第132話 魔技士
「──ルーム、誰か来てるのかしら?」
部屋の奥からのれんをくぐり、また別のドワーフと思われる可愛い女の子が現れた。
「おかん、カナデはんがきたみたいやで? あれや噂の鍛冶場荒らしの」
おい、鍛冶場荒らしを定着させるのはやめてもらおうか? そもそも鍛冶場に来てるのにそんな説明はないだろ、歓迎されるわけが……。
……んっ?
──っておかん!? ガイアのおっさんの、奥さんって事か!
失礼だとは思ったが、つい登場した彼女を見つめてしまう。
見た目は幼く、ルームとさほど変わらなく見えるのだが……。外見年齢で言えば中学生……小学生と言っても俺は信じるね! それが夫婦……?
極端な歳の差夫婦に見えるけど。大丈夫か? 俺の中で、おっさんロリコン認定しちゃったぞ?
「あら? とてもお若いんですね。私てっきり、姉妹かお友達だと思いました。私は彼の友人の、フォルトゥナと申します」
ドアーフがそう言う種族なのだろうか? それともガイアのおっさんを知らない為か、トゥナはあまり驚いていないようだが……。
「あらら? お嬢さん、お上手な事を言うのかしら。今御飲み物を準備しますので、荒らさずに待ってて欲しいかしら」
それだけ言い、また奥の部屋へと戻っていく。それを見送ると、ルームが俺のそばまで来て耳打ちを始めた。
「実はな? おかんも、カナデはんに感謝してる一人なんやで?」
「ん? ルームのお母さんとは、俺初対面だよな?」
何処かで会った記憶もないはずだ、どれだけ考えても思い出せない。
「いやな、今おとんとおかん別居してるやろ? 元々はおとんが、飲んだくれて喧嘩したのが原因やねん」
おいガイアのおっさん、何してるんだよ? こんな可愛い奥さんと娘さんに迷惑かけて……。
「おとん、カナデはんと会うて昔の情熱を思い出したみたいやねんな。自分がまちごてたって、謝りの連絡が最近入って仲直りしたみたいねん」
「そうなのか? それなら俺も、ガイアのおっさんの職場を荒らした価値があったってもんだな」
──ってつい自分で認めてしまった。クソ……欲しがりの鍛冶場荒らしって、一体何なんだよ。
「ウチからも……ほんまにおおきにな?」
そう言いながら頭を下げるルーム。意図的に行ったわけでもないし、頭を下げられるのも悪い気がするな。
「気にするなよ、結果的にそうなっただけだから。それより本題に移りたいんだけど、ここで鍛冶をしてるのってルームとお母さんなのか?」
「そうやで? ただウチは鍛冶師やなくて、
魔技士? 初めて聞く単語だな、魔術師とかの親戚なのだろうか。
トゥナに説明を求める為に顔を見ると「この世界のマジックアイテムの開発者の事ね? マジックアイテム技術士の事だったかしら?」と分かりやすい説明が入った。
「せやせや、その魔技士や。まだ見習いやけどな! それでもすごいやろ?」
小さい体をいっぱい使い胸を張る。彼女の言うその魔技士と言うものはそんなすごいのだろうか? うん、さっぱり分からん。
「私の記憶だと、エルフに伝わる技術だと思ってたのだけど……? エルフにしか作れないって聞いた気が……」
「せやな。一般的にはそう言われとんなぁ~。でも技術は技術や! 理解して実践出来ればウチらでも、出来へんことはないんや」
確かに彼女の言うと通り、○○だから出来ないとかそんな偏見は良くない。魔技士と
よし、彼女の知識と心意気なら、俺が抱えている問題も解決できるかもしれない!
「それで、その相談の内容なんだけど……」
俺はルームに、ハーモニーの事で相談を持ち掛ける。
戦うだけの身体能力は無く、経験もない。魔法も適正はあるが精霊に相手にされないことを伝えたのだ。
ハーモニー本人が口にした、強い意志を共に説明したのだ……。
「う~ん、その嬢ちゃんの心意気は認めるけど、ほんま大丈夫なんか?」
「大丈夫じゃないから悩んでるんだよ。でも、自分を守るすべぐらいは身に着けてもらったほうが、将来の彼女の為だとも思うんだが。それとついでに、鍛冶場も借りれないかな~とか思ってて……だめか?」
「お? 早速鍛冶場荒らしかいな、ほんまおもろいな~。兄さんは」
うっ、やはり言われてしまったか。
「まぁ~ええで? 後でおかんに頼んでみるさかい。あのな? ウチからも頼みがあるんやけど?」
「な……なんだよ、頼みって?」
頼まれても出来る事なんてほとんどないぞ? どんな頼み事をするんだよ……。
「ウチも、あんさん達の冒険に連れてて行ってくれへんか?」
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