第15話 不利



 普段よりも人が多くて、相手の方が実力が高い。

 それに加えて、よく知らない場所で、地理的にも不利なところにいる。


 これだけの条件が並んでいたら、勝つのは難しい。


 事実、僕達はすぐに追い詰められてしまった。


考子「このままじゃまずいか。梓! 三座から離れるなよ!」

梓「承知しておりますよ。ですが考子様も三座様も、こういったケースも想定しておくべきでしたね」


 梓は近くにいた三座の首に隠し持っていたナイフを当てた。


 一瞬驚いた表情になる三座だけど、すぐに冷静になったようだ。


三座「そういう事でしたのね。あなた、スパイでしたの」


 三座は得心の言ったような顔で、そう述べる。

 梓さんは、まったく表情を動かさない。

 信じられない。


梓「お嬢様、非常に心苦しいですが、彼等の元に行っていただきます」

三座「私の目も曇ったものですわね。裏切りものを見抜けなかっなんて。山吹梓、あなたはクビですわ」

梓「……短い間でしたが、お世話になりました」


 醒めたやりとりを交わす両者。


 主従の関係だったけど、これまでの様子を脳裏に思い浮かべると、とても見ていられない。


考子「三座、わけを聞かなくていいのかよ」

三座「どうせ捕まるんですのに? 恨める人間を恨めなくては、とても気を保ってられませんわ」

梓「良い判断です」


 梓の方もそれで良いのだろうか。

 言い表しようのないもやもやを抱えていると、離れた所から声がかかった。


あやの「それでいいいのかよ三座ちゃんお姉さん悲し……わぁぁぁぁぁぁぁ地味に怖い怖いやばい怖い、たひゅけてぇぇぇ!」


 発生源にいたのは、なぜか、いつのまにかこの戦場から離脱していたあやのだった。

 その背後にはクマが迫っていた。


考子・三座「「あやの!?」」

あやの「誉めて! ケンカ売って来たわぁ」


 彼女はほんと、いつでも人の予想を裏切るな。




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