第9話 孤独の愛

唯一無二の友人であるお前に、最後のお願いがある。


見ての通り、俺の病はまもなく俺の命を奪うだろう。


もし俺が死んだときは、俺をタンスと一緒に火葬して欲しい。そうそう。俺の部屋にある茶色のタンスだよ。


今まで話してなかったけど、あのタンスは俺の内縁の妻なんだ。名前を美津子という。ひとりぼっちの俺だったけど、美津子はいつも俺のそばにいてくれた。


なかなか引き出しをスムーズに開けさせてくれなくて喧嘩になったこともあったけど、時間が経ったら、いつも美津子の方が折れて、下着や洋服を準備してくれていた。


お金の管理なんかも美津子に任せていたんだ。彼女の2番目の引き出しに、通帳と印鑑が大事にしまってあったからね。


だけど、もし俺が死んだら、美津子は独りになっちまう。他の奴とまた別の人生を、とも思ったけど、考えただけで気が狂いそうだ。


だから頼む、俺と一緒に美津子を燃やしてくれ。


ガスコンロのお前なら、それができるだろ?

なあ頼むよ、洋一。


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