大きなきっかけ
「結構出くわすようになったな。ここら辺にはもう、先生はいないのか」
魔物がいるってことは周辺に先生はいない。いたら魔物たちはもうやられているからな。
「人間が、死ね
俺は光る羽をかわす。
「ほう、避けるとはな、だがこれで終わると思うなよ」
「知ってる」
俺は後ろからくる羽をかわす。魔物は驚いていた。
暁の家にあった本にはいろんな魔法の事が書かれていた。だから、大抵の事はもうわかる。知っていれば多少の対策はできる。
「なに?! その身体能力は、人間のものじゃ……」
ナイフで首をとる。俺の体質は普通の人間より力を出せる。ただ治癒能力があるだけではない。俺の体質は普通ではできないことができる。まだできることがありそうだ。
『魔物にも家族がいる』
先生の言葉をふと思い出す。
「…………関係ないね」
俺はナイフをしまおうとする。が、その必要はないようだ。
「まだいたのか」
「…………いい体じゃないか。これは上物だ。いや、特上だ!」
人型の魔物は狂ったように笑う。上物? 特上? なにを言っているんだ?まあいい。殺すだけだ
「いけないなぁ、戦ったらせっかくの体が傷ついちゃうじゃないか」
「知らねえよ」
俺が魔物に向かって走り出す。
「死ね」
魔物にナイフを振り下ろす。
「?!」
「最小限に抑えないとね」
見えなかった?! 一瞬にして真後ろに!!
「くそ!…………」
後ろ首に衝撃が走った瞬間、俺の意識はそこで途切れた。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「…………」
ここはどこだ、なぜ俺は縛られている。この部屋は、魔方陣? 何のだ。暁の部屋になかったものだ。あそこにあるのは本、代償魔法のことが書いてある。首は、動かせる。部屋には誰もいない。この縄は力ずくでちぎれるか?
本気で力を入れるも縄はちぎれるのちもない。
手も指は動かせるがそれだけじゃどうしようもないな。ナイフも取られたようだ。本の横に置いてある。
「……足音か」
誰かがこっちへ歩いてきてる。近い。
「おや? 目が覚めたようだね」
「てめえ」
こいつに気絶させられたのか。こんなやつに、今までの奴とは強さが桁違いだ。あの一撃でわかった。こいつ、一体なにをするきなんだ。
「いいね、その目付き。僕を睨んでいるその目、強い殺意があってよろしいこと」
魔物は喜ぶ。
「さあて、目が覚めたしさっさと始めちゃおうかな。どうすれば君の気持ちは強くなるかな? まずは……定番のこれかな」
「ぐっ?!」
魔物は俺の腹に拳を打ち込む。
いってぇ! こいつ、拷問でもするきか!
「ほら、ほら! このぐらいかな? このぐらいかな?!」
何回も何回も、腹だけじゃない。体のある部位それぞれに何回も殴る。暫くすると収まった。
「〜!! この、やろう!」
「はあ〜、いいねその顔、さらに殺意が強まったよ♥️」
魔物は頬を赤くし、快楽を感じているような顔になる。俺の殺意が強くなる度に喜んでいる。
殺す、絶対に殺してやる! こいつ、縄を避けて殴っている訳じゃない。こいつの力なら縄の耐久が落ちて力ずくでちぎれるようになる筈だ!
「まだまだ耐えられそうだ♥️」
「がっは?!」
さっきより強い?!
再度何度も何度も殴られる。けれども痛みはあまり気にならなかった。確かに痛いが既に何度も傷ついた体。この程度ならまだ。けれど、一回殴られる度にこいつに殺意が沸いてくる。殺したくて仕方がない。
「ああ、まだ耐えられるの? 嬉しいねぇ♥️」
「何が目的なんた!」
「ゴメンよ、教えられない♥️」
魔物は申し訳なさそうに言う。
「それよりも君、好きな人いるの? 愛じゃなくて、恋の方で」
『愛』じゃなく『恋』? なにを言っているんだこいつは。そもそも、恋って何だ。
「その様子じゃいないな、残念だなぁ、いた方が良かったのに。じゃあキスはダメだな。あまり効果はない」
魔物は考え始める。
「ナイフ、は血が出ちゃうからダメだし。殴ったところでこれ以上はあまり効果がないし、次は電気にするか」
すると魔物の手から魔方陣が出現し、俺に当てる。その瞬間、からだ全体に激痛が走る。
「ガアアアアアアアア!!!」
なんだこれは! いたい! 内部から針で刺されているような痛みだ!
「はあ、はあ、」
このやろう、ぜったいに殺してやる。
「はあ〜♥️こんなにも殺意が溢れてる♥️もっともっと、もっともっと虐めたいな♥️次は水攻めだ、その次は熱湯、次は針かな、血が出ない程度に。つぎは、つぎは!」
魔物は全てを実行した。まるで、おもちゃ見たいに楽しんだ。苦しい。けれど、どうにもならないのでむしろ僅かに冷静になれた。俺の中にある疑問が浮かび上がる。
『どれも血が出ない』
血が出るのを避けているかのように、殴っても打撲。水攻めは苦しいだけ。熱湯も火傷。電気も激痛で痺れるだけ。
けれど、そんな疑問も、頭から消える程に俺は奴が殺したくて仕方がなかった。今すぐにでも、この手で、その体を引き裂きたくて仕方がなかった。
「ぐうううう!!」
「殺すことしか考えてないその顔、僕の求めていたものだ♥️いいよ、解放してあげる♥️」
魔物が縄に手をかけた瞬間、縄はちぎれた。
「なに?!」
「殺す!! 殺してやる!!」
魔物に馬乗りになり目に指を入れる。ぐちゅっと音がなると血だけでなく僅かに粘りけのある生暖かい液体が飛び出す。
「目が! 目が!」
腹に手をやり無理やり引き裂いて内蔵を引っ張り出しそこら辺にぶちまける
「ああああああああああああ!!!」
魔物は絶叫した。絶叫して、笑った。
「ああ、ほんっとうに最高だ♥️」
「?!」
体が?! 動かない……!
「一切の迷いも躊躇もないその殺意、本当に嬉しいよ。『思い』がそんなにも強いと『命の価値』は最大に高まる」
その瞬間、部家に書かれていた魔方陣が光だす。
「極限まで高まったその力を代償に! この僕は新たな力を手に入れるんだ!」
その瞬間、俺の目と腹にとてつもないほどの激痛が走る。
「があああああ!!!」
いたい! なんなんだこれは! いたい! いたい!
今までにない激痛で俺はもがき苦しんでいた。
「感覚リンク、これで僕は君を『代償』にすることができる。『自分』しか対象にならない弱点を克服したのだ!」
魔物の腕が伸び俺のナイフを取ると俺の体を傷つけて魔方陣を俺の体に刻む。
「これで君を代償に! そのエネルギーを全て僕に! 極限にまで『命の価値』を高めた人間は限界を越える力を得られる! さあ! 」
「やめろおおおお!!」
死んでたまるかよ! この傷よ治れ! 俺の体質なら行ける! けれどどうすればいいんだ! 力は奴の方がうえだ! 感覚リンクしているのであれば奴に代償魔法の魔方陣を刻むことが出来れば!
その瞬間、体は失われた。そのエネルギーは一点に集まり、消えた。
「…………は?」
俺はとんでもない光景を見た。何とか体質のおかげで傷は無くなった。けれど、何故か魔物が傷ついて魔方陣が刻まれ、その魔物が代償で失われた。
「なんで? 何故?」
俺はあのとき、自分の傷が消え、魔物が傷つくように願った。そしたら、思った通りになった。まさか、
「腕が、傷ついたら」
俺は魔物に切られた時を思い出す。そして、その場所が右腕の事も。
右腕を見ると何故か今さっき切られたように右腕から血が出ていた。
「……俺の体質って、まさか」
俺が治癒できるようになったのはポーションで回復した後だった。過去に傷がついたから今なにもしなくても傷がついた。
「『感覚の再現』」
そして、体から力が溢れる。まさか、この力は
「魔物を代償に得た力」
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