山の中

「…………聞き込み通りこの山だけ生えているキノコが僅かに違う。だがそれ以外はおかしな所はない、か」


失踪事件の調査で怪しい山を調べたが特にそれらしい発見はできなかった。数時間ただ山を登っては降りてはをしていただけ。


「山なら洞窟があってもおかしくないが、入り口は見つからないし隠れているだけかと思って掘っても何も出てこない。外れか?こりゃ」

「この山に私達の他に踏み入れた形跡はありましたけど同じく調査に来た人のかもしれないし」


ボイトムは時々自身の手を見る。何かを気にしているのか?


「何か手についているのか?」

「いや、この山に糸を張り巡らさしたんだが、人らしき者が触れた反応がない」

「ボイトムさんは糸使いなんですね」

「ああ、性格に言えば糸使いのば…………反応があった」


一瞬にして空気が変わる。全員警戒体制をとり、周りの意識を配る。


「どこからだ」

「右だ、数は2つ、こちらに近づいてはいるが……な?!」

「どうした」


ボイトムは驚いた表情をする。


「あり得ない、風が吹いた反応をしたと思ったら2つの反応が消えやがった! その風も決して強くない、とても生物を吹き飛ばせるものじゃない!」


俺達はすぐに右へ行く。ボイトムが察知した場所につくとそこには山の景色が広がるだけで何もない。だが良く見れば足跡があった。しかし、途中で忽然と途切れている。その周辺を探すも何もない。


「一体どこへ!」

「上からも見てみる!」


モミジは羽を広げて空から山を見る。しかし、自然の山が見えるだけで特に変わったところはない。


「モミジ、何か見えるか?」

「変わったところは何も」

「上からも何もないか」


前後左右上は何もない、ならしたか?僅かに違うキノコ、だとしたら地面が違う。けれどボイトムが掘ったときにはなになかった。


「ボイトム、地面を掘るときどのぐらい掘った」

「2、3メートルぐらいだ」

「そうか」


なら、もっと深く掘ってみる必要がありそうだ!

俺はその場でジャンプする。


「二人とも、離れていろ!」


俺は手を合わせた瞬間に手を引いてそれを押し出す。すると土にいきなり穴が開き、その穴が破裂音と同時に一気に広がる。


空裂砲拳爆発する空間


それを見ていた二人は目を見開いていた。大きく、十メートルぐらい空いた地面と俺を交互に見る。


「魔法も無しかよ」

「す、スゴイ」


俺は地面に降りた。するとボイトムが今何をしたのかを聞いてくる。


「これは空裂砲拳と言って、圧縮した空気を打ち出す技なんだ。あまりオススメはしないな。これができるほどの力があるなら直接殴った方が威力があるしな」

「圧縮って、魔法も無しにやるには手を合わせる時点で相当の早さと威力が必要になるぞ、そこから爆発する前に打ち出さなければいけないし、体術の達人か何かか?」

「……見よう見まねで覚えた」

「てことはそれを使える人がいるってことかよ」


ボイトムは驚いてはいるが感心しているようだった。その場で拍手をする。そこまでの技ではないんだかな。


「それはともかく、穴の奥を見てくれ」


俺は穴の中に入るとボイトムも糸を使って降りてくる。モミジも羽でゆっくりと降りてきた。

二人が降りてきた所を確認して俺は地面を蹴る。すると鈍い音がする。


「明らかに人工物だ」


まっ平らな固いものがあった。山に埋まっている平べったいもの、どこか歪んでいる訳でもない。明らかに自然でできたものではない。


「本当だ、周りを掘ってみよう」


ボイトムは周りを堀始める。しかし、この平べったいのは終わりが見えなかった。


「一体どのぐらいの大きさの何かが埋まっているの?」

「わからない。が、やっと見つけた手がかりだ。無関係かもしれないが今はこれしかない」


十メートル以上の大きさの穴でも掘り起こせない何か。行方不明。書類には行方不明者は戻ってきていないし目撃情報もない。


「いや、これ以上掘っても無駄だ」


俺がそう言うと二人は掘るのを止める。


「どういうことだ」

「埋まっているのが物じゃなく建物だったらどうする?」

「な?!」


二人はあり得ないと言った表情をする。


「建物が埋まってる?! あり得ない! 一体どうやって!」

「これを見ろ」


俺は土をどかす。すると平べったい何かに僅かに線が入っていることがわかる。


「これはなんだと思う。僅かな隙間、しかも真っ直ぐだ。開きそうだな」


古代遺跡が地面に埋まっているのはわかる。だが、これは違う。古代遺跡はあくまでも固い地を利用して、補強したりしている。だがこれは全く別物だ。掘って作られたんじゃない。掘った後に建てられたものだ。山1つ分の僅かな違い。


「この山全体の地下にこの建物があると考えた方がいいな」


だがそんなものをどうやって建てたんだ。あまりにも大掛かり過ぎる。気づかれないなんてあり得るのか?いや、昔からあるならともかくだが。


「開いて入るか、明日出直すか、どうする。まだ明るいが日が落ちるまで時間があるわけじゃない」


正直言えば中に入ったら夜も昼も関係ないが、ここから下は未知の領域だ。二人の安全を考えれば1度に戻った方がいいかもしれない。


「明日出直そう、アイスちゃんも今はいないし、準備してからの」

「いや、どうやらそう言うわけにもいかないみたいだ」


モミジの声を遮りボイトムが上を睨みながら言う。舌打ちしてから構えた。


「やすやすと帰してはくれなさそうだ、構えろ!」


直後に真上から魔方陣が出現する。その魔方陣からはレーザーみたいな何かがこちらへ撃ってくる


「くそ!」


ボイトムは穴を塞ぐように糸を張る。


「少ししか持たない!何か打開策はあるか!」

「二人ともしゃがめ!」


俺はそう言うと代償魔法で二人にはバレないように内蔵を代償に手からエネルギー砲を出す。糸ごと魔方陣が消滅した。


「これがオーバーの魔法?!」


良く考えてみたらモミジに見せるのは初めてだったな。だが今はどうでもいい。ここを攻撃してきたってことは


「俺達のことがバレているぞ! もしこの建物が失踪事件に関係しているなら何か行動を起こす筈だ! 戻っている時間がない 」


ボイトムも同じ事を考えていたようだ。そう、ここまで隠すとならばバレた時に行動を起こさないはずがない。行方不明者の事を考えるとどのくらいかはわからないが、時間に余裕が無いのは確かだ!


「こじ開けるぞ!」


俺は僅かな溝に無理矢理てを入れてこじ開ける。二人は直ぐに降りて建物に入る。俺も入って無理矢理閉じる。


「なんだよ、ここ」


目の前に広がっていた光景は、あまりにも見たことがなかった。床から天井まで埃1つない。天井には細長い光の光源が等間隔で並んでいて明るい。


この建物を俺は見たことがない。だけど300年前、勇者が確か自分のいた世界の事を話していた時に聞いた。これは確か、


『研究所』

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