第9話 悲哀

 少年の目の前で両親が殺された。


 少年は一点を見つめたまま涙もなく動かない。刑事が質問。淡々と答える少年に刑事は疑念を抱いた。しかし刑事は気づいていない。腰骨の横で少年の小さな手は血が出るかのように固く握られていた。少年は抑えていたのだ。


 全身で泣いていることを。

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