第97話 女子会2

「あ、あのですね? フォルトゥナ様。例えお付き合いしたとしても。それは、イコール結婚ではないのですよ?」


 今はまず話題を変えよう! 場を落ち着かせてから誤解を解いていけば良いではないですか……。焦ってはダメです、ティア!


「そうなんですか?」と、無垢むくな瞳を向けるフォルトゥナ様。

 控えめに言っても、清らかの最上級じゃないですか……眩しすぎます!


 今更ながらですが、フォルトゥナ様とカナデ様が絡むと、いつもやらかしてしまいます……。これはいい加減、反省しなければなりませんね?


 私が物思いに更けていると、すぐ隣で「わ、私の耳を無茶苦茶にしたのに……。カナデさんは、誰彼構わずフラグ立てすぎですよね~?」と、ハーモニー様は付近にあった鋭利物えいりぶつを握り締めました。


 どうやらハーモニー様は、ツンデレさんじゃなくてヤンデレさんでしたね。

 カナデ様には、後で謝っておいた方が良さそうです。テヘッ。


 すると突然、ハーモニー様がハッと我に帰ったような顔をしました。そして彼女からも、問題発言が飛び出してしまったのです……。


「そ、それでこの前、率先して口移しをしたんですか、ティアさん~!」


「な、な、何を言って!」


 あまりにも突然の事に、大人の余裕を見失ってしまいました。

 彼女の言うこの前とは、おそらくワイバーン戦で瀕死の怪我を負ったカナデ様を助けるために、私がポーションの口移しを自発的にした事を言っているのでしょう……。


「で、でも、それを言ったらフォルトゥナ様も、ハーモニー様もおこなったではありませんか!」


 わ、私にだって、あのような行為をしたことに理由があるのです!

 確かに、衝動的に動いてしまった部分があったことは否定しませんよ?

 しかしあの時は、カナデ様が本当に危機一髪だったんです──。



 ワイバーンの尾の一撃を受け、意識を失ったカナデ様に、一番近いフォルトゥナ様が、真っ先に解毒薬を口に含み、カナデ様が受けたワイバーンの毒を解毒したのです。


 それを見た私は、フォルトゥナ様も怪我をしていたので、私が持っているポーションをカナデ様に、フォルトゥナ様は自身の回復を行ってもらうように指示をしました。


 不謹慎ふきんしですが、フォルトゥナ様との間接キスのためだ、っと一瞬、脳裏をよぎってしまったのですよね……。

 躊躇ちゅうちょ無く、カナデ様の唇を奪うことができました!


 そ、それでも? あの時はカナデ様が心配でって気持ちが一番でしたよ! 本当ですから!

 そしてあの時、飲ませ終わった後にカナデ様の容態を確認して気づきました。


「私のポーションだけでは足りない……」と……。


 私はその後、ハーモニー様を見つめました……カナデ様を助けるために、あなたに持たせていたポーションも頂きたいと。


 そして、ハーモニー様は何を思ったのか、御自身もポーションを口に含み、カナデ様に唇を重ねたのです……。


 別にあの時は、ハーモニー様がする必要もなかったのですがね。私に渡してもらえればよかったので。

 今思えば、結構濃厚になさってましたね……。


 あの時の、私達の救命処置もあって、カナデ様は無事命を繋ぎ止めた訳だったのです。



「──だから、あれは人命救助だったのですよ! 率先して行うのは当然ですよね?」


 そうは言ったものの、あの時少しでもやましい気持ちを抱いてしまった自分が恥ずかしいです……。

 その為か、ついその話題をハーモニー様に出され、少々冷静さを欠いてしまいました。


 必死で反論をした、その時です──!。


「あの……二人とも。少しいいかしら?」


 若干熱くなってしまった私達を見てなのか、フォルトゥナ様が間に割って入ってきたのです。


 そして、ゆっくりと口を開き「ハーモニー! ティアさん! 私達。あの時カナデ君とキスしてしまったけど……。こ、子供とか出来たらどうしよう」と、慌てるように口にしたのです。


「「──っえ?」」


 衝撃的でした……彼女の清らかさは天井知らずだったのです。


「お、お父様が常々言っていたのよ! 男の人と接吻をすると、赤ちゃんができて、夏の方位から朱雀様が子供を連れてくるって!私、知ってるんだから!」


 げ、原因はリベラティオ王でしたか……。

それにしても、先程の発言だけで黒パン3つぐらい行けてしまいそうです! 困りました!


「だから、男の人と、無闇に唇を重ねてはダメだって教えられてたわ……どうしよう……」


 普段は凛として、尚且つ愛らしいと言う、神々の奇跡によって生まれた美しさをもつ、あのフォルトゥナ様が慌てていらっしゃいます。

 私は今、猛烈に思います。女に産まれてきてよかったと!


 私は悩みました。このまま本当の事を話すと、フォルトゥナ様を汚してしまうような説明をしないといけなくなってしまいます……。


 その時、ハーモニー様と目が合いました。それだけで、彼女の気持ちが解ったのです。── 彼女も、子供が産まれるまでの説明はしたくないと!


 フォルトゥナ様に、嘘をつくのは心苦しいのですが……致し方ありません!


「大丈夫ですよ? フォルトゥナ様。あの日は朱雀様もお休みの日です。お子様は産まれませんので安心して下さい」


 かなり無理が有りましたか? でも、私のフォルトゥナ様なら……。


「本当? よかったわ……まだ、子供を育てる自信が無いもの……」


 あぁ~もう! 可愛いですし、ちょろいです。そして、フォルトゥナ様の子を孕みたいです! あ、今なら行けそうな気がします……。

 

「トゥ、トゥナさん。ティアさん。そろそろ寝ましょうか? 明日になれば、魔力切れのカナデさんも目覚めてると思いますし。皆さんで様子見に行きましょう~!」


 強引に寝かしつける作戦ですね? 仕方ないですね、今晩は雲行きが怪しいですし、私も乗っかっておきましょうか?


「そうですね、私達も今日はかなり濡れてしまいましたし。カナデ様が起きられた時に私達が風邪など引いていたら、逆に心配をかけてしまいます。そろそろ寝ましょうか?」


 まぁ、いくらかのネタも仕入れることができました。今日のところはよしとしましょう……。


 さて、今からは──フォルトゥナ様の寝顔を拝見させて頂く時間です!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る