第153話 ジャングルからの帰還
「カナデさん、起きて下さい~! カナデさん!」
ん……ハーモニーの声か。
ダメだ、昨日全然寝付けなくて、寝不足……あれ? 俺は何で寝付けなかったんだっけ……まぁいいか?
「うぅ~ん、後五分……」
そう言いながら、俺は腹に掛けていた外套を暑かったので蹴り飛ばし、ハーモニーがいると思われる方と反対を向いた。
「後五分? 良く分かりませんが、もう少し寝かせてほしいって事ですね~? 仕方ないですね……よいしょ!」
潔く引き下がったのか? まぁいいか……もう少し睡眠を。
俺は、そのまま
ジャングル内のためか、朝早くでも熱くて蒸す……。でも今みたいに、時たま顔に掛かるほのかなか風は少し気持ちいいかも…………。
──って、なんでテントの中で風が吹くんだよ!
俺はその疑問の答えを知るために、重い
「──ハーモニー……何やってるんだ?」
「カ、カナデさん~! 起きられたのですね~……?」
反対側を向いて距離を取ったはずの彼女が、あろうことか俺の目の前で寝そべっていた。そして俺の顔を、食い入るようにじっと見つめているのだが……。
「カ、カナデさんを起こす為です! ほ、ほら? 目の前に顔があれば、起こし忘れる事ないじゃないですか~……」
おい、声が裏返ってんぞ。
ジャングルの熱気のせいなのだろうか?
「起こしてくれてありがとう……」
危機感を感じたので、お礼を述べて簡単に身支度をする。手早く準備を済ませ、あえて何も追及せずに外に出た……。
何故かそれが、お互いのためだと思ったのだ。
テントを出てすぐ側ではトゥナ達が、肉を取り終えた巨大ワニの使える素材を回収し、使えない部分を地面に埋めているようだ。
「カナデ君、おはよう。ハーモニーも起こすのにかなり手間取ったのね? 中々戻らないから、これが終わったら行こうと思ってたのよ?」
トゥナの発言を聞き「ご、ごめんなさい~。な、中々起きなかったんですよ~」と、明らかな動揺を見せるハーモニー。──この様子だと、もしかして二度寝をする前から……何て事は無いよな?
トゥナとハーモニーが話してる奥で、鼻を押さえ口パクで「尊いです……」とティア言っているのが、残念ながら分かってしまった。
「──あれ、トゥナ。今日は帽子なのか?」
俺は彼女につい指をさし、いつもとの違いを指摘した。──耳が出るの早すぎないか? 前から二十日も立っていない気がするんだけど。
俺の発言を聞き、ハーモニーとティアがすごい目つきに。それを見て気づかされた。──少しデリカシーが掛けていたな……。
「あ~……うん。今回は少し早いみたいね? 環境が随分変わったからバランスがおかしいのかもね?」
そう言った変化もあるのか? なんにせよ、今日は耳トゥナさんなのか。あわよくば……いやダメだ、触るのは流石に不味い!
「──皆様、それより早く片付けて村に帰りませんか? どうせ戻るだけです。涼しいうちの方が楽だと思いますが?」
おっと、ティアの発言は最もだ。
俺達は勿論異論もなく片付けを始めていく……。
ゴミや忘れ物を残さないようにマジックバックに入れる。
炭も火がついている最中の物でも、余ったら金属の入れ物に火箸で入れて蓋をしておく。
中の酸素が無くなれば自然と鎮火するのだ。──これを次の火起こしで使うと火がつきやすいんだよな。入れ物も熱くなってるからやけどに注意だけど。
まとめた荷物を、全てをマジックバックに詰め込んで、昨日来た道を戻りマールの村に俺達は戻る。……新しい二頭の仲間をつれて。
その道中、気になったことがあったので、皆に聞いてみることにした。
「なぁ、ところでユニコーンって分類は魔物なんだろう? 町に連れ込んで大丈夫なのか?」
ギルドからの依頼だ、まさか捕まえてきて町には入れるな! っとは言うまい……。何かしらの方法でもあるのだろう。
「あ~……はい。ちょっと待ってくださいね?」
それだけ言葉にすると、ティアは自分の荷物入れから二本の赤い布を出した。
「これをその魔物が一番危険な部分……ユニコーン様達で言う所の角、昨晩戦ったワニ様でしたら口ですかね? そこに結ぶのです。飼い慣らされた魔物でもない限り、当然嫌がるので安全を証明出来るのですよ。テイマーの方々の為に世界規格で統一されてるルールですね」
なるほど首輪変りか。
意味は分かるし納得はした。だだ……一つ問題がある。
俺はメスコーンの角に、赤い布でリボン状に縛り付けた。──二頭の身体的差が分かりにくいから丁度良かったかもな?
──問題は……。
オスコーンはその様子を見てか、明らかにご機嫌が悪く、俺を威嚇しているようだ。
こいつのはどうつけたら良いものだろうか……?
結局町に着く寸前まで、オスコーンは激しい抵抗を見せ俺は全身ボロボロに……。
最終的に、メスコーンがおだてたことにより、何とか布をつけることに成功したのだった。
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