ヴァンパイアロード

「あれじゃないか?」


1人の男性が村に向かっている。紅い瞳に黒い翼。村人の一人がカリルだと思い迎えにいく


「カリルさん。こっちです」


迎えに行った村人が手を降って出迎える

「カリル、遅いよ。いくら初めてでも地図持ってるんだか……ら」


モミジは村の外をみる為に目を凝らす。リアはそこに『吸血鬼』がいることを確定出来なかった。


「まって! カリルじゃない!」

「え?」


村人の首に爪が迫る。俺は咄嗟に走ろうとするも足が思うように動かなかった。


「あれ」


次の瞬間、村人の首から血が出て、その場に倒れる。


「…………その汚らわしい手を離せ」

「私達を襲わないでそのまま退いてくれるならッ……!」


人間を襲ったと言うことはヴァンパイアと言うことになる。

モミジはヴァンパイアの腕を力一杯に掴む。ヴァンパイアの爪は村人の血で真っ赤になっていた。

俺はホッとする。おそらく長く眠ってたせいで体が眠ってしまっている。体を完全に起こすには時間がかかる。


「吸血鬼が、ヴァンパイアの誇りを捨てたゲスが」


ヴァンパイアはモミジを睨む。侮蔑と怒りが込められているであろう表情。

わざわざ誇りを捨てた同士を殺しに来たのだろうか。ヴァンパイア同士の戦いに興味を持った俺は様子を見ることにした。


「誇りを持って争うより絆を持って共存する方が同士だって傷つかないし平和だ」

「人間と共存だと?! そんな下等な生物と肩を並べるのは種族の恥! あってはならない!」


ヴァンパイアは掴まれている腕をもごと上にあげる。そしてそのまま振り下ろしモミジを地面に叩き付ける


「うっ!」


そのままモミジを蹴りあげる。

ヴァンパイアの腕から血が出て槍の形に変化する。


「流血:紅の槍貫く血の姿

「流血:血鳥!赤い鳥よ羽ばたけ!


ヴァンパイアが深紅の槍を投げる。モミジは血で出来た鳥で自分を横へ無理矢理引っ張る。体の捻りもあっては槍は頬をかする。

深紅の槍はそのまま飛んで行かず振り替えってモミジに飛んでいく。


「くっ! 流血:紅の盾!紅く染まった防ぎもの


モミジから大量の血が出て槍から身を守る。槍は盾を貫通するがモミジに当たる前に勢いを失う。


「吸血鬼は所詮、戦う誇りを捨てた裏切り者」


モミジは槍に気を取られヴァンパイアの手が首に迫っていたことに気づけず首を絞められる


「うっ……ぐっ……!」


片手で首を絞めながら持ち上げる。モミジは苦痛の表情で必死に腕を掴むもヴァンパイアの力は緩むことはなかった。


「貴方……ヴァンパイアロード……よね」


モミジは僅かに出せる声を必死に言葉にする。


「誇り……て……いってた……けど」


モミジは苦しみに耐えて笑いながらいう。


「1人は……恥ずかしくないの?」

「それ以上言うと絶望を感じるほど後悔をすることになるぞ」


ヴァンパイアはさらに力を加える。先程より殺気を放つ。ヴァンパイアロードはヴァンパイアよりも上の存在。

モミジが言う限りではヴァンパイアロードが1人でいることは恥であるらしい。


「ぐっっっ!! 」


モミジは足をジタバタさせる。さらに苦しくなったのか苦痛のみの表情になる。


「誇りを捨てたヴァンパイアも、誇りを捨てさせた人間も全員あの世に送ってやる」

「でき……ないよ……」


ヴァンパイアロードの首の横を何かが高速で飛ぶ。


「?!」


ヴァンパイアロードは咄嗟に首を押さえる。血がべっとり付いていた。自分の血が。

自分の首に意識がいった隙をモミジは見逃さなかった。思いっきり足を上げてヴァンパイアロードのアゴを蹴る。


「ぐぅわ!」

「ケホッケホッ!」


首に手を当てながら急いで酸素を取り込もうとする。


「血鳥か、小賢しい真似を!」


モミジはしてやったぜ!と顔に出す。そして下がって村に戻る。途中で倒れていた村人を掴んで一緒に戻る。それと同時にヴァンパイアロードの足元に魔方陣が展開する。


「なに?!」


村人の何人かの手から同じ色の魔方陣があった。


「ヴァンパイアロードさんよ、いくら強くても人数差をどうにかしようなんて考えてここに来たのか?もしそうだったら……人間をなめちゃ困る」


魔方陣から爆発する勢いで炎が燃え盛る


「ぐあああああああああああ!!、こんなもの!すぐに消し去ってやる!」


ヴァンパイアロードから血が溢れ出て包み込む。そして爆発するように飛び散ると炎は一瞬にしてかきけされた。


「嘘だろ?!10人でやっているんだぞ!」

「鬱陶しいぞ……鬱陶しいぞ!この下等生物があああ!!!」


ヴァンパイアロードから溢れんばかりの血が全て矢に形を変える。


「心血:深紅の矢空赤より紅い雨!!」


ヴァンパイアロードの上に数えきれないほどの紅い矢が浮いている。


「『心血』だって?! 皆! 今すぐ逃げ、いや今すぐ防衛魔法を唱えて!」


モミジが咄嗟に警告をする。紅い矢は一斉に村の方へ向くと雨のように降り注ぐ。


「魔法壁だ! 全員で一塊になれ!」


ライルの指示にその場にいた全員が一斉にドーム型の魔法壁を展開する。


「いつまで持つかな? 『心血』はヴァンパイアの中でも上位の存在、ヴァンパイアロードでさえ僅かにしか使えない術。いくら実力があっても『誇り』がなければ使えない」


魔法壁にヒビが入る。


「そんな! 村人全員で作った魔法壁だぞ!」

「一本一本がとんでもない威力なんだ!」

「今破られたら皆あの矢にやられてしまうわ! もっと踏ん張って!」


全員で必死にありったけの魔力をそそぐ。それでもヒビがどんどん広がっていく。一部がかけてそこから矢が入り始める


「魔法壁が破られてきてる! 穴が空いた所は避けろ!」


皆上を見ているな。モミジがヴァンパイアロードを見てみると新たに血を出していた。それが槍の形になる。


「うそ、でしょ」


その声につられ何人か見る。全員が全員絶望の表情へと変わる。


「心血:深紅の槍レッドグングニル

「やめて」


弱々しい声でモミジは言う。

ヴァンパイアロードは嗤う。これでさよならだと言わんばかりに。


「全員あの世で下等パーティーでもしてろ」

「やめて!!」


槍はモミジに向かって投げられる。


「流血:紅の盾!お願い!防いで!


槍は魔法壁を突き破ってモミジの盾に突き刺さる


「そんな、」


槍は勢いを変えずに盾を破る。


「助け」


モミジは死を悟って目を瞑る。だが少したっても体に一切の変化が無かった。恐る恐る目を開けるとそこには俺が槍を掴んで立っていた。


「バカな?! 素手で掴むだと?!」


勝利を確信していたヴァンパイアロードは一瞬にして笑顔を崩す。信じられないと言った表情になる。


「白米が簡単に食べられるわヴァンパイアが人間と共生してるわ……吸血鬼だったか。魔物同士で戦ってるわ人間が魔法と使ってるわでものの数十分でもう驚きまくった。おかげで完全に『覚めた』」

「ありえん! 心血を素手で止めるなど! ましてや人間が止めるなど! 絶対にあり得ない!」


ヴァンパイアロードは必死に否定する。


「ありえないあり得ない! 心血を身に付けるのにどれだけ苦労したと思っている! 血の滲むような努力をして! 才能を磨き上げて! やっとの思いで会得したんだぞ! それをたった1人の人間と言う下等生物に止められるなど!」

「血の滲むようなでは、俺には勝てない」


俺は槍を持ち主に投げ返す。そしてジャンプしてドーム型の魔法壁のてっぺん近くまで行く。そして思いっきり一拍する。


「爆!」


魔法壁は壊れ、全ての矢も同時に吹き飛ぶ。


「あっ……ああ」


ヴァンパイアロードはもう言葉がでなかった。今度は触れずに全て吹き飛ばされたからだ。ただ手を合わせるだけで。それは村人もモミジも一緒だった。

俺は地面に着地した瞬間思いっきり踏み込んで一瞬でヴァンパイアロードの懐に立ち殴ってその腹をぶち抜いた。


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