第8話 身体検査
世はまさに、身体検査日和である。
「私の体重か? 欲しけりゃくれてやる。探せ! この世の全てをそこへ置いてきた!」
というわけでGL学園でも身体検査が始まる。特別教室に学年ごとに集まって、脱いだり測ったりするのだ。
私とかなちゃんがジャージの中からもぞもぞとブラジャーを外す。
「まるちゃん。今日はね、勝負下着をしてきたの」
「ふふ。ぬかりないね。かなちゃん」
「せーので見せるよ」
「せーの……」
お互いのブラジャーを見せ合う。
「「どゅふw」」
お互いが笑顔になり、ひそひそ声で、男子には言えない秘密の女子トークを始める。
「流石かな氏でございまする。これはヒロアカの勝緑を目的とした色のブラジャーでございまするな」
「色だけで分かるとは流石まる氏でござる」
「この濁った感じ、二人がいちゃいちゃしているのが目に見えるようでございまする」
「そう言うまる氏、その色は、ヴォルトのミッツボルをモチーフにしてるでござるな」
「どきっ。流石かな氏」
「某の目は誤魔化せないでござる」
「ぬふっw 流石かな氏」
「ところでまる氏、某の家には、コミケで手に入れたヴォルトの戦利品、および、ミッツボルの同人誌というものがあってでござるな……」
「どっきんこ☆」
「貸しても良いでござるよ」
「かかかかか、かな氏!」
「そうでござるな。まる氏がこのGL学園を卒業する頃には、寮から家に戻っているでござるな。その時も、まだこのジャンルが好きであれば……」
かなちゃんが私の顔を覗き見る。
「譲ってあげない事も、ないでござる↑」
「かな氏ぃぃぃいいい!!」
「金持ちは凡人に優しくする。これ鉄則↑」
「かな氏ぃぃぃいいい!!」
「まる氏なら、任せられる↑」
「かな氏ぃぃぃいいい!!」
「皆さん、視聴覚室に移動してください」
「「はい」」
先生に言われ、おしとやかに私とかなちゃんが移動する。ノーブラってすーすーするね。検査票を腕に持って、二人で廊下に出る。かなちゃんが周りをきょろりと見回す。
「視聴覚室、どこだっけ?」
「この学園広いし、視聴覚室なんてなかなか使わないから分からないよね……」
「先生に訊けばよかったね」
よーし、こういう時は、
「しおりちゃんの出番かな!」
ぎくっ! しおりちゃん、と聞いて、私の片目が引き攣る。
「……っ、し、しおり先輩に会いに行くの?」
「しおりちゃん、風紀委員で学校内回ってるから、視聴覚室くらい一発だよ」
「……あー……」
私は一歩、後ずさった。
「だったら、私、その、用事があって」
「え? 用事?」
「あのー」
「もしかして、なでしこ様?」
「あ」
私は頷いた。
「そ、そうなの! なでしこ先輩が忘れ物して、ついでに、届けようかなーなんて!」
(なでしこ先輩、忘れ物なんてしてないけど……)
それでも、しおり先輩に会うくらいなら。
(ごめんね、かなちゃん。でも……)
――私の可愛いペットになって。
(……あのぎらついた目を、忘れられない)
「えー、なでしこ様に会うのー?」
かなちゃんが目をきらきらと輝かせる。
「私も行きたーい!」
「いや! あの、でも、ほら、しおり先輩に視聴覚室の場所聞いてほしいかな、かなかなー?」
「しおりちゃんじゃなくても、なでしこ様に訊けば一発じゃない?」
「……はっ。そうか」
私は頷く。
「じゃあ、訊きに行こうか」
「なでしこ様もノーブラなんだよね」
……。
「ぶほっ!」
かなちゃんが鼻血を出した。
「はっ! いけない! なでしこ様の上半身を想像しただけで、鼻血が……!」
「かなちゃん、同じ女の子だよ?」
「まるちゃん、だって、なでしこ様だよ?」
はっ。
「そうか。まるちゃんにはもうなでしこ様のお裸の耐性がついてるんだ。寮の部屋が同じだから……」
「いや、かなちゃん。流石になでしこ先輩の裸を見る事は無いよ」
お風呂は必ず別だし、なでしこ先輩のパジャマも肌を見せないような長袖長ズボンのやつだから。
「そういえば、あんまりあの人の足とか腕とか、見た事ないかも」
「そうだよねえ。女の子の中の女の子だもん。流石なでしこ様。しっかりしてる」
「そうだね。確かにしっかりしてる。私がTシャツと短パンで走ってたら、ゲーム機渡されて大人しくしなさいって言われるもん」
「あはは! 何それ。親子みたい!」
かなちゃんにけらけら笑われながら、二年生の教室が並ぶ廊下に向かう。
「なでしこ先輩、生徒会室にいるかな」
「この時間なら、教室じゃない?」
「二年生の教室怖いんだよなあ……」
生徒会の人達が私を見たら囲んでくるんだもん。
「大丈夫。何かあったら、しおりちゃんもいるから!」
(……あてにならない……)
私とかなちゃんが階段を上って、二年生の廊下へと出た。
(ん?)
私はきょとんとした。かなちゃんが口を押さえた。
――血だらけの廊下。倒れた女子生徒。鼻から鼻血を出す乙女達。廊下を見て、私は悲鳴をあげた。
「ぎゃああああ! 殺人現場!」
「全部鼻血だ」
「かなちゃん! ここはいちゃいけない場所なんだよ! 早くどっか行こうよ!」
「あ♡」
かなちゃんの声が、ピンク色になった。
「なでしこ様だ」
「おうっ」
上ジャージ、下スカートのなでしこ先輩が髪をなびかせて、廊下を華麗に歩く。人々がなでしこ先輩に見惚れ、鼻血を出す。
「ああ、なんて美しいの……」
「なでしこ様ぁ……」
なでしこ先輩の歩く道を、カーリングのように生徒会の先輩達がモップで血を拭いていた。
「なでしこ様、保健室までもう少しです!」
「うふふ。別に大丈夫なのに、皆、過保護ね」
なでしこ先輩がにっこり笑う。
「いつもありがとう」
「「いえいえ、とんでもございましぇん!」」
生徒会の先輩たちがでれんとしてなでしこ先輩を囲み、廊下に進んでいく。そして、――私と先輩達との目が合う。
「あ! まるがいる!」
「まるだと!?」
「間違いない! まるだ!」
「野良猫め!」
(げっ)
一瞬、片目を引き攣らせ、かなちゃんを背中に隠す。引き攣った笑顔を浮かべる。
「こ、こんにちはー」
「お退き!」
「保健室はそちらなのよ!」
「野良猫が何の用よ!」
「あのー、視聴覚室がわからなくてぇー」
「馬鹿が!」
「ど阿呆が!」
「視聴覚室は一階よ!」
「野良猫が!」
「さては、道が分からないという理由で、なでしこ様に会いに来たのね!」
「まあ、なんて下劣な奴!」
「野良猫め!」
「お退き! 破廉恥な目で、なでしこ様を見るんじゃないの!」
(私、なんでこんなに嫌われてるんだろう……)
引き攣らせる笑顔のまま、先輩たちに手を振る。
「わっかりましたー……さよーならー……」
「「ふんっ!」」
生徒会の先輩達が私とかなちゃんを通り過ぎようとした瞬間、なでしこ先輩が私に振り向いた。
「まる」
「ぷえ?」
生徒会の先輩達がぴたりと止まった。なでしこ――白鳥撫子が先輩達を縫って出てきて、私の前まで歩いてくる。
「視聴覚室は一階の廊下を右に進んだところです。分かりますか?」
「……ん。了解です」
「良い子ね」
相変わらず猫かぶりの笑顔だなあ、と思っていたら、なでしこ先輩の手が私の下げていたチャックを一番上まで上げてきた。ぐえ。いきなりなんですか! 苦しい! 不満一杯の顔でなでしこ先輩を見上げる。
「苦しいです」
「上げてなさい。検査が終わったら下げていいから」
「はーい」
なでしこ先輩の手が離れる。後輩のチャックを上げたなでしこ先輩に、皆がうっとりと見惚れる。私の後ろにいるかなちゃんがじっとなでしこ先輩を見つめる。なでしこ先輩が気付いて、きょとんとして、ふわりと微笑んだ。
「こんにちは。伊集院さん」
「っ」
かなちゃんが心臓発作で倒れた。
「あーー! かな氏ーー!!」
「さあ、皆さん、行きましょうか」
「「はい!」」
なでしこ先輩が離れる。生徒会の先輩達と共にまた廊下を歩き始める。私はかなちゃんの肩をトトトトトン! と叩く。
「かな氏! かな氏! しっかりするでありんす! 脈あり! 脈あり! まだ脈ありでありんす!」
「……くっ……。いいか……。……立ち止まるんじゃねえぞ……」
「かな氏ーーー!!」
こんな感じで、身体検査は始まる。
(*'ω'*)
視聴覚室に無事に辿り着き、私とかなちゃんが検査を受ける。身長体重、脈も測って、その他、色々測る。女性のお医者さんの前に座ると、お医者さんが聴診器を私に向ける。
「それでは、心臓の音を聞きますね。シャツを上に上げてください」
胸の上まで上げる。聴診器が当てられる。
「はい、結構です」
下に下げる。
「お疲れ様でした」
「ありがとうございました!」
私はシャツの袖を伸ばし、ジャージを着る。カーテンで隠された個室から出て、かなちゃんを捜す。
(……あれ、いない)
どこに行ったんだろう。
「さっきまでいたのに」
私はてくてく歩く。
(あ、視聴覚室の外かな)
先に終わって、廊下で待ってるのかも。
(外に出てみよう)
私は検査票を胸に抱いて、視聴覚室から出た。廊下を見回す。かなちゃんはいない。
(やっぱり中かな?)
スマホをポケットから取り出す。
<かなちゃん、どこ?
LIMEにメッセージを残して、送信ボタンを押す。
(よし)
後はかなちゃんが既読するのを待つだけ。
(ふふ。身長伸びてた)
152から、153になってた。
(げへへ! なでしこ先輩、外れましたね! ざまーみろ!)
「へーえ。まる、153センチなんだー」
「はい! 153センチになれました!」
「うふふ。ちっちゃくて可愛いわねー」
なでなでなでなでなで。
「……」
私の体が硬直する。ぐぎぎ、と首が動く。ゆっくり振り向く。――にこにこ笑って私の頭を撫でているしおり先輩が立っていた。
「私は158センチ。まるより大きいわねー」
「……」
「まる、実はね、私、ちょーっとだけ、まるにお話があるの」
「……、……。……か」
私はにこりと笑う。
「かなちゃんを待ってるので!」
「ちょっとだけでいいの」
手を掴まれて、すごい勢いで引っ張られる。
「ひえっ」
「大丈夫。ちょっとだけだから」
「あ」
「ちょっとだけだから」
「あの」
「こっち」
「か、かなちゃ……!」
口を手で塞がれる。引っ張られる。
「ひゃにゃひゃーーーー!」
「……あれ、まるちゃんどこだろう?」
廊下に出てきたかなちゃんがスマホを覗いた。
(*'ω'*)
薄暗い化学準備室に、ぽいと投げられる。
「ひゃっ!」
がちゃんと音を立てて扉が閉まった。鍵をかけられたようだ。
「ひぇっ!」
私は腰を抜かしてずるずると室内の隅に逃げる。
「ひいいい!」
「ふふっ」
「で、電気を、電気をつけましょう!」
「ちょっとお話するだけよ」
私は体を隅の壁に押し付ける。しおり先輩が、にっこりと微笑んで私を見下ろす。
「うふふ! まるったら、怯えちゃって可愛い……」
「お、お話って何ですか!」
「大丈夫。怖い事なんてしないから、そんなに尻尾を丸くしないで」
しおり先輩が私の前にしゃがみこみ、にっこりと微笑む。
「まる」
「……なんでしょう」
「私の猫になってくれる?」
やっぱり、それかーーーい!
「嫌です!」
「えー? どうしてー?」
小首を傾げ、あざといしおり先輩。私は必死にうずくまる。
「猫って、意味がわっかんないです! 私、人間! 人類! ネコ科ちゃいます! 耳も尻尾もありましぇん! 私は知りましぇん! ボクは死にましぇん!」
「難しく考える必要ないわ。まる。空いた時間、私と一緒にいてくれたらいいの」
そうね。
「まるは寮なんだっけ?」
じゃあ、その部屋から私のお部屋に来なさいな。
「土日は24時間ずっと一緒よ。おトイレも見てあげる。ご飯も見てあげる。まるの面倒は私が見るわ。まるは私の膝の上でごろごろお昼寝してたり、ゲームしてたり、かなちゃんみたく変な本読んでてもいいから。何もしなくていいの。ただ、私の部屋で私の側で私の膝の上にいてくれたらいいの。いい? 誰にでも話してるわけじゃなくて、まるだからこうやって私が直々に言ってるのよ。私、まるがとても気に入ったの。まるがいない膝はすごく寒くて寂しいの。ね? まるがいてくれたら私はずっと上機嫌でいられる気がするの。だって、こうやってまるの顔を見るだけで私の胸がどきどきしてきゅんきゅんしちゃうんだもん。私、まるが大好きなの。まるにもそうなってほしいの。私はまるの笑顔が見たいの。それくらいまるが好きになっちゃったの。だからまるにも私の事を知って私の事を想って私の事を好きになってほしいの。相思相愛。あ、勘違いしないでね。私、別に女の子が好きってわけじゃないの。だから女の子の恋人なんて作らないし、告白されても馬鹿じゃないの? って気持ちで相手の事見てるんだけど、まるは別。まるは猫だもん。私の可愛い猫ちゃん。ほら、こっちおいで。抱きしめてあげるから。私の腕の中で可愛くにゃんにゃん鳴いてみて。そのまま、しおり様大好きだにゃんって言ってみて。まるの声で聞きたいなぁ。私の部屋には何時に引っ越す? 引っ越し業者をすぐに手配してあげる。今日中には終わらせましょうね。家に帰ったら何が食べたい? 焼き魚でも用意する? あ、そうだ。ペットは調教するものよね。じゃあ、調教しないと。ご飯が欲しくなったらまるが私にキスをするっていうのはどう? ああ、何それ。素敵。素敵素敵素敵! まるが私にキスをする時は、食欲と睡眠欲と性欲が欠けてる時。もちろん全部満たしてあげる。食欲も睡眠欲も、それと」
しおり先輩がにぃぃいいっこりと、にやける。
「もちろん、性欲も」
「長い!!」
あと色々と言ってる事が怖い!
「十文字で簡潔に何が目的なのか答えてください!」
「もー。照れ屋さんなんだから」
頭をなでなでなでなで。
「だから、つまり、何が言いたいかって言うとね?」
しおり先輩がまとめる。
「私の猫になって?」
「だから嫌です!!」
「やりたいお仕事があるなら、コネで会社に入れてあげる」
「自分の力で何とかします!」
「テスト勉強しなくても良い成績にさせてあげる」
「ちゃんと勉強します!」
「そんなに嫌?」
「嫌です!」
「どうして?」
しおり先輩が切なげに、私の顔を覗いてくる。
「まる」
(うっ)
潤んだ瞳が、私を見つめてくる。
「私、酷い事しようなんて、思ってないのよ」
ただ、
「まるに、側に居てほしいだけ……」
冷たい手が私の頬に触れる。びくっと体が揺れると、手が離れる。
「ああ、まる。怖がらないで」
そっと、優しく抱きしめられる。
「よしよし、怖がらないで」
(ふひっ!)
背中を撫でられる。
「まる、怖くないわよ」
(ふへ……)
しゅん、と体から力が抜けていく。
「まる、可愛いまる」
なでなでなでなで。
(はぁぁああ、なんだこれ……)
なでなで、気持ちいい……。
(ふはあ……)
しおり先輩の腕の中で、どんどん脱力していく。
「そうそう。力を抜いて」
(ああ……。しおり先輩の声……眠くなっちゃう……)
「そう。怖い事なんてないのよ。ただちょっと」
ちょっとだけ、
「まるの可愛いところ、見せてね」
(ん?)
しおり先輩が柔らかい布で、私の両手を縛った。
「へ」
拘束された。両手が背中に回されたまま、動かなくなる。
「え?」
「ふふっ」
しおり先輩の繊細な手がゆっくりと、私の体を撫でる。
「まるってば、いけない子。この私を怖がるなんて」
きっと心が乱れてるんだわ。
「心の乱れは風紀の乱れ」
しおり先輩が唇を舐めた。
「風紀委員として、取り締まりましょう」
「誰かーーーー!!」
私は大声を出す。
「誰かきてぇええ!!」
「こらこら。声を出さないの」
「ぎにゃーーーーー!!」
「そんな悪い子には……」
しおり先輩の手が、私のシャツの中に入ってきた。
「えい」
触られる。
「っ」
「うふふ」
触られる。
「ちょっ……」
「何もつけてないから、まるの体温、すごく感じる」
しおり先輩がにっこり笑ったまま、私を見下ろす。
「どう? まる、気持ちいい?」
「……っ」
私の顔が青ざめる。血の気が引いていく。
(なんか……これ……やばい気がするんだが……?)
「まーる」
指が肌をなぞり出せば、嫌でもぞくぞくしてしまう。
「ぁっ」
「あら、えっちな声」
くすぐるようになぞってくるものだから。
「ん」
「聞かせて、まる。まるの声が聞きたいの」
細い指が、体に触れてくる。
「ん、ん……」
「ほら、まる、呼吸も乱れてきた」
「ひゃっ!」
「あはは。ごめんごめん」
「あ、だめです、そこは……!」
「まる、同じ女の子に触られて、えっちな気分になっちゃったの?」
「な、なってません!」
「でも、まる、さっきから可愛い声ばかり出してるよ?」
はしたない声。うふふっ!
「さ、触らないでくださっ……!」
「嫌だ♡」
――もぞ。
「んんっ!」
「あはっ♡ もう、まるってば♡」
――もぞもぞ。
「はあ、はあ、はあ……!」
「可愛い。まる。すごく可愛い。ねえ、早く私のものになって……」
――もぞもぞ、もぞ。
「ん、んん……!」
「ね、まる、いい?」
「え……?」
「しても、いい?」
「な、……何を、ですか?」
訊けば、しおり先輩は薔薇のように美しい笑みを見せる。
「大丈夫よ」
私のシャツの中から手を出し――私の太ももに手を置いた。
「まるは感じてくれるだけでいいからね? 何も怖くないから」
「あの、何を……」
「心が乱れてる。深呼吸して。怖くないから」
「えっと……」
「ジャージは脱ごうか」
「あっ」
しおり先輩の手が、私のジャージのチャックを下に下ろす。ジー、と音が鳴る。
「あ……」
(この音の感じ、やだ……)
ぞくぞくしてくる。けれど、お構い無しにしおり先輩がにこにこしながら、楽しそうに私のチャックを下ろしていく。
「ふふっ、まる……」
「や」
「え?」
「……いや……です……」
「……まるったら、……いけない子ね」
私が笑ってお願いすれば、皆快く承諾してくれた。なのに――貴女は拒むのね。
「だから、気に入ったのよ」
しおり先輩の手が再び私の太ももを触る。
「っ」
「まるのお肌、すべすべね」
なぞってくる。
「ぁ、い、いや……あの、だから……」
「大丈夫。怖くないから」
「あのっ……」
しおり先輩の手により、スカートが上がっていく。
「……っ!」
しおり先輩の笑顔が、目が、手が、笑い声が――すごく、怖く感じて――体が震えて――ぎゅっと瞼を閉じた。
――瞬間、
ばごーーん! と扉が開けられた。
「ひえ!」
悲鳴をあげてぎゅっと身を縮こませると、鍵を握ったなでしこ先輩が立っていた。
(……あ……)
「まるさん、捜しましたよ」
なでしこ先輩がふわりと微笑む。
「視聴覚室から行方不明になったと、伊集院さんから言われました。全く。お友達にご心配をかけてはいけないでしょう?」
「……」
「こちらにいらっしゃい」
(いや、先輩、両手縛られてるの、見えてますよね?)
なでしこ先輩がしおり先輩に微笑む。いつの間にか私から手を離していたしおり先輩も、なでしこ先輩に微笑む。
「ご機嫌よう。なでしこさん」
「ご機嫌よう。しおりさん。またまるさんが悪さを働いたようで」
「ええ。取り締まり中でしたの」
「そうでしたか」
「後程お渡ししますので、今はお引き取りを」
「いいえ。お友達を待たせるのはよろしくありません。今すぐに解放してあげてください。悪さに関しては、放課後にでも、私の方から指導しておきます」
「いいえ、そんな。なでしこさんにやってもらうまでもございません。私が取り締まりますわ」
「大丈夫ですよ。問題児の一匹程度、私が指導しても問題ございませんから」
「ふふっ。なでしこさんはお優しいこと。でも、今回はこの私が」
「いいえ。結構ですわ」
「ねえ、なでしこさん」
「はい、何でしょう」
「この子は、私が担当しますわ」
しおり先輩が、手を縛られて縮こまる私を抱きしめた。
「何分、風紀を乱す問題児ですから」
「結構です」
なでしこ先輩が化学準備室に入った。
「指導が必要な方には、一つの指導だけで充分です」
なでしこ先輩が微笑む。
「ほら、まるさん、両手を拘束なんてふざけた事してないで、こちらにいらっしゃいな」
「……誰か、解いてください」
「……仕方ありませんね」
しおり先輩が手を伸ばす。私の両手に結んでいた紐をしゅるりと解く。
「まるさん、風紀の乱れを行ってはいけませんよ」
そう言って、――むちゅ、と、私の頬にキスをした。
「んっ」
私の肩がぴくりと揺れると、しおり先輩がくすりと笑う。なでしこ先輩はにこにこしながら、私に手を差し出した。
「まるさん、速やかにこちらへ」
「は、はい」
立ち上がり、そそくさとなでしこ先輩へ逃げようとすると、手首をしおり先輩に掴まれる。
「ぷえ?」
そのまま引き寄せられる。
(ふぁ?)
後ろから、ぎゅっと抱きしめられた。なでしこ先輩が笑ったままきょとんとする。しおり先輩もにこにこする。
「まる、覚えておいて」
耳元で囁かれる。
「お前は私のものよ」
そう言われて、ようやく手が離れる。私は自由になる。ぽかんとしおり先輩を見つめると、背中を叩かれた。
「ほら、まるさん。なでしこさんがお待ちですわよ」
「は、はい」
そそっと小走りでなでしこ先輩の横に立つ。私の背中に、なでしこ先輩の手が添えられる。
「さ、こちらです」
「あ、はい」
しおり先輩を残して、私となでしこ先輩が化学準備室から出て行く。振り向くと、しおり先輩が女神のように微笑み、手を振っていた。
(……やっぱり、苦手だ。あの人。よく分からないこと笑顔で話し出すし、あんなところやこんなところ触って悪戯してくるし)
でもなんだかな。
(……切なそうな目だったな)
お前は私のものよ。
(切なそうな声だったな)
少しだけ、気になるな。
(ともあれ……助かった……)
なでしこ先輩と人気の無い廊下を歩く。
(かなちゃん、結局どこにいたんだろう)
なでしこ先輩と階段を上る。
(今日は身体検査だから、三限目で帰れるやー。帰ったらゲームしようっと)
なでしこ先輩と廊下を歩く。
(うん?)
生徒会室に歩いている。
(あれ?)
いつの間にか、生徒会室の前に来ている。
(……あれ?)
なでしこ先輩が扉を開ける。
(おっと、これは、まさか……)
投げ入れられた。
「ひゅーん!」
地面にころころころ! と転がる。なでしこ先輩が扉を閉めて、いつもの如く鍵をかけた。
「あばばばばばば!」
「逃げるな」
振り返るなでしこ先輩は、鬼の如く。
「今度は何をされた」
「な、何も……」
「また嘘をつく気か?」
「い、いや、あの……」
「言え。何をされた」
「あ、えっと、あの、変な勘違いをされないで欲しいのですが……」
「あ?」
「あの、その……」
私は目を逸らして、正直に話す。
「……ちょこっと、……体を、触られました」
なでしこ先輩が腕を組んだ。
「あの! 勘違いしないでください! しおり先輩のただの悪戯です」
なでしこ先輩が近付いた。
「なんか、変に気に入られてるみたいで」
なでしこ先輩がカーペットに膝をつき、座ったまま口を動かす私に手を伸ばした。
「いやあ、モテる女は辛いですね! なはははは!」
後ろにぐっと引き寄せられる。
(むはっ!)
後ろからぎゅっと抱きしめられる。
(んぶっ!)
後ろ向きで、なでしこ先輩の腕の中に閉じ込められる。
「どんな風に触られた?」
なでしこ先輩の目が、ぎらりと光る。
「言え」
(先輩、怖いです。目が怖いです)
私は顔を引き攣らせながらなでしこ先輩に振り向き、縮こまる。
「あのー……」
「ああ」
「こう、すりすりっと」
「ほう」
なでしこ先輩が、ジャージ越しから私の体に触れた。
「ひゃっ!」
「これで、こうして、こうか?」
「んっ」
「チッ。……やりづらい」
またジャージのチャックが下に下げられる。
(うっ)
ジーーーという音が耳に反響して、背筋がぞくぞくする。
(なんか、この脱がされてる感が、やだ……)
ソファーにもたれて、顔を隠す。後ろから、羞恥で震える私の体を、なでしこ先輩が触れてきた。
「っ」
「どこ?」
「あ」
「どこを触られた?」
「せんぱっ」
「布越しか? 直接か?」
「えっと、その、ちょ、直接……」
「あの女……」
なでしこ先輩の手がTシャツの中に入ってくる。
(えーと、えーと! えーっと!!)
「なでしこ先輩! ちょっと、あの! 身体検査の日だからって、少々大胆すぎやしませんかね!」
「あの女の匂いがする」
なでしこ先輩が私のうなじに鼻を押し付けた。
「よくも触られたな。まる」
「不可抗力ですって! 見てましたよね! 縛られてたんです!」
「どうせお前が隙を見せたんだろ。今度は首輪でも付けられるぞ」
「いや、流石のしおり先輩も、そんななでしこ先輩みたいな事しませんよ!」
「私はいいんだ。お前の主だから」
「ああ、そうでしたね。はいはい……」
その時、なんの合図もなく、なでしこ先輩が私のうなじを舐めてきた。
「わひゃっ!」
なでしこ先輩の手が、私の肌をなぞる。
「~~っ」
Tシャツに皺が増えていく。なでしこ先輩の手がTシャツ内で暴れ回る。私の体なのに、まるで自分の所有物とでも言いたげに。
「……まる」
なでしこ先輩が私の耳に囁いた。
「息、荒いぞ」
「……っ」
私は拳を握る。
「だ、誰のせいだと……!」
「なんだ? 私のせいとでも?」
人のせいにするなんて、なんて生徒だ。
「指導だ」
「ひゃっ!」
「何でも人のせいにしてはいけない。興奮して息を荒くさせてるのはお前だろ? まる」
「こ、興奮って、私、別にそんなこと……!」
――もぞ。
「ひっ、や!」
なでしこ先輩の手が動く。
「ゃっ、いやです、それ、やだぁ!」
なでしこ先輩の手が動く。
「あっ、それも、いや! です! ぁ、あっ!」
「嫌々ばかりだな」
なでしこ先輩の手が、下に伸びる。
「ここは?」
「えっ?」
なでしこ先輩が、私の太ももに触れる。
「触られた?」
「……まあ……撫でる程度に?」
なでしこ先輩が真顔でわたしの足を引っ張ってきた。
「ぎにゃーー!」
両足を左右に開かされる。ぎゃーー! BL色で揃えてきたパンツが丸見えーー!!
「お助け! お助けーーー!!」
――なでしこ先輩が私の太ももに噛みついた。
「んっ」
なでしこ先輩が歯を食い込ませる。
「ちょっ、ひ、せんぱ……」
なでしこ先輩の唇が私の太ももをを咥えてくる。
「痛い、です……」
なでしこ先輩が私に言いたげに鋭い目で見てきた。指導中だ。
(私、最近なでしこ先輩の思ってること、読み取れるようになってきた気がする……)
「……ったい……」
太ももに、なでしこ先輩の歯形がつく。
「先輩、何するんですか……」
「指導だ」
「何の指導ですか……」
「お前がすぐに人のせいにする事に関してだ」
「それはなでしこ先輩じゃ……」
「息を荒くしたのは」
「はい! 私です! 私ですけど! 触り方が、」
「なんだ?」
「そのっ」
「私の触り方に意見でも?」
「……だから、そのっ、先輩の、触り方が……」
目を逸らして、呟く。
「……えっち……だった……から……」
――その瞬間――なでしこ先輩が、私の太ももから離れた。
(うん?)
なでしこ先輩の手が私のTシャツの皺を伸ばし、乱れたジャージの皺を伸ばし、私に着せ、チャックをやっぱり一番上まで上げた。
「うぷっ」
「確かに、全てをお前の責任にするのは気が引ける」
だが、しかし、
「軽く触れただけで息を荒くし、その理由が貴女に触られたから、なんて言ったらどこかの薔薇の匂い女が勘違いする。わかるな?」
「えっと、勘違い……とは……?」
「はあ」
上体を起こされる。
「まる」
「はい?」
――ちゅ。
柔らかな唇が、頰にくっつく。
(あ)
そこは、しおり先輩にキスされたところ。
(わっ)
また、なでしこ先輩がキスしてくる。
(わわっ)
ちゅ。
「せんぱっ……」
「今、お前にキスをしているのは誰だ」
「私にキスをするのなんて、なでしこ先輩くらいしか……」
「ちゅ」
「んっ」
「そうだ。私だ」
お前にキスをしているのは私だ。
「自覚しろ。隙を見せるな。自衛しろ。今度あの女にべたべた触られてみろ」
なでしこ先輩が近付く。
「次は、容赦しないからな」
(……なんだかな)
なでしこ先輩って、言葉は乱暴なんだけど、
(……触れてくる手は、なんでこんなに優しいんだろ)
しかも、この優しい手に安心している自分がいる。
(……多分、似てるんだろうな)
あの子も嫉妬深かった。他の女の子に触られただけで、全力で泣き叫んでた。だから、私は必死に謝って泣き止ませてた。
(似てるな)
この強引で、優しい感じが、
(なっちゃんを思い出す)
なでしこ先輩の手が私の太ももに置かれ、噛み跡がついたその場所を、舐めるような手付きでそっと撫でた。
(*'ω'*)
時間を見れば、既に学活の時間は終わっている時間。
私が急に体調不良になったから生徒会室で休ませてる、という連絡をなでしこ先輩がしてくれたお陰で、かなちゃんからは嬉しいくらいの心配のLIMEメッセージ。
<まる氏! 大丈夫でござるか!
<生徒会室ってどんな感じでござるか!
<やっぱり、BLにありそうな感じなのでござるか!
<教えてくだされ! まる氏! どうかこの通り!
「ランチの時間だ。帰って食事にしよう」
なでしこ先輩がそう言って腰を上げ、ふと、言葉を訂正する。
「……いや、外食でもするか」
「へ、外食ですか?」
「マックがいい」
私は顔をしかめる。
「なでしこ先輩、マックって、何か知ってます? フランス料理店じゃないですよ?」
「お前は私を馬鹿にしてるのか?」
「違います! 違います! やめてください! そんな風に私を責め立てるように睨まんといてください!」
そのぎらぎらした目で見んといてくださいな!
「そうじゃなくて、あの、なでしこ先輩、ハンバーガー食べれるんですか?」
「たまに体の悪いファーストフードを食べたくなる時があるだろ。あんな気分だ」
私が食べたいから、まるには付き合ってもらう。
「まる、好きなのがあったら私が特別に買ってやる。遠慮せず、好きなのを選べ」
「ま、まじっすか!? いいんですか!?」
「滅多に食べられない、高いのでもいいぞ」
「えっとっすね! じゃあっすね! 私、アレがいいっすなぁ!」
立ち上がると、ふらりと立ち眩み。
「ひゃ」
なでしこ先輩が即座に手を伸ばし、私の肩を支える。
「わ」
私がきちんと立つと、なでしこ先輩の手が離れる。私はぱちぱちと瞬きした。
「すみません」
「目眩か?」
「ただの立ち眩みですよ」
私は鞄を持って歩き出す。
「マック行きましょう」
「まる、その前に」
手招きされる。
「一回おいで」
「……何ですか?」
「なんで警戒する」
なでしこ先輩がむっと顔をしかめた。
「来い」
「はーい」
なでしこ先輩のいるソファーに歩き、腰をかける。なでしこ先輩も再びソファーに座る。
(何々? 女の子同士の秘密のお話?)
そう思いながら、にこにこしてなでしこ先輩を見上げると、なでしこ先輩の手が私の腰を掴んで、引き寄せてきた。
(ん)
そのまま、ぎゅっと抱きしめられる。
(んむ)
頭をなでなでと撫でられる。
(ふわっ)
気持ちいい。
「……」
思わず黙り込んでしまうほど優しい手が、私の頭を撫でる。
「まる」
その低い声に、胸がどきっと鳴る。
(……どき?)
耳元で囁かれる。
「痛いところはないか?」
「……痛くはありませんが、太ももに痕がつきました」
頭を撫でられる。
「怖いか?」
「……先輩の裏表は、慣れました」
頭を撫でられる。
「何も怖くないから」
「んっ」
むちゅ。
頬にキスされる。
「まる」
「あの」
むちゅ。
瞼にキスされる。
「ここも」
「あ、あの……」
むちゅ。
額にキスされる。
「あとはどこがいい?」
「あ、あの、先輩」
「ん?」
「私は、その、……ご指導を受けてたんですよね……?」
眉をへこませて、なでしこ先輩を見る。
「な、なんで、そんなに、優しくするんですか……?」
「指導が終わったらからだ」
……。
「……指導が終わったら、優しくなるんですか?」
「優しくしてるつもりはない。いつも通りだ」
ちゅむ。
眉にキスされる。
「でも、すごく優しいです」
「そうか?」
ちゅ。
目尻にキスされる。
「なでしこ先輩は、スキンシップが好きですよね」
「普通だ」
むちゅ。
目の下にキスされる。
「だって、こうやって私にキスしてるじゃないですか」
「可愛がってるペットにキスをするのは当たり前じゃないか」
ちゅ。
頬にキスされる。
「私、可愛がられてるんですか?」
「可愛がってないと、こんな事しない」
ちゅ。
鼻にキスされる。
「嫌いじゃないんですか?」
「嫌いなものを私が側に置くと思うか?」
むにゅ。
口の端にキスされる。
「じゃあ、どうしてですか?」
「ん?」
「どうして、体、触るんですか?」
「指導だから」
「他の人にはしないじゃないですか」
「そうだ。お前だけだ」
「なんでですか。おかしいですよ」
「まる」
「だって」
「目を閉じろ」
唇に、キスをされる。
なでしこ先輩の唇が、私の唇にくっつく。
ふわふわした唇。
たまに当たる硬い骨。
なでしこ先輩のジャージの裾をぎゅっと握る。
なでしこ先輩が私の腰を抱く。
唇同士がくっつく。
(……あったかい)
なでしこ先輩はスキンシップが好きなんだ。
(だから、キスするんだ)
(だから、私の体を触るんだ)
(本当に私のこと、ペットだと思ってるんだ)
(面白がってるんだ)
(またいつか、今日みたいに体触られたり、噛みつかれたりするのかな)
……ちょっと怖いな。
(……)
ふいに手を下に滑らす。なでしこ先輩の手に、自分の手を重ねてみる。
(……ん?)
なでしこ先輩の指がぴくりと動く。
(えっ)
手を握られる。
(ふぇ……?)
きゅ、と指同士が絡みつく。
(え?)
きゅん。
(え?)
――唇が離れた。
「……」
俯いて、なでしこ先輩の胸に顔を隠す。なでしこ先輩が私の背中を撫でる。
「……まる」
耳元で囁かれる。
「お腹空いただろ? マックに行こう」
「……はい」
頷いても、抱きしめてくる手が離れない。
「……マック、行くんですよね?」
「……ああ」
「……あの、じゃあ……」
抱きしめてくる手が離れない。
「い、行きましょうよ」
「ああ」
手が離れない。
「なでしこ先輩」
「ああ」
手が離れない。……絡み合った手も、離れない。
「……」
「……」
「……あの、なでしこ先輩」
「……」
「なんか、ふらつくので、もう少しだけ、このままでいてもいいですか?」
「……ああ」
なでしこ先輩の腕の力が、強くなった気がした。
「いいよ」
多分、なでしこ先輩が急に優しくなったから。
きっと、なでしこ先輩の乱暴と優しさが表裏一体だから。
まるで飴と鞭のようだから。
だから、私の顔は妙に熱くて、胸がざわついているんだ。
(なるほど、これがなでしこ先輩の魅力ってやつか!)
侮れない……!
(これが本物のマドンナか! すげえ!)
私は熱い顔を無視して、なでしこ先輩の背中に腕を伸ばし、ぎゅっと、抱き着いた。
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