オーバーテクノロジー
血に染まった服、体全体に走る激痛、そして押し潰そうとしている上下に動く乗り物。俺は蹴りで底を壊す。
「……侵入者を捕らえようとせず殺しにかかるか」
俺は起き上がって更に天井も壊す。そこから出るといくつもの扉が爆破されたように壊されていた。
自分達の基地を壊すとは思えない。てことはボイトムか?あいつは爆裂魔法を使うのか。
「二人はどこだ」
自分がどの階にいたのかはわかるがどの階にいるのかがわからない。仕方ない、一番したから探そう。
にしてもこれは画期的な乗り物だな。階段や坂を使わなくとも高さを移動できる。となると相当な重さの筈だ。体感で1トン以上か?これに2度も潰されたのか。上に上がったと思ったらいきなり爆発が起こるしおかげでまた落ちてくるのがわかんなかった。
「潰された……か」
二人もと、俺が死んだと思っていなければいいが、モミジはまあ、俺の体質を知っているが、ここまでくるとな。
「俺とモミジは知り合ってまだ1ヶ月も経ってないし、死んだ所でそんな悲しまないか。悲しんでも切り替え早いだろ」
俺は廊下を歩く。上の階とは違って一番下は部屋が少ない。どの部屋も横に溝がある。無理矢理開けてもいいが、こんな研究所、壊すのは勿体無い。
二人と早く合流するべきだが、どこにいるかがわからないしな。
「…………」
嫌な予感がする。あの二人にじゃない。行方不明の人達にでもない。この研究所に対しての勘だ。あの上下する乗り物で行ける一番したの階だけれど、もっと下があるきがする。
俺は何もない壁を見つめる。けれどこの嘉部に何かあると勘が言っている。ぶっ壊してでもいかなくてはならない。
「はあ!」
俺は壁を殴る。すると分厚い壁は砕け散り、隠し通路が姿を現す。大きな音を立てたから気づかれるだろうが、発見される前に急ぐか。
走ると扉と横にあるボタン。上下する乗り物か。ボタンを押して中に入る。
「?!」
乗り物の中にあるボタンのこの文字! 『開』『閉』これは日本語だ! 勇者が仲間内で使っていた異世界の文字だ。ニッポン語と似ている文字……たしか勇者は日本を『ニッポン』とも言うと、偶然か? いや、今はいい。この『下』『上』と言う文字も日本語だ。
文字通りなら『下』を押せば降りられるはず。
押してみると扉は閉まり、上下する乗り物は下へ進む。1つの方向だけガラス張りになっていて、そこを見ると少しして驚くべき光景が目に写る。
「一体、どういうことだ」
ガラス張りから写る光景は、地中とは思えない異常な程の広さの空間。そこには沢山の大きなガラス張りのパイプがある。中には人間だった。一つ一つのパイプに一人ずつ、液体と人間。そして、白いチューブが人間に張り付いて管が伸びている。その数は100、いや200。見えない所も入れればもっとだ。まさか、行方不明の人達。いや数が多すぎる。
「勇者、言ってたよな。お前のいた世界の技術はこの世界では『オーバーテクノロジー』って」
いや、ただ単に『オーバーテクノロジー』でした。で終わる筈がない。この嫌な予感はこの場所だけじゃない。『日本語』と『ニッポン語』ただ一人の人間が転移や転生したぐらいじゃ、収まらない。
見たことのない武器。『拳銃』けれど引き金は『クロスボウ』と一緒だった。
単純に言えば『今より先にある技術』
乗り物は止まり、扉が開く。歩いてガラス張りに近づくと、閉じ込められている人は明らかに異常だった。
『同じ顔、同じ体格の人間が何人もいる』
それは女でも男でも同じだ。子供もいる。けれど老人はいない。
「あれは、たしかモニターとか言う奴か」
日本語でいろんな事が表示されていた。
『血圧』
『麻酔』
『正常』
わかる単語はわかるが後は理解ができない。けれど状況からしてわかることは、作っているのだろう。
『
俺は勇者から聞いた中途半端な知識しかない。いや、中途半端じゃない。ほぼない。
この巨大な機械で操作しているのか。流石に機械の操作は勘でもどうにもならない。
「まさか、ここにたどり着くなんて、いや、エレベーターに潰されても生きているなんて、君は人間なのか?」
「お前は確かウィリアムだったか」
こちらに歩いてくる白い服の男。
「君らは行方不明になっている人達の調査でここにたどり着いた。あっているかい?」
「あっている」
「そうか、答えを言ってしまえばここにはいない」
「信じられるか?」
いや、ここにはいないと勘が言っている。けれど無関係ではないとも言っている。
「けれど無関係ではないだろ。勘がそう言っている。俺の勘は良く当たるんだ」
「関係ある……か、だとしたらその行方不明者はここを中心として、外側になっていく度に数が少なくなっていると思うんだが、あっているかな」
「あっている」
「そうか……」
ウィリアムは考える素振りを見せる。すると機械に向かって歩き出す。
「だとしたら、原因はこの『場所』であってこの『施設』ではない。私たちには関係ない」
「場所? どういうことだ」
「歴史によれば、300年前、魔王が異世界から魔力を取り柄れる為にゲートを作った」
ゲート、あの魔法陣だな。
「しかし、一人の人間によって阻止され魔力は人間へと与えられた。その魔王城があった場所がここなのさ」
ここが魔王城のあった場所。もう見る影も形もない。本当の話なら。
「私達は感謝している」
「感謝? 誰にだ」
「魔王にさ」
「魔王に、どうしてだ」
「それは、その世界から魔力を奪ったからだ。希望だった」
世界から魔力を奪う。それで何故感謝を、希望、奪うことが希望なんて、それは一体。
「話がそれたね、行方不明の話に戻そうか。魔王が異世界から魔力を奪ったことによってここ周辺の亜空が不安定になり、たまに向こうの世界とこの世界と繋がってしまうんだ。おそらく行方不明者はその繋がった空間に入ってしまい、向こうの世界へと行ってしまったんだと思う」
「……随分と話してくれるんだな」
「この研究所を奪いに来たのかと勘違いで殺そうとしてしまったお詫びだ。ただから教えよう。ここは、滅びた世界の一部さ」
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