第5話
「まずはお嬢様の撮りたい物を
撮ってはいかがでしょうか?」
「撮りたい物か…。まずは
撮ろうかしら。」
飼っている黒猫の事である。
5年前にこの子が来た事はあまり
覚えていないが、何かのきっかけで
我が家にやって来た。
「
「ニャァァァン」
「ふふっ。いつ見ても可愛い子ね。
このボタンを押せばいいのかしら?」
「そうです、お嬢様。1枚撮ってみて
ください。」
「カシャッ!」
「私が撮れた写真を見せますね。
この一枚です。」
そこには私にすり寄ってきて
安心しきっている
写っていた。
「これが写真なのね。
可愛らしい姿が残せたわ。」
「他にも色々撮ってみましょうか。
お嬢様の大切な物とかを撮ってみては
いかがでしょうか?」
「私の大切なものと言えば…。
この
幼少期から大切にしてるガラス玉かしら。
物を撮るって難しそうね。」
「お嬢様が撮りたい様に撮れば、
必ず良い作品になりますよ。」
「そうかしら…。カシャッ!
撮れたわ。どれどれ…。
あ!素敵に撮れたわ。」
「お嬢様、
これから毎日写真を撮って日常の何気ない
場面を残していきましょう!」
「暁斗…。私の為にありがとう。
写真って本当に素敵ね。
こうやって、大切な物や場面を記録出来て
思い出に残せるんですもの。
これから私はこの写真達で、
自分の人生の思い出を残していきたいわ。」
「お嬢様…。お役に立てて光栄です。
私もお嬢様に最大限、協力致します。」
こうして、私の日常は写真を
撮影する事によって私の記憶では
忘れてしまっても、写真という媒体を
使って思い出す事が少しずつ
出来るようになって来たのである。
「あぁ、そうだ。この日は私と暁斗と
庭を歩いたわね。この日は聖夜が
ガラス玉で遊び始めてはしゃいでたわ。」
「お嬢様…。やはり私はお嬢様に
写真を撮る事を勧めて
本当に良かったと思います。
こうして、お嬢様の記憶が
蘇っていく事を大変嬉しく思います。」
「そんな…。
でも、写真を撮り始めてから
こうやって過去の出来事を
思い出せる様になって私も感慨深いわ。
記憶をこうした形で少しずつ取り戻す事が
出来ている事で、
こんなに楽しいもの!…。
そろそろ行ってみようかしら。」
「お嬢様?」
「何でもないわ。気にしないで。」
私は写真のお陰で、毎日が楽しい物と
なって来ていた。
これも全て暁斗が私に写真を
勧めてくれたお陰だ。
しかし、暁斗がこんなに私に
良くしてくれているのに
私は暁斗には何も出来ていない事を
悩んでいた。
だからこそ、暁斗が口には出さないが
心の内で秘めている私が高校に
復学する事を考え始めていたのであった。
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