第133話 交換条件と武器思案

 彼女の、予想外のお願いに俺は驚いた……。


 困り果てたトゥナの顔を見ても「リーダーカナデ君だから」の回答が戻ってくる。──う~ん。どちらにしても、この場で即決は出来ない。


「俺としては別に構わないけど、他の仲間にも相談しないと答えは出せないな」


「ええでええで、それでかまへんわ!」


 まったく……突然すぎて驚いたよ。そういえば、何で俺達と一緒に来たがるんだ?


「ところで、俺達と一緒に来てどうするつもりなんだよ? 理由を聞きたいんだけど……」


「理由のひとつわな? おとんが兄さんの事をおもろい言うてたからやね。そんなこと、めずらしいんやで?」


 一つと言うことは、まだあるってことだよな? それだけで危険な冒険について行かせる訳にもな。


「他にも何か理由があるんだろ? ついてきても何も得は無いと思うんだけど……」


「所がそうでもないねん、魔技士言うてもウチはドワーフや」


 さっきも聞いたけど、それが何か関係があるのだろうか? 

 ルームの顔が少し浮かない顔にも見えるけど……。


「なぁ、冒険者が魔物の素材を手にいれたら、一般的にどないする?」


 い、いきなりだな? そうだな……今までのケースだと。


「……ギルドで買い取ってもらうか、希少なものは自分で持っているな……あれ、これ何に使うんだっけ?」


「装備品の素材や日用品、マジックアイテムの加工屋に持っていくわね」


 俺の疑問に、先輩冒険者のトゥナが答える。──そうか……マジックアイテムって魔物の素材を使うのか?


「ほな、マジックアイテムを頼むとしような。ドアーフの魔技士に、その依頼するか?」


 トゥナがあごに手を当て、彼女の問いかけに頭を悩ませる。


「いえ、しないわね。希少なものほど、次に同じ魔物の素材が手にはいるか分からないし。私ならエルフの方にお願いしちゃうわね……」


 なるほど……。察するに、ドワーフには良質のマジックアイテムを作れると思わない、つまり──貴重な素材ほど彼女の手に渡りにくいわけか。それを生業としてるのなら、確かにそれは辛いな……。


「そう言うことや! だからあんさんらの専属として、連れてって欲しいねん。貴重な素材をウチに弄くらせて欲しいんや!」


 そうかそうか、ビジネスとして同行したいのか? 個人的には変な綺麗事並べられるより信用できるな……。


「納得いったよ、それを踏まえて今晩仲間と相談してみるよ」


「よろしゅうな! 所で、兄さんは何かしら案はないんかいな? 凄腕の鍛冶職人なんやろ?」


 ガイアのおっさんから、あの時の事でも聞いたのだろうか? 凄腕って……照れるな。


「ま、まぁ。凄腕のだから、無いことはないかな?」


 俺の発言を聞き、隣のトゥナが一言「カナデ君……チョロいのね」と俺に毒を吐いた。


 誰だよトゥナにそんな言葉を教えたのは! こんなこと言う子じゃなかったろ?

 そんなこと言いそうなのは……俺か!


「ええから話してみ、もしかしたらウチもアドバイス出来るかもやろ?」


 俺は「オホン」と咳払いをした後、自身が考えた一つの武器の思想を、手持ちの紙に描いて見せた。


 その武器の形状は、【ジャマダハル】と呼ばれる物に酷似している。手に持つと拳の先に刀身が来る様な造りで、突くことを主とする武器だ。


 本来、殴りかかる様なモーションで扱うため、非常に扱いやすく力が入りやすいので、非力なハーモニーが扱っても、刃が通りやすいと思うのだが……。


 重量も重心が比較的手元に来るので、振り回しやすく怪我をしにくいはず!

 そう、チビッ子に持たせても親御さんも安心の一品。

 何より、刃渡りが他の剣より非常に短いので、少し安心感がある──命のな!

 ちなみに豆知識だが、【カタール】と間違って認識してるものも多い。


「──っと、こんな感じ何だけど……」


 俺が描いたデザインを真剣に見つめるルームが、それを食い入るように見て目を輝かせている。


「なるほどな? 面白いやないか。所で、兄さんは、その嬢ちゃん好きなんか? えらい、安全面を考えられてるやんか」


「べ、別に恋愛感情とかじゃなくて、色々と心配事もあってだな……」


「ふ~ん、まぁその辺は別にええわ」


 あれ? 聞いてくれないの? ここも個人的に重要な所なんだけど……。


「でも、ここまで考えた兄さんなら、これの弱点もわかってるやろ?」


 ルームは今まで見せなかった真剣な顔を俺に向け、問いかけてきた。──確かに、武器の話をするときのこの顔は、ガイアのおっさんにそっくりかもな……。

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