第77話 ポーションの飲ませ方
「え~っと、どうやってポーションを使ったのでしょう……か?」
その一言を言葉にすると、それ以上口を開くなと言わんばかりに、三人は俺に視線を浴びせた……。
わ、分かったぞ。あれだ、も◯◯け姫だな? あれに違いない……って事はあれだよな? く、く、口移し。
だ、誰にされてたとしても可愛いから嬉しい筈なのに……。何なんだ? この腑に落ちない感情は。誰としてたとしても、リスクしかない気がするぞ!
俺がそんなことを考え悶え苦しんでいると、ティアが俺の手を掴んだ。──犯人はお前か!
彼女が俺を見る目は、真剣そのものだ……どうやら、俺は彼女と一線を越えてしまったらしい……。
「カ、カナデ様……この度は誠に申し訳ありませんでした!」
涙の跡を残しながらも、真剣な面持ちで謝罪の言葉を口にするティアに、俺は髪をかき揚げクールに決める事にした。
「どうしたのかな、ティアさん? 謝られる理由に、全然見当がつきませんね」と、俺はちょっと彼氏気取りで答えたのだ。
「え? ですから……私の依頼を受けていただいて、カナデ様は死にかけた訳ですし……」
……違った、そっちかよ! 良かった……ミコが外にいて、本当に良かった!
俺の勘違いに、ティアはどうしたらいいのか困惑している。それもそうだろう、彼女なりに覚悟を決めた上で謝罪をしていたのだから。
「ハーモニー? 何か、あの二人会話が噛み合ってないわよね?」
「いえトゥナさん、カナデさんの事です……。わざと知らんぷりしてるんですよ、私もされたことがあります~」
おい、外野の方々静かにしてもらおうか……ってそれだ! その手があったか!
俺は拳を握り、ティアの目の前に突きだし人差し指を立て左右に振った。
「別に、ティアさんの為に働いたわけじゃないんですよ? 俺達は冒険者なんです。依頼を受けたのは、報酬の為に決まってるじゃないですか~」
……って言う体裁で話を進めていこう。元々報酬の内容は一つ希望がある。この勢いで要求してやれ!
「ほ、報酬ですか? 確かにお約束いたしました。今回は大変お世話になりました、検討いたしますので言い値を言って貰えれば……」
彼女がそこまで言うと、俺はティアに向かって人差し指を向けた。
「ひゃ、百万Gぐらいでしょうか……?」
どうやら、トゥナとハーモニーは気付いたよだ。「また、格好つけてますよ~」っと二人で笑いあっている。
俺は「違いますよ……」と、指先でティアのおでこを軽く小突いてやった。
「え~っと……。もしかして、ですが……私ですか?」
首を軽く縦に振り、その通りっと右手を握り親指を立てた。──決まったぜ。
「カナデさん……ティアさんの体が報酬なんて女の敵ですよ~?」
「邪に邪を重ねるのカナ? 流石カナデカナ……もう手遅れダシ」
腕を組み頷くミコの裏で、
それに対して、手をポンっと叩いて「労働力ね!」っとトゥナが謎の言葉を残す。──君だけは清いままで居てくれ……。
俺は彼女達の発言に頭を抱えた。──本当、君達の
「ティアさん、どうせ今後もついてくるんですよね? それなら一層の事、エルピスに入りませんか?」
俺の提案に、彼女は明らかな動揺を見せている。──俺は知っているぞ? ティアがどれだけ、トゥナとの旅を楽しんでいたのか……。
「あのですね……? 私はギルドでは、それなりな立場の職員な訳なのでして……。それをおいそれと辞めるわけにはいかないのですよ……」
「ティアさん、俺は別に辞めろとは言いませんよ? 掛け持ちでいいんです」
立場があるのは分かるけど、これだけ担当地区を任意に変えることが出来るなら、一緒に依頼をこなすのまでは無理かもしれないが、エルピスの一員として、目的地への移動ぐらいなら問題はないだろ?
「で、でもカナデ様……。そんなことは前例がありません!」
提案を聞き、ティアは揺れ動いているようだ。会話の最中でも、時折トゥナ達の顔を見てる。
「前例が無ければ、この機会に作ればいいんですよ。それに王命を受けてるんですよね? そちらにも、都合が言いと思うのですが?」
「カナデ様……」
後一押しだろう……。ティアよ諦めてしまえ! 一緒の旅、楽しかっただろ?
「ティアさん、俺の世界にこんな言葉があるんですよ? 王様の命令は絶対~ってね」
ティアとの旅……少々不本意だけど、俺も楽しかったんだよ! だからこそコッソリ着いて来るのでは無くて、俺達の隣を歩いてくれ!
思いが通じたのか「はぁ、カナデ様には負けました……。トゥナ様、登録にいくのでお付き合いお願いできますでしょうか?」と言って二人部屋を出ていった。
──よし! 完全勝利だ!
正直、かなり強引ではあったけど、俺達が命懸けで手にいれた報酬の権利だ。存分にワガママを言わせてもらったぜ。
「ティアさん……何だかんだで嬉しそうでしたね~」
「まぁ、ティアはトゥナが大好きだしな」
あの二人を見ていると、最近本当の姉妹のようにも見えてくるんだよな……たまに距離が近すぎて引く事もあるけど……。
「カナデさんって本当、女性の好感度上げるの得意なんですね~? 私の見立てでは、ソコソコいい感じでしたよ~?」
「お? マジか? ハーモニーも今回頑張ったし、後三年後位なら、色々考えてやるぞ?」
俺の軽口に、ハーモニーはやれやれといったポーズを取った。そして、悪戯っ子の様な顔で俺に笑顔を向けた。
「それで今度は、そのなけなしの好感度、何日維持できるんですか~?」
「──おい! 好感度落ちること前提なのかよ!」
ティアが好きとかそんなんじゃないけどな! それに……そもそもだぞ?
「なぁ、ハーモニー」
「──なんですか~?」
ティアがエルピスに入るなら、彼女にも伝えておくべきだろう……。一応メンバー内では比較的常識人だしな。いざとなったら、俺一人で止める自信がない。
「前にハーモニーがギルドで回収した本な? あれ、著者はティアなんだ」
はぁ? っとした顔を俺に向け、プッと吹き出しながらハーモニーは腹を抱えて笑い始めた。
「アハハハ、カナデさんスミマセンでした。もう好感度どころか見向きもされてないじゃないですか~」
彼女は同人誌擬きの内容を見てるしな、いくら俺がコツコツと好感度を上げても見向きもされないと理解したのだろう……。
別にいいんだからね! 彼女の事なんて、好きじゃないんだからね?
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