第155話 ギルドマスターからの依頼
「ひとまず、お話を聞きますよ?」
内容も聞かずに受けるも受けないも無いしな?
俺は紅茶をすすりながら、彼の話を聞くことにした。
「それでは簡単にご説明させていただきます。なるべく早く、出来れば明日の朝出発していただきラクリマ村の状況調査をお願いしたいのです……。実は今まで定期的に取っていた、村のギルドとの連絡が途絶えていまして……」
連絡が途絶える……? 連絡用の魔法が使える人が怪我でもしたのか。
「アモル様、具体的にどれぐらいの期間連絡が途絶えているのでしょうか? わざわざ私共に依頼を頼むと言う事は、昨日今日の話ではないですよね? ギルドの方で何か対策等はなされてないのでしょうか」
確かに、ティアが言うようにわざわざ俺達に頼むのはおかしいよな? 面倒事の予感がプンプンするぞ……。
「四日前ですね……。実はその事が気がかりで、三日前状況確認に向かわせたクランからも連絡が途絶えまして。実のところ、その原因も不明なのです。当方はこの状況を重く受け止めているのですが……」
よ、四日前って! しかも、何人組かわからないが調査に向かったクランから連絡もないって……厄介事確定だろ、それ。
うーん、それにしてもラクリマ村。どっかで聞いたことある名前だな?
「ラクリマ村って?」
「はい、私たちの次の目的地ですね」
俺はティアに質問をすると、冗談も茶化しも無く、とてもいい笑顔で説明をしてくれた。──出来る方のティア……調子が狂う。
「連絡方法はティアさんの伝鳥で構いません、支払いは前払いでよろしいので何とかお願いしたく……。次の目的地はあの村と聞いてます。それならワザワザこちらに戻ってくることもないですよね、何とかお願いできないでしょうか?」
通り道で、状況確認と報告だけか……。まぁ、悩むまでもないか。
さて、どう答えたら良いものかな?
茶菓子に手を伸ばして、それを口に入れる。──この茶菓子……蜂蜜味のクッキーか? 中々美味しいな。
俺は出されたお茶菓子をバクバク食べ、ギルドマスターの目を盗んでは、さっきから寄越せとマジックバックで暴れているミコに上納する。
「それで……どうでしょうか?」
「依頼の件ですか? お断りします」
「──っは?」
まさか断られるとは思わなかったのだろう。アモルはすっとんきょうな声をあげ、驚いているようだ。
「カナデ様……よくそんなバクバク食べながら、お断りできますね……」
呆気にとられた顔で、トゥナポーズ取るティア。──あれ? 不味かったか?
「だって、それとこれとは話は別だろ? 美味しいものには罪はない!」
マジックバックからは同意するかのように「そうカナ!」と、俺にだけ聞こえる小さな声が……。──俺ももしかしてミコと同じレベルか?
アモルは、困った面持ちで「よろしければ、理由をお聞きしても?」と質問をしてきた。
「まぁ、いくつか理由はありますけどね? モゴモゴ、大きくモゴモゴ、二つですかね?」
「カナデ様……食べるのは後にされては?」
だって甘いものなんて久しぶりなんだぞ? 前の蜂蜜もミコに全部食われてたし……。
「か、構いません……それよりも理由の方を……」
顔をひきつらせながらも、本題を優先するアモル……そう言う余裕の無いところも理由の一つなんだけどな?
俺は口の中の物を飲み込み、理由を答える事にした。
「俺達は無謀者でも、世界を救って回る英雄でも無いんです。仲間の命を預かってる以上、そんな不確かな情報だけで動く事は出来ませんよ」
その為の調査隊なのだろうが、俺達がそれをやらなくても良いだろう?
マジックバックもあるから、無理に危険に近づかなくても補給なしで遠回りすればいい。物資は足りるからな。
「……もう一つを、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
今の話を聞き、アモルは交渉の余地でもあると思ったのだろうか? 俺から二つ目の質問を聞き出そうとした。
「もう一つは……まぁ~こちらの事なんですけどね? 仲間の一人が体調が優れないんですよ。この町からの移動は、その様子を見てと思っていまして。なので出発の日取りはお約束できません」
「カナデ様…………」
体調不良だって、舐めてたら痛い目にあう。得に冒険は命掛けだしな?
「貴方は変わった冒険者だ……。過去の依頼内容を見る限り、そんな慎重者だとは誰しも思いませんよ? 正直なところ、名をあげたい無謀者だと思ってました」
……確かにそう見えるかもな? でも俺は誇りも名声もいらない。
仲間の命と、自分の命が守れればそれでいい。
「ただの臆病者ですよ? あ、これ。おかわりあります?」
俺の発言にアモルは腹を抱えて笑い、ティアは恥ずかしそうに俺をはたく……。──ユニコーンの件でストレス抱えたんだ、これぐらいいいだろ?
「はっはっは、分かりました。実のところ前回消息を断ったクランは、この町のトップだったのです。彼らが手に終えないとなると……魔物の
アモルは立ち上がると、何やら傍らに立たせていたメイドに耳打ちをした。──おかわりだろうか?
「それではお話もキリがついたので、この辺りにしましょうか? 今おみあげも準備しております。お仲間の方にも是非持っていってください。お詫びの気持ちです」
「断って何ですが、大丈夫なんですか?」
俺の言葉に困ったような顔をするアモルだが……。
「そうですね、もう一つ奥の村のアウラダのギルドに確認を取りますよ。もしかしたら高ランクのクランがいるかもしれませんしね?」
可能性でしかないと……。ギルドも八方塞がりのようだな? 俺達は手伝うことが出来ないが、彼らには頑張ってもらいたいものだ。
「もし、気が変わりましたらいつでもご連絡下さい、いつでもお待ちしておりますので」
もう少し食い下がって来るとおもったんだけどな……。アモルとメイドは、その後深く一礼をして、俺達を見送ってくれた。
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