代償魔法VS代償魔法

「……なに?!」


代償魔法で得たエネルギーを巨大な手の形にしてティランノの拳を包み込むように受け止める。


「お前の場合、得たエネルギーを100%扱えている訳じゃない。力をコントロールできない。代償魔法はそんな品物だ。コントロールが出来るようになるほどに使い続けることは普通なら出来ないからな」


俺はエネルギー体の手でティランノを持ち上げ、放射状に爆発させて遠くへとぶっとばす。そこからさらに追い討ちをかける。


「扱えてないエネルギーがあるならより多く失えば良いだけだ! 代償魔法! グレイトフルチェンジ!」


ティランノの左腕が吹き飛んだかと思えばさらに弾け散らばり俺を囲むようにエネルギー体の槍になる。


「串刺しにしてやる!」

「……」


一斉に俺に飛んでくる槍を全てかわし指をティランノに向ける。


「代償魔法はこんな使い方も出来る」


代償魔法魔法でエネルギーを爪に集め、発射する。爪はティランノの首に当たると大爆発を起こした。


「拳銃を見て思い付いたんだが案外使えそうだな。俺なら爪はすぐに伸びる」

「首がぁぁぁぁぁぁ!!! 」


首に気を取られているうちに蹴りで追い討ちをかける。廃墟の街の外れにまで移動した俺達はすでに失った体が治っている。


「来るなら来い。来ないならこっちから行くぞ」

「舐めるな! たかが人間1人が勝てる筈が無いんだよ! 代償魔法! 」


腕が光だし地面に手をつける。すると大きな地震が起きると少し間があって俺の真下の地面が割れる。


「地割れだと?!」


そんなことが出来るのか!


「ぶっ潰れろ!」


地面はそのまま閉じ、人間が蟻を潰すように俺の体が潰れる。


「ハハハハハハハハハハハ!!!! 所詮は人間だ! 自然界の強大な力には叶う筈がない!」

「それは人間じゃなくても、どの生物でも同じだ!」


俺は代償魔法で極限を越えて身体能力を上げて地面を抉じ開けてティランノの真下の地面を割る。ティランノはバランスを崩して落下する。


「力づくだと?! いくら代償魔法があるからと言えどあり得ない! 私でさえ30人分を使ったんだぞ! 」

「30『人』?」


今こいつは人と言ったのか? 化け物を『体』と数えていなかったか?


「だが地面を抉じ開けるのに精一杯で隙だらけだぞ! 代償魔法! グランドファイア!」

「この音は、したか!」


割れた地面の底知れない闇から炎が迫る。


「さらに代償魔法! グランドボム!」


ティランノは地面に腕を突き刺して上にに這い上がると同時に地面が砕け落石が起こる。それが全て大爆発を起こす。


「大爆発と獄炎のサンドイッチだ! 」


街の外れ、決して山でない場所で噴火が起きた。もし人々がちゃんと生きる世界であるのならきっと大騒ぎだろう。


「代償魔法はそんなことも出来るのか!」


俺が噴火に直撃したのを見てティランノは嗤う。勝利を確信していた。


「いくら再生すると言えど体そのものが消滅したら元もこもない! 俺の勝ちだぁぁぁぁ!」

「1つ質問してもいいか」


歓喜の表情は一瞬にして消え去る。それと同時に汗が出始める。


「何故、後ろにいるんだ? お前、どうやって!」

「再生する速度を上げて体が消滅するより早く治しただけだ」

「……お前、本当に人間か? 」

「人間だ。『化け物』と呼ばれることもあるがな。それよりも答えろ。さっきお前は『人』と数えた。それはどう言うことだ」


ティランノは答えずに振り向き様に肘打ちをしようとする。俺は足を上げて受け止める。


「素でティランノよりも力が上何て、先程の再生能力といい、お前、化け物より化け物だよ…………」

「褒め言葉どうも。だがそんな事はどうでも良い。早く答えろ」


するとティランノの肘が光だし、放射状に大爆発が起こる。


「なっ?!」


景色が絵を描いた紙を水に浸したようにぼやける。ちゃんと見えるようになったと思ったら近くの大木にぶつかっていた。


「いくら力があるとはいえ単純な差には勝てない。私はもう出し惜しみをしない。100人分の命で葬ってやる。いくら再生能力が高いお前でも一瞬だ。一瞬で消滅する……さっき何故『人』と数えたか、冥土の土産に教えてやろう」


ティランノは代償魔法のエネルギーを腕に集束させる。


「この化け物どもは元は人間なのさ」

「人間だと?!」


人間を知性もない、おぞましいモノに変えていると言うのか!


「別になんの問題もないだろ? こんな世界で、できることはただ生きるだけ。その生きることもままならず死んでいくのだから。ならただ意味もなく死ぬより俺がこうして兵器として作り替えた方がよっぽど意味がある。誰の役にもたたないゴミグズ当然の存在から誰かの役に立っているんだから、むしろ感謝してほしいね」


必死に生きようとしている人間を、化け物に作り替えて別で生きようとしている誰かを殺すために。


「それに、この世界で生きていくなら別の豊かな世界で生きていくのを皆望んでいる。私はその希望を与えたんだ。化け物になれば元には戻らない。必要な犠牲なのさ」


希望を持つ意思を奪って、別世界を侵略して、略奪しようとして、生きる意味さえも奪って…………








「お前もう、何も言うな」


殺す。


「……お、おい、なんだよ。その目は、」

「何後退りしてんだよ」


殺す。


「一体なんだよ! その目は! 」


ティランノは震えて後ろに下がる。一歩前に出ると一歩下がる。


「来るな! 来るな! 」


俺は拳を握りしめる。


「そ、それ、殺意だろ? 俺を殺そうと思ってんのか? 今の話を聞いて殺そうとしているのか? 」

「さっきいっただろ。黙ってろ」


恐怖に怯えたティランノ。本当に殺意は便利だ。こういうやつは足がすくんで殺しやすくなる。


「お! 俺を殺せる訳がない! 死ぬのはお前だ! 100人分の力をくらえ! 木っ端微塵、いやチリ1つ残さずきえろおおおおお!!!」


ティランノは自身の強さで恐怖を誤魔化し俺に代償魔法で力を与えた腕で殴ろうとする。


「代償魔法」


だけど、俺には勝てない。『命の価値』のない奴に負けることは許さない!


俺とティランノの拳がぶつかり合う。エネルギー量は圧倒的に、桁違いにティランノの方が上だった。しかし、その体を後方へ飛ばしたのはティランノだった。


「なんで?! どうして私が押し負ける! おかしいだろ!」


ティランノは無くなった右腕を見てそう喚く。俺はさらに上からかかとおとしでその体を地上より下へと誘う。


「やめろ!」


ティランノはそう訴えるも俺はやめない。さらに追い討ちをかける。


「100人がダメなら200人だ!」

「いくらやったって無駄だ! 代償魔法は、明日を生きようとするために、誰かを守るために! 希望の為に! 生きることを捨てたものが使う魔法だ! 化け物にされて、希望も無くなって、ただ何もわからないまま兵器になって殺して、ただ復讐の道具にされた命に! 価値なんてあるわけがないだろ! 」

「『命の価値』がなんだって言うんだ! しねえ!」


ティランノはまた代償魔法で俺を殺そうとする。しかし、俺は殴って打ち勝つ。


「代償魔法もなしに?! おかしいだろ! お前のその力はなんだ?! 一体どんなことをしたらそんな力を得るんだ!」

「死ね」


俺は奴の顔面に本気で拳を叩き込む。ティランノの体は地面を突き破ってずっと下へと落ちていく。


「どんなに再生能力があろうが無駄だ。頭を潰した。『考えられる』ようになる前に溶岩へ到達し、永遠にお前は溶け続ける。『意思』がないまま死に続けろ」
















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