第8話 背中が痒い

背中の真ん中らへんが痒い。


右手でも、左手でも、どうしても届かない。というか、右手も左手も全く動かない。


そうだ、あの女。


真知子、元気かな?背中が痒い時、よく頼んで掻いてもらってたなあ。


肉体で深く触れ合うより、その瞬間が1番愛情を感じたもんだった。ありきたりだけど、あれが何気ない日常ってやつだったんだな。


その真知子に浮気されて、そんでその浮気相手に刺し殺されて、この冷たい土の下に埋められて結構経つ。


まあ、それはどうでもいいんだけど、だいぶ白骨化してきた俺の身体の、背骨の真ん中あたりがすげー痒い。


ちょっと耐えられなくなってきてる。

1年くらいかな、我慢してる。


完全に土に還れる日が来るんかな?

そしたら痒みも無くなるかな?


恐竜の骨も残ってるくらいだからなあ。


無理かなぁ。


刺される前に背中掻いてもらえばよかったなあ。


あのイケメンの浮気相手に。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る