第8話 欲の先にて

 男の欲は枯渇した。


 その男は全てを手に入れてしまったのだ。欲深き男は欲のままに生きた。欲による人生の支配。今やその欲がない。全てが叶うという辛さ。皮肉なもんだ。男は過去を懐かしんだ。ふと本棚に目を向ける。


 男の瞳には芥川の芋粥が虚しく映っていた。

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