第10話
撮影旅行から帰ってきた私は
暁斗に恋愛相談をしてみた。
「暁斗、恋って何かしら?」
「お嬢様!どうかされたんですか?」
「実は…とりあえず恋って何かを
教えて欲しいの。」
「恋ですか…。相手を見ると
胸がドキドキしたり、キュンとしたり
相手を大切に愛おしく想う気持ちと
申し上げたらよろしいでしょうか…。」
「なるほど…。暁斗は恋をした事はある?」
「!お嬢様…。私の場合は恋というより
愛ですかね。」
「恋と愛は何が違うの?」
「恋は好きで付き合いたい気持ちで、
愛は愛していて結婚したい気持ちですね。
愛の方がより相手を大切にしたいと想い、
生涯一緒に居たいと言う感情が
「暁斗は恋と愛に詳しいのね。」
「えぇ…。まぁ。」
(恋と愛か…。部長に対する感情は
どうなんだろう?
胸がドキドキする?
大切にしたいと想う?
生涯一緒にいて欲しいと想う?
あれ?この感情ってどこかで
抱いた事があるような。
日常で当たり前だと感じていたけれど、
暁斗に対してそんな感情を
抱いているような…。
まさか私は暁斗が好きなの?
部長ではなく、暁斗と付き合って
将来は結婚したいって事?)
「お嬢様?顔を赤くされて
どうかされましたか?」
「え?あぁ、何でもないのよ!」
(自分でもいつの間にこんな感情を
抱いていたなんて、全然気付かなかった…。
私は暁斗が好きなんだ。でも、暁斗は
私の事どう想っているんだろう?
ただの仕える主人?それとも…。)
私は人生で初めて抱く感情に
戸惑い続けたまま、
あっという間に季節が過ぎて
部長が卒業する時期になった。
「えー。新部長は
「おめでとう!」
「えぇ!私ですか?乃ノ香の方が
在籍期間は長いし、経験も豊富だし
部長に適切じゃ…。」
「俺が決めた事だ。部長は
お前にふさわしい。実は乃ノ香と
話し合って決めた事なんだ。」
「そうだったんですか…。」
「そう言えば、あの時の返事
聞かせてくれるかな?」
(部長に告白された返事か…。
散々悩んだけど、この結論しか
思い付かなかった。)
「部長には申し訳ないんですけど、
ごめんなさい!私には好きな人が
居てその人と付き合いたいです。」
「そうか…。
まぁある程度予想してたがな。」
「えー!部長、いつの間に
告白してたんですか⁉︎」
「まぁ終わった事だ。2人とも
写真部を盛り上げてくれよ。」
最後に部長は私と乃ノ香の頭を
クシャクシャにして笑って激励してくれた。
そんな部長の告白を断った私には
確かめたい気持ちがあった。
「暁斗!居るかしら?」
「はい、お嬢様。ここに居ます。」
「…。暁斗は私にどういう感情を
抱いているの?」
私はこの数ヶ月悩み続けてずっと
聞きたかった事を暁斗に聞いた。
「え!お嬢様の事ですか?それは…。」
何だか暁斗が顔を赤らめている。
「暁斗?」
「お嬢様の事はとても大切に想っています。
生涯命をかけてでもお守りし、
仕えたいと想っております。」
「そういう執事的な感情は分かってるの!
その…。恋愛的に好きかどうかって
話なんだけど…。」
「恋愛的にですか…。あんな事が
あってから私はお嬢様に恋愛感情を
抱いてはいけない気がして…。」
「あんな事って?」
「はっ!失礼致しました。
何でもございません。」
(暁斗は私に何か隠している。
そういえば度々何か大切な事を
忘れているような気がしてたわ。
「暁斗、正直に話して頂戴。
私に隠し事は無しよ。」
「…。分かりました。お嬢様の記憶を
失う事になったある過去の話です。」
私は暁斗から今まで記憶を失っていた
経緯を聞かされる事となった。
それは私の想像以上に心を
かき乱すものであった。
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