冒険者ギルド入団試験。その②Sランク冒険者

「ここが試験会場」


王都には目立つ建物が沢山あるが試験会場は特に目立つ。それは他と比べて圧倒的に大きいから。


「第三コロッセオ」


コロッセオに2つ列ができていた。受験者と観戦者の2つ。何故観戦者の列があるかというと、実技試験は一般公開されているから。試験なのにすこしおかしいとは思ったけど。

受験者は筆記試験の時と違い人数が少ない。100人ぐらいかな。


「試験内容は戦闘って言ってたけど受験者が乱闘でもするのかな」

「いや、試験管がSランクと言う話だ。もしかしたらそのSランク冒険者と戦うかもな」

「うわまじか、瞬殺されそうでこええな」

「多少強くてもそうなれば良いところ無し、ドボンだな」


私の前に並んでいる2人の冒険者が会話しているのを私は聞く。Sランクが相手だったら絶対に勝てないけど足にしがみついてやる!

私はコロッセオに入る。


「「「「うおおおおおお!!!!」」」」

「?!」


コロッセオの観客席は見物人で一杯だった! とても盛り上がっている。ハチマキをつけている人や横断幕を広げている人達もいる。『アマノガワ』? 誰だろう。皆誰かを応援しているんだ。


「いた!」


オーバーがいたから私は手を振る。オーバーも軽く手を振る。観客席にはオーバーしか応援してくれる人がいないけど集落の皆、村の皆さんもきっと応援してくれている。


「よし!」


気合いを入れて頑張らなきゃ!


「よーし、全員いるな」


コロッセオの真ん中で声がする。何かで音を大きくした声だ。右手に何か持っているみたい。


「えー、これはマイクと言う道具だ。音を大きくしてくれる。これがないと誰も聞いてくれなさそうだからな」


緑と黒の服を着た男性。左手には木刀を持っている。旗のバッチがある。この人が試験管だ。


「俺が試験管のSランクであるトワイライト・グリーンだ。試験内容は簡単、俺と戦う。それだけだ。5分後に開始する。準備運動でもしとけ。以上」


たったそれだけ?! 戦うなら誰から戦うとかないの?! 順番は決めないの?!

それは皆も同じで困惑している。

私は気になって質問する。

「あの! 誰から戦うとか順番とかの説明はないのでしょうか!」


トワイライトはそれを聞いて首を傾げる。


「何を言っているんだ? 『受験者と俺』が戦うんだぞ?順番も何も無いだろ」


それって、つまり『私達受験者』全員を一人で相手するってこと?


「おい! この場に受験者って何人いるんだ?!」

「俺が最後尾立ったけど係員が『貴方で100人。ちゃんと全員いる』て言ってたぞ!」

「てことは、1人で100人を相手するってことか?!」


100受験者試験管?! いくらSランクでもこの数を相手に?!


「おい試験管! それじゃあ試験にならないだろ!」


誰かがそう言うとトワイライトは笑う


「確かに試験になんないな……試験開始まであと5秒前。3、2、1」


トワイライトから笑みが消えた。


「ゼロ」


その瞬間、トワイライトの持っていた木刀は樹木へと急激に変化し、その太枝が一気に私達を襲う。


「い、いきなりだ!」

「ぐわああああああ!!」


いきなりの事で私は反応できなかった。太枝は私へ真っ直ぐに突っ込んでくる。目前まできた時だった。


サンライトレイン! 日当たり良好!


後ろから私の横や頭上を通って日の色をしたナイフの刃のような何かが大量に飛んでいく。それは樹木に刺さり焦がしボロボロに砕け散らせる。

私は軽く放心状態のまま振り向く。


「ふう、危なかった」


オレンジ色のボサボサした髪の爽やかな男性が立っていた。私が見ている事に気付くと笑顔で返す


「いきなりは勘弁してほしいよね。咄嗟にコントロールが気難しい魔法使っちゃったよ。ごめんね、当たってない?」

「あ、当たってないです」

「良かった。他の人にも当たってないといいんだけど。もし受験者に当たったら妨害で失格になっちゃうのかな」

「わからないです。あの、ありがとう」


この人は私を助けようと魔法を使ったわけじゃ無いけど助かったので私は礼を言う。


「僕君を助けたっけ? 覚えがないな」

「いえ、その魔法がなければいきなりやられてました」

「そっか、お互い冒険者を志望同士頑張ろうね」

「はい」


そう言うとこの場を離れる。

あの人がいなければ反応できなかった私は開始早々にやられていた。


「試験になんないよね、いきなり半数以上が脱落するんだもん。冒険者になりたいんだったらもっとできてほしいよ」


コロッセオの中心に巨大な樹木ができ、太枝が観客席近くまで伸びている。枝と葉っぱで太陽の光が完全では無いが遮られていて暗い。

これだけでわかる。私には勝てない所かあっちから来ない限り姿を見ることすらできずにやられる。これがSランク冒険者の実力。


「さて、ここからは姿が見えた奴から攻撃するね」


トワイライトの声が響く。これじゃあ絶望的だ。


「ダメだ、悲観するな、必死になれ」


実力不足は目に見えてわかってる。だからって足掻かないわけにはいかない!


「お、次の落選者」


後ろから声がした。振り替えるとそこにはトワイライトがいた。


「しまっ?!」


トワイライトが木刀で足元の太枝をツンとつつくと私の横の幹から太枝が出てくる。


「流血:紅の盾!赤く染まった防ぎもの


盾に刺さるも一瞬でヒビが入る。


「防ぎきれない!」


割れた衝撃で倒れると幸運にもかわすことができた。


「流血:紅の刃!血を流す血!


枝を切り直ぐに立ち上がってトワイライトへ向かう。

複数の枝が私を襲う。1つは切りもう1つは避ける。しかし3つ目に当たり突き飛ばされる


「かは?!」


おもいっきり背中を叩きつける。

ダメだ。全く歯が立たない。いや、私を甘く見ている。なら隙はあるかもしれない!


「流血:血鳥!沢山飛べ!


沢山の血鳥がトワイライトに向かって飛ぶ。枝が至るところから飛び出して防ぐ。


「正面から防がれても周りからならばどうだ!」

「変わらないよ」


横も上も後ろからも全て防がれた。わかっていた。だから私は紅の刃を持ってそのまま突っ込む。


「吸血鬼もこんなものか。終わりだ」

「流血:チャクラム!回転する刃!


周りにある枝から枝が飛び出ようとした瞬間、血鳥によって当たりにばらまかれた血がチャクラムの形になり回転し、切り落としていく。これによって私とトワイライトの近くには枝が無くなる。


「吸血鬼の攻撃は防いで終わるわけじゃないか。厄介だな」

「これなら私の攻撃を直接防ぐしかない!」


トワイライトが乗っていた枝も切られ落ちていくのでトワイライトは避けることができない!

至近距離なら血で手数も手段も多い私が有利、何とかして1打を与えなきゃ!


「少しはやるようだけど、少しじゃあ俺には勝てない。厄介とは言ったがそれはあくまでも俺に届く実力ならばの話だ」


トワイライトが木刀を振る。


「うわぁ!」


振った瞬間小さな竜巻ができる。その竜巻は私の血や枝を吹き飛ばし、その強風で私は目を閉じ、腕で顔を防ぐ構えになってしまう。

その瞬間私の横腹に強い衝撃が走る。体から嫌な音がした。私は樹木の幹に体を叩きつけられ、落下して太枝に落ちる。


「………………ッ?!」


あまりの痛さに言葉がでない。足を滑らせて落ちるも何の対処も出来なくて体を地面に打ち付ける。

いたい!耐えろ!耐えろ!耐えろ!何とかして体を動かせ!このままじゃやられる!


「うおっと」


上で何か大きな音がする。枝が落ちてくる。

何が起きているの、もしかして他の受験者が戦っているの?!なら1秒でも長く休んでこの痛みが引くようにしないと!


「これで残り7名。いや6名か」


トワイライトの声が聞こえると直後に横に人が落ちてくる。意識を失っている。そこまで減らせれているなんて。

私は痛みに耐えて何とか上を向く。すると何本もの剣がトワイライトを追尾していた。


「この波を越えてやるぜ!」


体験の側面に乗って宙を浮いて飛んでいる。同じくトワイライトを追尾している。


「よっ、ほい!いいね!かわしている俺、どんどんノっているぜ!」

「ち、刃物も本人も常に飛んでいるのは結構厄介だ!」

「俺の魔法はノッているから強いんだぜ!」

「意味わかんねえ!めんどくせえ!ウッドゴーレム!巨大な樹木の番人!


沢山の枝が集まり1つになり巨人の形となる。


「でっけー波が来た!これは乗るしかない!」


大剣に乗っている人は嬉しそうに言う。

ウッドゴーレムのパンチを避けると頭に向かって飛び降りる。するとウッドゴーレムは踊り出す。


「ぐおー♪」

「イエーーイ!」


ウッドゴーレムはリズムにのってトワイライトを殴る。全てかわすも驚きを隠せない様子だ


「魔法を操る魔法だと?! そんな魔法が存在するなんて! 何者なんだ?!」

「操る? 違うぜ! 俺の魔法は俺が乗ればそいつはノッちまうんだぜ! そして何者か、おれはサーファーのサーフだ!」

「んな滅茶苦茶な!」


枝をサーフに伸ばすがブレイクダンスをしながら避ける。


「ええい! 樹木に戻れ!」

「なら樹木もノろうぜ!」

「マジかよ!」


樹木にのると樹木が大きくゆれだす。あまりの大きさのせいか軽く地震がおきている。

トワイライトは枝を伸ばすも揺れてまともに当たらない。


「こんな変な魔法始めてみたよ!」

「そうか?ノリノリで楽しいだろ!」


トワイライトは木刀を振る。竜巻が起こりサーフに迫るがサーフは自分から竜巻に飛び込む


「おいまさか?!」


トワイライトは嫌な予感がした。サーフは竜巻に乗り、竜巻はノッて回転を強くする。するとその竜巻が風に乗ってどんどん大きくなる。


「形のないものも乗れるのかよ! なら次は乗らせるか!」


トワイライトが上に木刀を投げると木刀は巨大なウッドゴーレムになる。そして上から叩きつけるようにサーフの上から落下する。


「うおっと?!」


サーフは避けようとするもウッドゴーレムのパンチが当たり枝に叩きつけられる。勢いのあまり数本折った下にある枝に着地する。


「いって〜、この痛み! 実にヒート! でも海に比べれば痛みなんてちっぽけな事! 乗るぜ俺のマジックなビート!」

「いやもう乗らせない」


トワイライトは既にサーフの真横にいた。いつの間にか持っている木刀で思いっきりぶっとばす。サーフは腕で防ぐも地面に思いっきり体を叩きつけられる。


「いっつ〜〜、これは流石に効いたなちくしょう、俺の負けだ。ノリが無くなったら全ては落ち着くからな」


樹木は揺れを無くし、竜巻も収まる。剣は次々に落ちていく。


「負けってことはこれ以上は攻撃してこないんだな」

「ああ、波は1度落ちたら負けだからな」

「てことはあと4人……いや2人だ」


その直後に2人壁に激突する。


「さっきはとどめをさせなかったが今度は倒れてもらうよ」


トワイライトは私の方へ向く。

大丈夫、と言う訳じゃないけどサーフのおかげでだいぶ痛みが引いた。後『仕込み』をすることができた。後は上手くできるか、考えられる最大の策を出せたと思いたい。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る