第40話 森へ
翌日の早朝、俺とトゥナ、ハーモニーの三人は、昨日の依頼の報告と森に行くことを報告するために、ギルドのティアの所を訪れた。
「──と言うわけで、私達で森に行くつもりなの。その辺りの魔物の出現情報を教えてほしいのだけど……」
事の
「ギルドを経由した依頼ではないので、本来なら情報の提示は出来ないのですが……」
俺達の話を聞き、頭を悩ませるティア。──まぁギルドも商売な訳だから、自分たちの職務外の事に、情報をポンポン教えていたら
『カナデ。テンテコマイって何カナ?』と疑問を投げ掛けてくるミコ。
天手古舞か? 忙しい、とか多忙って意味だよ。俺の故郷でもほとんど使わないが……。と、ミコに説明をする。
『ふ~ん、テンテコマイ…テンテコマイカナ』っと復唱するミコ。気に入ったのかな?
困った顔で「でも、教えなくても行きますよね? フォルトゥナ様なら……」と言葉にするティア。──流石だな、よくわかってるじゃないか。
ため息をつきながらも、一冊の本をテーブルの下から出し、俺達に見えるように広げた。
ティアは本のページをめくり、地図を指差し「ここの森ですよね?」と俺達に確認を取った。
「はい、そうです~」
ハーモニーの返事にティアは頷き、視線を本に戻し、ページをめくっていく。
「う~ん……。その森では最近、マンドレイクの亜種にあたる、アルラウネの目撃情報がありますね……」
マンドレイクにアルラウネ? 聞いたことはあるな……。その二匹に関係性がある事までは知らなかったけど……。
「それって危険なの?」
トゥナの質問にゆっくりと頷くティア。
「アルラウネは、マンドレイクと違って大声で叫ぶことは致しません。しかし、菌糸に魔力を通して、枯葉や枝を分体として戦わせてきます」
おぉ~……。今までは魔力を使う魔物との遭遇は無かったよな? 異世界ならではの敵か……確かに注意が必要そうだ。
「見た目は人間の美しい女性を模しています。蔦はかなりの力があり、四肢を絡みとられたら最期、身体中の栄養分を吸われながらゆっくりと死を待つしかないと言われていますね」
外見が美しい女性の姿……? そ、それは注意が必要だ! 美しい女性が捕まえて養分を吸うって……そんなの回避しようがないじゃないか! 異世界……なんて危険なんだ。
『カナデ……最低カナ……』
「強さとしては、どれぐらいなんですか?」
俺が煩悩全開の中、話は着々と進んでいるようだ……。真面目に聞こうか? ミコに後で何を言われるか分かったものじゃない。
「Cランク相当ですかね……? 個体の魔力量、環境によってはBランクに近いものもいるそうです。分体は一体Dランクほどかと。ただ数はその個体の魔力量に左右されます」
あのヘンテコな黄色い熊と、この前戦ったロック鳥の間ぐらいか……サッパリ分からないな。
多人数相手の戦闘は今までの経験上、トゥナは得意としているようには思えない。俺も抜刀術の性質上、多人数相手は苦手だしな……。
最悪、分体を操っているアルラウネだけを狙えば倒せないことも無さそうだな? なるべくなら戦わずに逃げるけど……。
「実際に襲われたと言う報告も受けており、攻撃的な個体の可能性も十分考えられますので……」
そう言いながら、チラッと俺の方を見るティアさん。俺達を心配しているのだろう、そう言う顔をしている。
「大丈夫だよ、ティアさん。俺こう見えて強いんだぜ? それに、いざとなったら皆で逃げるさ」
実際の所、自分が強いかは分からないけど気休めまでに……。逃げ足には自信あるけどな。
「ありがとう、ティアさん。退治することになったら素材を、高く買い取って下さいね?」
ティアに向かい、笑顔で余裕を見せるトゥナ。──トゥナなりに大丈夫だからと伝えたいのだろうか?
「はぁ~……分かりました。ただ、戦闘があったとしても、無かったとしても、戻ってきたら必ず顔を見せてくださいね? 約束ですよ?」
俺とトゥナは心配しているティアに、笑顔で「はい!」っと返事をして、ギルドを後にした。
「申し訳ありません~……。危険かもしれないのに、この様なお願いを~……」
先程の説明を聞いて、腰が引けてしまったのだろうか? ハーモニーが申し訳なさそうな顔で謝罪をしてきた。
「気にしなくてもいいわよ」
「そうそう大丈夫だよ、トゥナの実力はハーモニーも知ているだろ? それに俺もいるし」
盗賊との戦闘を見てたハーモニーなら分かるはずだ。トゥナの強さと、ここぞと言うときの容赦のなさを……。
「そうですよね? トゥナさんが入れば安心ですね~」
いい笑顔でそう答えたハーモニー。──おい、俺は何処に行った? 見てただろ? 俺のあの金づち捌きを……。
『カナデ……。格好悪いカナ……』
余計なお世話だよ! いいんだよ、男はいざというときに格好よければ!
『……』
ダンマリカヨ!
「ま、まぁ、そう言うわけだ。さっさと枯葉集めに行こうぜ?」
俺の言葉に二人は笑顔で頷いて見せた。
落ち葉を大量に持ち帰るため、ハーモニー同伴の一泊二日の馬車の旅が再び始まった。
今回は荷物もほとんど無いため、荷台には馬の非常食の藁と、朝袋、移動中の飲食物だけだ。
俺は荷台に座り、後ろの
「しまったな……。コレ、喉乾くわ……」
些細な後悔を抱きながら、俺達は枯葉を集める為、次の目的地へと向かうのであった。
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