしい咳払いと共に話を切り出した。
「はい、荷馬車の準備は完璧です。後はユニコーンと繋ぐだけで良いかと。依頼料はこちらですね、確認をお願いします」
それだけ言うと、テーブルの上にお金が入った袋を乗せ、その中身をティアが確認する。
何だろう? お金の管理は完全に任せっきりになってるな……そのうちお小遣い制になりそうだ。
──トン、トン、トン、トン
部屋の扉をノックされた音に「はい、どうぞ」と、ギルドマスターの男が返事をすると扉を明け一人のメイドが現れた。
彼女は「粗茶ですが」と、俺達の前に紅茶の様な飲み物とお茶菓子を出してきたのだ。──報告もほぼ終わった、このタイミングで?
その際、隣に座ってるティアが俺の方から見ると、自分の震える右手を反対の手で押さえながら、つねっている姿が視界に入った。──偉いぞティア! 触りたかったんだよな? スケッチしたかったんだよな……? よく我慢した!
折角なので、俺はその飲み物を頂くことに。おどろいた、味は完璧にレモンティーだ……。このお茶菓子も美味しいぞ?
「──所で、ご迷惑を掛けたばかりで恐縮なのですが、一つ依頼をお願いしたいと思いまして……」
なるほど、このタイミングでお茶を出してきたのはそう言うことなわけなんだな?
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