第13話 未確認生物

「とりあえず、そこに座ってください。コーヒーは、ミルクと砂糖、要りますか?」


「いえ。ブラックで。」


・・・


「さて、さっそくですが、君の家に勝手に住み着いていると言う未確認生物について、話を聞かせてもらいましょう。」


「はい。まず1匹はおそらく大人のメス、そしてもう1匹は大人のオスだと思います。あと、メスかオスかわかりませんが、赤ちゃんが1匹います。」


「彼らは普段一体どのような行動をとっていますか?わかる範囲で構いません。」


「はい。まず大人のメスが主に家事と育児を担っているようです。大人のオスの方は、だいたい夜8時くらいに帰宅しますが、テレビの前に座ったまま、微動だにしません。言葉でメスを操作しているように見えます。赤ちゃんが泣き出しても、メスしか動きません。」


「そのオスは、メスに感謝の意を示す行為を1日に何回実施していますか?」


「一度もないと思います。」


「そうですか。ではおそらく確実でしょう。その3体の未確認生物は、今から30年前の令和15年まで生息が確認されていた、高度成長期タイプ核家族II型の典型的な生存例でしょう。私たちの研究の中でも、繁殖行動をとっている例は初めてです。ぜひ観察を続けて、私に定期的に報告をお願いします。もちろん報酬はお支払いいたします。」


「承知しました。ではこれまで通り、屋根裏からの観察を続けます。正体が判明したので

僕も安心して生活できます。ありがとうございました。」


「良かったです。ではまた来月、この時間に。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

葛藤の人々 松元嬉々 @jazzy-ryo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ