廃墟の街

「……ここは」


昔に勇者に聞いたことがある。ビルと言う高い建物が建ち並び、道路と言う土も見えない道があり、車と言う鉄の塊の乗り物が走っていると。まさにその場所だった。けれど、窓ガラスは割れ、建物にはヒビが入っている。倒壊しているものもある。車は聞いた通りのものが道に並んでいる。しかし一台も動いていない。


そして俺達は、そのビルの屋上に立っている。


「滅びた世界か。これほどまでの技術とテクノロジーをこれほどまでに広めているとはな」


デルタはビルから飛び降りると車の横に着地する。そして、車を一台一台蹴っていく。俺も飛び降りる。


「デルタ、何をしているんだ」

「車には防犯防止の為に衝撃が加わるとブザーがなる装置がある。全てにでは無いが、鳴れば気づいてここに来る者が現れる可能性がある」


すると一台の車が大きな音を鳴り散らす。かん高い音大きな音は遠くまで届きそうだ。すると足音が1つ、また1つと近づいてくるのがわかる。


「……どうやら来てくれるのは熱狂的なファンだけのようだな」


「うがかががががぁがあがぁ」


こんなにも化け物が沢山とはな。人は来なかったが鳴らしてよかった。


「数は100を越えている」

「どうやってわかったんだ?」

「レーダーに反応している数を見ただけだ」

「レーダー?」

「探知できる道具だ」

「そんな便利な物があるのか。と言うかそれがあるならわざわざ鳴らす理由が無い気がするが」

「外にいるものは遠くまで探知できても建物内に居るものは遠くまでは探知できない音に反応してもらうのが早い」

「そうか」


大量に走ってくる化け物達。四方八方塞がれ逃げ道は無い。なら一掃するだけだ。俺ならこれぐらい日常茶飯事だったからな。敵が魔物か化け物かの違いだ。


「愚かな、この私に向かってくるとはな」


デルタの腕がの腕へと変わる。


紅眼のスカーレットアイズ悪魔龍デビルドラゴン

「それがお前の魔法か?」

「超能力だ」


超能力と魔法の違いはわからないが、姿を龍へと変えるのか。龍とは戦ったことがあるがどの魔物よりも強かった記憶がある。


「受けてみろ! 最強の種族である龍の力を! 滅びの始まり!レッドビッグバン!


デルタの龍の掌に赤い光が集中し、玉になる。その玉を投げると、化け物に当たりその中心から大爆発を起こす。辺りにチリ1つ残らない。


「派手にやるな。が、道路には誰もいないのは確認済みだ。俺も派手にやらしてもらう!」


俺は横にあるビルを蹴る。ビルにヒビが入り砕け、地面から離れる。それを蹴りあげるとビルは瞬く間に砕け崩壊する。俺は飛んで思いっきり手を会わせる。衝撃で俺を中心から数十メートルが真空になる。空気が元に戻ろうと飛散したビル事集まる。砕けたビルは一塊になり、それを蹴り飛ばした。破片は飛び散り。瓦礫の雨を降らせる。

瓦礫は化け物たちに突き刺さり押し潰し、車にぶつかっては爆発を起こす。


「これで半分は片付いたか?」

「どうかな、まだまだくるぞ」


「「…………」」


俺とデルタは互いを見る。俺は落下しながらどう短時間で一掃しようか考えていた。


さて、どうするかな。本気でやれば1、2発で行けるとは思うがそんな事をしたらどこにいるかもわからない生存者を巻き添えにする可能性もある。

デルタも同じ筈だ。龍の本質は口から吐き出される力だ。それをしないのはおそらく同じ理由。なら


「デルタ、上に頼む」

「そう言うことか」


俺は着地した瞬間に跳び立つ。それと同時にデルタは空に向かって掌を向ける。すると腕からは先ほどとは比べ物にならないぐらいのエネルギーが集まる。


滅びのレッドブレス!デリートブラスト!


赤い極太いレーザーが天に向かって発射される。


「はあ!」


俺はそのレーザーを殴る。するとレーザーは拡散し、辺りへ広範囲に雨のように降る。100体以上いた化け物は一掃される。

俺は地面に着地する。


「その身体能力、もはや人間ではないな。いや、人間には未知なる力がある。不思議ではないか」

「人間やれば大抵のことは出来る」

「まあいい、上から見たのだろう」

「ああ、この化け物、周りから集まってきてはいたが南だけは異常な数だった。南に何かあるだろうな」

「そうか、なら貴様は行方不明者を探せ。俺は南へ向かう」


そう言うと俺の返事も聞かずに南へ歩き出す。


「行方不明者は二の次、いやどうでも良いみたいだな」

「どうでも良くはない。むしろ必要な存在だ。見つけ帰還次第我がギルドの病棟で検査を受けさせる」

「何が目的だ」

「貴様に答える義理はない」


デルタは背中から龍の翼が生えると辺りに突風を起こしながら飛んでいく。


「……」


デルタは何を考えているのかがわからない。が、敵対する必要がない。勘がそう言っている。


「誰かいるか!」


返事は無い。誰もいないか怯えて出てこないか。化け物に隠れて生活するには地下が一番だ。

近くの建物に入る。地下への入り口を探す。この化け物は建物にはいないのだろうか。建物には当ててないが、一匹もいないとなると外に出る習性でもあるのか。


「あった」


地下への隠し扉だ。随分と頑丈そうだ。開けられるけれど。

中は案外綺麗だな。けれど誰もいない。いや、1人いるな。


「誰かいるか!」

「バカ、大声出すな」


声のした方へ向くとそこにはボロボロの男がいた。


「ただでさえさっきから大きな音がしているんだ。今は静かだけど今頃この辺りを化け物が大量にうろついている」

「大きな音? なるほど、あれは俺達がここ一帯の化け物を殺した音だ。沢山いるがうろついてはいない。全部死体だ」


すると男は驚いた。


「あの化け物をだと?! 信じられない! 」

「なら外出てみるか?」

「化け物がうろついているのに出られるか!」

「百聞は一見にしかず」

「は?」


俺は男を掴んで外へ出る。男は叫んでいたが外の光景を見て黙った。


「嘘だろ? あの大群を倒したのかよ」

「ああ、それよりもお前、『サター・ローカド』で合っているか?」

「ああ、どうして俺の名前を」

「お前の顔と名前が行方不明者リストに乗っていた」

「てことは、あんたは俺を助けに来たのか?!」

「そう言うことだ」


サターは喜んだ。その場に崩れながら泣きながら礼を言ってくる。


「ありがとう! 俺は見捨てられてなかったんだ! ここ何日もろくに食ってなかったから助かった!」

「喜ぶのはまだ早い。このゲートに見覚えはないか?」

「ゲート?」


サターはゲートを見ると見覚えがあるようで驚いた。


「そうだ! いきなりこれが現れたと思ったら吸い込まれてここにいたんだ! 見たことの無い聞いたこともない、文字も知らない場所だったから異世界だとは思ったんだが」

「言うとおり異世界だ。だからこれを通れば安全だと思うかも知れないが、これを化け物が通って向こうでも大変な事が起こっている。だから暫く近くで身が隠せる、食料がある場所が欲しい」


今の現状を聞いてサターはそんな! と言ってくるが直ぐに考え込む。そして南へ指を指す。


「安全な場所は俺がさっきいたところだ。けれど食料が無い。昨日まで一緒にいたやつから聞いたんだが、化物は南から来ている。だからそこには生き残りがいないから食料が沢山残っていると噂があるんだ」

「なるほど、その昨日までいたやつは」

「…………言っただろう、何日も何も食べていないって」

「餓死か」


サターは悔しそうにする。この状況、300年前と似ている。今日を生きるのに精一杯で、必死に場所を探す。安全な場所があっても食料がなければ探すしかない。近くになければ全員が危険を侵して移動するしかない。


「なら生存者は北側にいるな」


俺はそこらの鉄骨を拾い、近くにあった何かの破片で傷をつける。


「何をしているんだ?」

「いや、これが必要でな」


傷つけ終わった鉄骨を持ち上げ、南へ向かって投げる。鉄骨は風を切る音を出しながら真っ直ぐ飛んでいく。サターは唖然としていた。


「す、すげえ」

「他の行方不明者、生存者も探す。ついでに食料もだ。あればだが。あんたはさっきの場所にいてくれ」

「わ、わかった」


俺は北側を中心に探し始める。そろそろ届いたころだろうか。





ここから南へ離れた場所。デルタは飛んでいる。後ろから飛んでくる飛翔物体に気づき、振り向く。


「あの化け物の仕業ではないな」


そういって音速を越えるスピードの鉄骨を受け止める。鉄骨には明らかに不自然な傷がついていることがわかる。


『水と食料大量にあったらさっきのビルまで持ってきてくれ』


「…………私が持っていく義理はない」


デルタはそう言って鉄骨を捨てる。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る