2日間

ある日の事、先生が魔物を倒しに言っている間、いつもより少し時間がかかっている間に魔物に襲われた。

けれど先生から教わった護身術のおかげで倒すことが出来た。


「よし! 」


ナイフについた血を拭う、先生が帰ってくる前に食事の用意をする事にした。


「兎の群れが近くにいたおかげで沢山取れたな、食うとしても余った分はそこら辺に置いとけば他の動物の餌になるし」


俺はナイフで兎を捌く、皮を剥いで背骨に沿って切り込みをいれて、部位に分けて解体した兎を食べれない部分とに別ける。火打ち石で木の枝を燃やし焚き火をする。兎の肉を焼いていると先生が戻ってきた。


「先生……結構派手にやってたな、ここまで音が響いてたよ。服もいつも以上にボロボロだし」

「今回は強敵でな、複数いていつもより手間取ってしまった」

「それよりも先生、魔物に襲われたけど倒したぞ、俺も強くなっているんだ。そろそろ戦いかたを」

「ダメだ」

「ち」

「舌打ちするな」


今日も教えてくれなかった。護身術以外にも体術を教えてはくれるがどれも自衛に向いているものだ。


「はい、焼けたよ」


不機嫌そうにして俺は棒を刺した兎肉を渡す。


「ありがとう」


先生はそう言って受け取り食べる。


「塩が尽きたから美味しくないな」

「そうか? 兎肉は旨いと思うが」


村で調理したご飯を食べてきた俺は最初、サバイバル生活の食事にはなれなかった。今となってはなれているがいまだに美味しくは感じられない。


「……」


先生は俺が倒した魔物をみる。


「目ぼしいものはなかったけど」

「……魔物を退治するとき何か思ったことはあったか」


何故そんなことを聞くのだろうか、わからなかった。質問の意図が良くわからないまま正直に言う。


「俺は前と比べて強くなったとか、倒せてよかったとか、強くなっていけば先生と一緒に戦えるとか」

「……魔物に対してはどう思った?」

「魔物に?」


どうして聞くんだろうか


「別に何とも、強いて言うなら俺の倒せる程度のやつで良かった」

「…………そうか」

「?」


今の間は何だろうか、魔物に対して……良くわからないな。


「今日はもう遅いな、寝る準備でもするか」

「わかった」


俺はリュックから薄い毛布一枚出してかけて寝る。体質のおかげで風を引かないので贅沢さえ捨てれば大抵の場所で寝れる。寝心地は良くない。


「お休み」

「お休み」


俺が言うと先生は優しい声で返してくれる。俺は眠る。最初は父が亡くなって寂しくて、そんな俺を先生は優しく抱き締めながら一緒に寝てくれた。

今はもう平気だが、やっぱり寂しい気持ちは無くならない。


「おはよう」

「おはよう」


先生はいつも早起きだった。俺が寝ているところを見たことがないぐらいに。一緒に寝ると言っても先生が先に寝ているところも見たことがない。積まれ俺は四年間一緒にいて先生の寝顔を知らない。


こうして今はもういつも通りの旅の続きをする。


そして夜がまたくる。


「…………」

「先生?」


先生が魔物を倒しに行くときはいつも険しい顔で、どこか悲しい顔になるが今回は一段と険しい顔をする。


「××、暫くは戻れない」


時間がかかるときは『暫くは戻れないかもしれない』と言う。今回は断言しているところをみると本当に時間がかかることがわかる。


「行ってらっしゃい」


俺は対して気にせずいつも通りのことをいう。


「1人でも大丈夫か?」

「大丈夫だよ。危険だったら勘でわかるんでしょ」

「あ、ああ。そうだな」


先生は心配そうに言うがいつもよりもなんか違う気がした。先生が倒しに行くと月明かりのないよるがくる。幸いにも近くには水辺も動物もいるしある。多分困ることはない。


狩りをして食事をして、水辺で水浴び等をして眠る。


次の日起きると先生はいなかった。まだ戻ってきてない。初めてだな、夜いくことはあっても俺が起きる頃には絶対に戻ってきた筈なのに。


「まあいっか」


俺はいつも通りに過ごす。運動して体術、護身術の復習、体を鍛える。食事を作る。


「…………戻ってこないなぁ」


先生は戻ってこない。いつもならどんなに長くても五時間ぐらいで戻ってくるはずなのに、どうしてだろうか。いくらまっても戻ってこない。


「1人で食うか」


一人で食うのは何度かあった。無言で咀嚼音だけが聞こえる。後は火の音風の音だけ。


「……先生、まだかな」


先生を待つ。仰向けになって白い雲がゆっくりと動く空を見る。遠くにあるものほどゆっくりに見えるけど、あんなにも、想像もできない高さにある雲が動いているように見えるのは雲は本当はもの凄い早さで動いているから。どのぐらいの早さで動いているのだろうと考えているうちに焚き火の火は消えていた。先生の分の兎肉も真っ黒焦げになってとても食えそうに無かった。


「やっちまったな」


真っ黒な肉を見つめては手にとる。ちょっとした好奇心で一口食べてみる。


「おうぇ!!」


あまりの不味さにすぐに吐き出してどこか遠くへ投げ飛ばす。


遠くへ飛んでいった肉はどこかへ落ちる。どこかは知らないが投げた方向のどこか。


いくら待っても先生は戻ってこない。昼、夕方、既に夜になっていた。


「…………いつ戻ってくるんだよ」


いくらなんでも遅すぎる。なんでだ? なんで戻ってこない?


『1人でも大丈夫か?』


もしかしてもう戻らないってこと? 俺は見捨てられたのか? それとも俺はもう一人で生きていけるからいなくなったのか?


「やだよ、嫌だ」


戻ってきてよ。頼むから、寂しいよ、先生以外、俺は知っている人がいないんだよ。先生がいなくなったら俺はどうすれば良いんだよ。


「…………」


震えが止まらない。また一人だ。お父さんが殺されたときと同じ、嫌な気持ちだ。


「おい、人間がいるぞ」

「本当だ、人間がいる。今日の晩飯ゲットだな」

「一人かよ、4体で別けるには少ないな」

「俺脳味噌〜」


魔物が4体、近づいてくる。近くに来ては旨そうに俺を見る。


「おい、こいつ、泣いているぞ」

「俺達に恐れなしたのか?」


魔物は俺を取り囲んで逃げられないようにする。


「おーい、大丈夫でちゅか〜?」

「こいつ、動かねえぜ、いつかちびるんじゃねえの?」

「おいおい、漏らすなよ、不味くなるから」


……黙れ


「ん? こいつ何か言ったか?」

「え?何か言ったのか?」

「俺には聞こえなかったが?」


黙れ


「やっぱ何かいってるぞ?」

「もしも〜し、なんていってるんでちゅか〜?」

「ギャハハハハハ! 赤ちゃん言葉はわらえるぜ!」


「黙れ」

「ギャハハ…………は?」


顔に耳を近づけていた魔物は血を流して倒れる。


「おいこいつ! ナイフで刺したのか!」

「てめえ! 何しやがる!」


魔物達は一斉に襲いかかる。


「…………強くなればいいんだ。」


そうだ、強くなれば、先生の隣にいられるぐらい強くなれば


「先生がどこかに行ってしまうことは無くなる」


「が…………あ」

「ぎぎぐ……」


魔物を全て刺し殺す。死ななかったら何度も刺す。動かなくなるまで、


「ひ、ひい!」


残った一体の魔物は3つの死体を見えビビる。

いや、違う。先生は素手だった。素手で倒さないとダメだ。ナイフは閉まっておこう。


「く、くるな! くるな!」


魔物は魔方陣を展開する。炎が出るがかわしてその拳を叩く。





朝が来た。起きて朝食の準備をしようとしたとき、先生は戻ってきた。


「すまない。2夜も一人にして、大丈夫だったか?」


先生は心配そうに聞く。


「大丈夫、先生はちゃんと戻ってきてくれたから、ねえ先生、あれを見てよ」


俺は倒した魔物に指を向ける。3体の魔物が刺し殺されていた。


「俺が倒したんだ、先生」


だが先生は3体の死体より一体の死体の方を凝視していた。



目がえぐり取られていて、顎は無理矢理外され、顔の河が伸びている。腹には大きく裂けたようになっており内蔵が引きずり出されている。


「先生、4体の魔物を倒したんだ。しかも1体は先生と同じ素手で倒したよ。前の俺なら無理だったけど、俺はちゃんと強くなれるんだ。だから教えてよ先生、『戦いかた』を」


先生は俺の腕を見る。その腕は綺麗だった。けれど、血の臭いがまだ残っていた。


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