第151話 新しい仲間その名も?

 結局俺達は、色々あったもののユニコーンの説得? に成功したのだ。

 しかし夜もふけてきたので、このままジャングルを抜けるのは危険と言う判断の元、当初の予定通り焚き火を囲みキャンプをすることにした。


「カナデ君……星が綺麗ね?」


 何千、何万では事足りない……数えきれない数の星が無数に散らばっている。まるで宝石で出来た、宝石箱の様な夜空だ。

 ここまで見事なものは、地球ではまず見ることが出来ないだろう。普通の人なら、確実に目を奪われるはずだ……。


 ……だがしかし。


「そうだな、言いたいことは良く分かるよトゥナ。でも、今はそれどころじゃ無いんだ……」


 俺は女性陣が星を見てうっとりしている最中、ワニの皮を剥いでいた。──ミコに、腹一杯食べさせるって約束しちゃったからな。これぐらいの大きさがないと──。



 ──ユニコーン達との交渉の後、俺はワニから内蔵を取り出した。

 そして彼らに協力を仰ぎ、束ねたロープで巨大ワニを引き湖につける。

 これだけの巨体を引ける力……。ユニコーンってかなりパワフルなんだな。


「そんな力を受け止めた俺……実はかなり強かったりするのか?」


「『はぁ?俺様がいこと手加減したに決まってるだろ、馬鹿か!』って、言ってるカナ!」


 何も言わずとも通訳をしてくれるミコ。ほんの一瞬だが、本当に通訳された内容なのか? と、疑ってしまう。


 俺が何故、ワニの死体を湖に浸けたかと言うと、死体に残っている体温を下げるためだ。


 臭み取りの為の血抜き作業にも、ある程度の時間が掛かってしまう。血生臭いとは良く聞く言葉だが、本来血液は無臭なケースが多い。

 臭くなる原因のひとつに、バクテリアなどによる微生物の働きがあげられるのだ。


 体温をなるべく早く下げることにより、バクテリアなどの繁殖を押さえられ、臭みを軽減することができる。


 じいちゃんがやってたのは良く見てたけど……まさか自分がやるとは思ってなかった。しかも、それがワニって……。


 それが終わると、今度は血抜きだ。

 周囲に見られる一番大きい木に目星をつけ、またもユニコーン協力のもと移動する。


 尻尾にロープを巻き、ワニの身体を引っ張りあげる……。


「うんまぁ! 私頑張るわ!」と、ユニコーン達が一生懸命引いてくれたのはいいが……。


「おい、体の大半が地面についたまんまじゃねぇか……」


 ワニの巨体は当然持ち上がりきらず、シャチホコの様な形で固定された。──これで、血抜きができるのか?


 血管を切り、しばらく放置する……。後は臭みがない事を、祈るしかない──。



 ──そして現在、そのワニの皮を剥いている訳だ。──くそ、でかすぎる! 皮を剥ぐのも一苦労だぞ?


 無銘で斬りつけた所から、肉と皮の間にナイフを入れていく。──中の身は赤い……と言うより、ピンク色に近いな。肉だけを見れば、美味しそうに見えなくもないが……。


 しかし、頭の方を見ると全く食欲が湧かない。命を無駄にしないためにも、俺も口にしておきたいのだが……。


 俺が皮剥きに集中してる時だ、ティアに突然話題を振られた。


「それにしてもこの二頭のユニコーン、名前はあるのですか? コミュニケーションを取るためにも、名前があった方がいいと思うのですが? カナデ様はどう思いますか?」と……。


「あぁ……」


 作業に没頭して、気のない返事をしてしまった。それが、こんな事になろうとは……。


「では名前が無いようなら、カナデさんの事がお気に入りみたいですし、カナデさんに決めてもらったらどうですかね~?」


「──はっ? 俺がつけるのか? って言うか、ハーモニーは何でご機嫌斜めなんだよ……」


 俺の問いかけに「知りません~!」っと顔を反らし、そっぽを向いた。──女心とチビッ子は、理解に苦しむ……難解だ。


 それにしても、不意を受けた形で断るチャンスを逃したな……。


「そうか~名前か」


 名付けのセンス……マジで自信が無いのだが。


 ある程度皮を剥ぎ、カワハギの調理のようにそれを引っ張り身と皮を分ける。──以外と綺麗に取れるもんだな。


「うーん、そうだな? 名は体を表すって言うし、ユニ、ユニなんてどうだ?」


 どうだ、今のは中々いいだろ? ちょっと自信がある! って……皆、なんでそんな目で見るんだよ。


「カナデ君、本気? それは流石に……」


 え、そんなひどかったか? 俺個人としては、かなりいい名前だと思うんだけど。


「流石に嫌って言ってるカナ。カナデ、全然分かってないシ。だめだめカナ!」


「な……なら、ミコはならなんてつけるんだよ? 当然もっといい名前つけれるんだろ?」


 ミコの事だ、どうせユニユニとかそんな名前をつけるんだろ? 予想通りなら笑ってやろう。もう一匹はユニユニユニか? 精々そんなところだろう。


「──オスコーンとメスコーンってどうカナ?」


 そ、想定外だ……そうきたか!


「二頭も気に入ったみたいだシ! ナイなえだな? 尖ってて良いじゃないか! っていってるシ」


 尖ってるって……とんが○コーンですか? って、突っ込みを入れても誰も知ってる訳無いよな……。


 周囲のメンバーを見ると、一同何故か微妙な顔をしているが「本人がいいなら……」と、反対意見も無いらしい。


 新しい旅の仲間名前が、オスコーンとメスコーンに決定した瞬間だった。

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