防御不可能の弾

オーバーは生きている。まだ死体を見た訳じゃない。あの異常な体質なら大丈夫。

私は自分にそう言い聞かせながら研究所を歩く。


「……ボイトムさん」


今は敵に遭遇したボイトムさんに加勢しないと。こういう時こそちゃんとしなきゃ! じゃなきゃさっきみたいに足手まといで逃げろとか言われちゃう!

私は加勢しに戻ると既にいなかった。どこにいったのかがわからない。


「探さなきゃ。流血:滴る血の流れ場所辺りを探せ!


血をたらしてあちこちにばらまく。血は液体であることを利用して僅かなスキマに入り込んだりする。探知するための流血。


この壁、部厚いけどその先が空洞になってる。隠し扉だ。隠し通路。でもどうやって開くんだろ。いや、戦っているのならここを通った可能性が低い、別の通路を探そう。ボイトムさんは糸を使っていたから、どこかに糸があるかもしれない。うん。ある、あっちへ続いている。いかなくちゃ


「……」


オーバーの事が気になる。

見えるのは扉が壊されている空洞、今覗いても大丈夫かな。


「?!」


私が空洞を覗こうとした瞬間、隠し扉が開いく。咄嗟に構えるも誰も来ない。足音も無い。人の気配もない。まるで独りでに開いたように。地下で室内だから風は吹かない筈なのにその隠し通路から風が吹いているように感じる。

自然と足が隠し通路に向かっていた。


「は?! いや違う! ボイトムさんの加勢にいかなくちゃ」


今はここを通っている暇はない。糸を辿っていかなくちゃ。


「え?」


隠し通路の先にある血が生体反応を数人関知した? 眠っている。しかも数人だ。もしかして行方不明になった人達?!


一瞬糸のある方向を向く。けれど早くいかなくちゃいけないと思った。

走っていくとそあまり長くない通路ですぐに扉についた。1度立ち止まって滴る血の流れ場所で細かく探知する。人が1人動いている。どんな動きをしているのかはわからない。けれどこちらには気づいていない。血にも気づいていない。


「流血:紅の弓矢赤い弦の引き金


血で弓矢を作り一気に開ける。そして探知で唯一動いていた人に向けて矢を向けて弦を引く。


「動かないで!……?!」


そこにいたのは拳銃と言う武器を持った少女、いやマリーと呼ばれていた人物だった。

ウィリアムと言う男性と共に空洞へ逃げてオーバーをエレベーターで潰した人だった。


「な、何故ここに?! どうやってあの扉を開けたの! いや、ヴァンパイアなら探知する術があるのか」


少女は拳銃を向けようとする


「動くな!」

「…………脅し、と言うには今にも引いた弦を離しそうな勢いね」


今すぐにでも離したい。その通りだ。こいつはオーバーを!

限界まで引いた弦は今にもはち切れそうで、指には跡が残りそうな程に力を入れていた。


「受ければ体を貫通すると思え! たとえそれで防ごうとしたところでそれごと撃ち抜ぬいてやる!」


互いに硬直状態。とはならなかった。マリーは拳銃をこっちへ向ける。その前に矢を放つ。けれど当たる直前で拳銃の引き金は引かれ、矢に当たる。その瞬間、矢は真っ二つに割れ、左右にマリーの横を通る。そして、拳銃の弾は私の腕に着弾する。腕からは操作していない血が流れる。


「ぐ?!」


何故?! オーバーの体を貫通しなかった弾が矢に当たったにも関わらず一切の勢いを殺さずに矢を割るなんて!


「……何故貴方たちはここへ来たの? ここにあるものがまるでわかっていない。初めて見るかのように。最初は私達の技術を奪いに来たのかと思ったらそうじゃない」

「ここに来た理由は行方不明の人達を探すためだ!」

「行方不明? じゃあなんでここに……いや、まさか」

「何か知っているな! 答えろ!」


私はすぐに次の矢を作る。マリーはさせまいと数発打ち込んでくる。


「流血:紅の盾!赤き防ぎもの!


目の前に盾を作って防ごうとするも盾は真っ二つに割れる。


「なっ?!」


咄嗟に避けようとするも間に合わず腹、腕、肩に弾が撃ち込まれる。


「流石はヴァンパイア、この程度じゃ致命傷にはならないか」


防げない、どうして? わからないけれど今は避けるしかない! いや、受け流すのもある……?!

どうして、割れた盾が元に戻っているの? 何事もなかったように。どうして? もしかして、何かの魔法? いや、魔法陣らしきものは見えなかった。もしかして!


「つ!」


撃ち込まれた弾を血液操作で体内から傷口を通して取り出す。血を拭き取って見ると何もなかった。

弾に陣がかかれてない?! ならいったいどうやって! わからない。今は当たらないようにするしかない。周りには防ぐモノが沢山ある。机も利用できそう。


「後何発撃てば死ぬかしら」


また撃ってきた! けれど防ぐのが切ればいい!


「流血:紅の双剣!赤き二つの刃!


私は飛んでくる弾を剣で切ろうとする、しかし剣も真っ二つになり私に着弾する。


「切れない?!」


剣が元に戻ってる。防御不可能の弾、どうやって防げば、くそ! さっきからマリーに何も出来ていない! こいつはオーバーを潰した奴なのに! 防げないなら無理矢理にでもいってやる!


「おらぁ!」


「な?!」


私はちかくの机を蹴って飛ばす。マリーはそれをかわすも私はそこを読んで探知の時の血をそこに配置する。


「流血:結び鎖!赤い縛り!

「こんなのすぐに!」


マリーは鎖に向かって撃つ、真っ二つになりマリーは鎖を外すがその僅かな時間で私は距離を詰めてぶん殴る。けれど殴ったのは鉄の板だった。


「さっきまでなかったのに?!」

「くらえ!」


さっきとは違う拳銃?! 何かまずい!

先程の拳銃とは一回り大きい銃から先程とは比べ物にならないぐらいの弾が発射される。


咄嗟に殴った鉄の板を盾にしようとしる。しかし、マリーが触れた瞬間に消えてしまった。


「全弾31発だ!」


全部の弾が私に撃ち込まれ、私はそのまま倒れる。


「30発もくらったらいくらヴァンパイアでも流石に……」


マリーの首から血が滴る。血でできた剣の先が首に触れていた。


「貴方の能力はまだわからないけど、真っ二つになって元に戻る。と言うことは真っ二つになったもの自体には無傷だ。だから私に当てるときはしない」


私は服をめくる。私の皮膚は赤くなっている。それが弾を受け止めていた。


「私に当たるときはその魔法は発動しない。皮膚を血でコーティングした。痛みは防げないけれど、これでもう貴方の銃弾は防げる。 少しでも動いたらその首を切ってやる! 答えろ! ここはどこか! 行方不明の皆はどこか!」









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