糸使いの爆裂魔導師
「ふふふ、どう愛でてあげようかしら」
女の声がするも姿は見えない。地下にある建物の中にある森、そんなものが本当にできるのかはわからない。けれど実際目の前にある。けれどもっと最悪なのがあの緑の不思議な模様の服だ。魔法で攻撃するなら魔法陣が見えるから避けられる。しかし直接攻撃はタイミングもわからない、近くに現れるしかないが緑色の服が保護色になっている。
「出来れば膝枕をして愛でてほしいんだかな」
「良いわよ? 貴方の足ならね」
瞬間に地面から出てきた女は俺の足を切り落とそうとする。咄嗟に避けようとするも避けきれず太ももから血が流れる。
「っ!」
どうする、糸を張るか?張ったところですり抜けられる。爆破し続けても出てこない可能性がある。またはすり抜けられる。かといって糸で何もない空中にいても出てこない。打ち落としに来るだろう。だからリスクをおってでも出て攻撃する瞬間を狙うしかない。攻撃する時はすり抜けない筈だ。
「?」
いや待てよ? 俺はこいつの前では糸で爆破を行っていない。ならどうして飛ばした糸を避けた? すり抜けるのには条件がある? ならその条件はなんだ。
「わからないが少しでも不利な状況を減らす! エクスプロージョン!拡散する爆破!」
俺自身は糸で守り中心から爆破していく。すると爆発は瞬く間に連載爆発を起こして広がっていく。木々はぶっ飛び草は炭クズになる。土は案外深いのか残ったままだ。
「拡散型は一発の威力が低いが、けれど爆発。当たればダメージは大きい。が、そんな効いているようには思えないな」
女は少し焦げている。木々の中にいたようで爆発をくらったみたいだ。なのに思った以上にダメージがないように思える。本人も笑ったままだ。
「少し痛いわ、私、爆裂魔法はあのヴァンパイアが行ってるかと思ってたの」
ヴァンパイア? モミジの事か。目の前で俺が使っているところは見てなかったからな。
「貴方は糸使いだからと思っていたけれど、糸と爆裂なんて、そんなミスマッチ聞いたことないわ? 炎とかならともかく、爆発なんてとても糸が耐えきれるものじゃないもの」
「ミスマッチかどうかは使い方で全てが決まる。炎と水のようにな」
「炎と水、確かにそうね、でも残念だったわね。この場所ではどちらも無意味よ」
女は床に潜り込む。ダメージが少ないのも思ったがあの何故緑は何だ?土しかないからもう保護色ではない。それに腕とかを見れば明らかに分厚い服だ。動きづらくなる筈。なんの意味が、いや、分厚いってことは衝撃を吸収しやすいと考えれば爆破のダメージが低いのには考えられる。すり抜ける奴の魔法なら……魔法?
「魔法陣がない」
魔法を使うなら魔法陣がある筈だ。あのレーザーみたいな攻撃のように、だけどすり抜けるとき、それらしきモノは見つからなかった。服にでも体にでも書いているのか?
いや、今はどうするかを考えないと。
「これでどうだ」
俺は糸を張り巡らさせる。
今度は風の音まで聞いてやる。いくらすり抜けるといっても攻撃する瞬間は風が歪む。防ぐことはできなくても反射神経で爆破してやる! 肉を切らせて骨を断つ。いや爆破してやる!
「…………」
こない、どうしてだ? この状況で諦めるのか? いや、そんなことはしない筈だ。集中力が切れるのを狙っているのか?
周りを見ても変化はない。肉眼でも糸の反応でも、一切の変化はない。
「留まってくれるなんていい子ね」
嘘だ、あり得ないだろ。なんで、なんで、
「俺の腹から出てくるんだよ」
俺自身をすり抜けてきたとでも言うのかよ? そんなのありかよ
「ふふ、男の子から女の子が生まれちゃった」
女はそう言うと俺の首に針を指した。その瞬間、俺の体は動かない。
「何を……した」
口は動かせるけど体がピクリとも動かない! 毒か! 麻痺か! 速効性だと!
「体長が悪いときはおねんねしましょうね」
女は俺の体から出てくると俺をゆっくりと土へ寝かせる。そして俺の上に馬乗りになる。
「1つ質問いいかしら? 貴方達の目的は何?」
「…………」
「口は動かせる筈よ?」
女はそう言うと俺の太ももをナイフで指す。
「いっ?!」
拷問かちくしょう! しかも大動脈を避けてやがる!
女は今度はそこを優しく撫でる。
「あら、痛かった? ごめんなさいね。辛いでしょうでも貴方が喋らないのがいけないのよ?」
「そうかよ、俺達はここら周辺で行方不明になっている人達の調査だ。地下にあるここを怪しいと睨んでいる」
それを言うと女は考え始める。
「本当は?」
「は」
「本当の目的は何?」
「本当も何もそれが事実だ」
「いけない子ね、嘘をつかないの」
そう言って今度は腹に刺す
「がっ!」
本当の事を言ったのに嘘とかざけんな! じゃあ何を言えってんだ!
女は緑色の服を脱ぎ始めた。するとナイスボディの体格が露になる。緑の服のしたに胸元が大きく開いた服が見える。すると手を伸ばし、俺の服をすり抜けて直接体に触る。
「本当の事を言ってくれるだけでいいの」
女の手が腹から胸部へと移動する。
「貴方達の目的を言ってくれれば」
女は顔を、口を俺の耳元に近づける。
「気持ち良いことしてあ・げ・る」
耳元でささやいて俺の耳に優しく息を吹き掛ける。
「出来ればそれはベッドの上でお願いしたいね」
俺は口だけ笑ってそう言う。
「え?」
その瞬間、女に糸が巻き付いて俺から引き剥がし空中へと捕らえられる。
「お前がすり抜けられるのは『動いていない』ものだ。おっと動くなよすり抜けるなよ、その瞬間に爆破してやる」
俺はそう言って起き上がる。さっきまで笑っていた女は驚きの表情へと変わる。
「何故?! 後30分は動けないはずよ! それにあの短時間で私の能力を理解したというの?!」
「ああ、俺は動いていない」
俺は糸が一人でに動いているのを見せる。
「体が動かないのに糸を操れる筈がないわ!」
「そう、普通の糸使いならそんな芸当は出来ない。けれど俺は違う」
「爆裂魔法? そんなものでどうやって!」
俺は自分の体に糸を巻き付けているのを見せる。
「糸を操って体を動かしているのさ。口は無理だけど器用な毒だな。そして糸が動く秘密はこれだ」
俺は糸を女の目に限界まで近づける。
「……糸が、物凄く小さな爆発を持続的にしている?」
「そう、任意の方向に持続的に爆破させることで糸を動かしているのさ、固定も出来るから何もない場所で糸を張れる。今のようにな」
ここで女は初めて糸が空中に張られているのに気が付く。
「そんなことが!」
「ちなみにそれが出来るってことは離れた場所でも任意の方向に大きな爆発も出来るってことだから。例えば巻き付けた内側にするとかね。そうすれば爆裂魔法の弱点である威力と比例して範囲も広がる弱点を克服できる」
女は理解する。下手な事をすれば自分に巻き付いた糸が高火力で爆破することを。
「これを実現するには爆破に耐えられる特殊な糸が必要だけどな。後それを可能にする魔力コントロールと魔力量」
俺は糸を下ろし、女を俺が届く高さまで下ろす。そして近づく。
「才能の魔力量、努力の魔力コントロール、人望による糸の入手、糸を使うと言う発想力、それがこの俺、ボイトム・スケロテーネと言う人間なのさ」
俺は女の耳に近づいて囁く。
「教えてもらおうか、お前たちがここで何をしているのか。喋ってくれればその綺麗で美しい体には傷をつけない」
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