第7話
途中、姫は目隠しをされた。訳の分からぬまま、手を引かれていく。足音が増えた。配下の兵に守らせている、と、将軍は言った。姫はそれを疑わなかった。
聞き覚えのない音が何度も聞こえた。帝国の武器だといった。賊を追い払っている。怪我をさせることもあるので、姫君に血を見せぬよう、目を覆っているのです。と、将軍は言った。
馬車に乗せられた。賊が大軍を率いてやってきたため、王国の兵と、我が手勢で邸宅城を守ることとしたが、その際に姫君を森の隠れ家にお連れするよう、国王陛下より仰せつかった。と。将軍は言った。
馬車は何度も跳ねた。その度に将軍は、姫君の肩を抱き、身体を支えた。
馬車を降ろされる時も、目隠しは外されなかった。賊が入り込んでいたため、やむなく討ち取った。と。将軍は言った。
煙の匂いが鼻をついた。帝国の武器は火を使う。そのせいだ。と、将軍は言った。
椅子に座らされ、気が付いた時には、両手を縛られ、身動きが出来なくなっていた。
「あ、あの、将軍様?これは一体」
彼女は、震える声でようやく尋ねることが出来た。視界を奪われ、動きを封じられ、ここで自分の置かれた状況を把握した、と言ったところだろうか。
「言うまでもないでしょう。姫君様」
目隠しを取られる。正面に、蒼の将軍。どこかうんざりとした表情で、じっと見つめている。その両脇に、黒尽くめの帝国兵。いや、そうではない。手にした武器は、黒く艶消し。変な形の棍棒。穂先のない槍。見たことがないものだった。布製なのに、固そうな鎧。頭を覆う帽子も同じよう。顔は布袋で隠している。兵士たちがその武器を向けると強い光で目が眩んだ。
「私は帝国の兵です。皇帝陛下の命とあらば、如何様な任も遂行します」
眩い逆光の中、将軍は右手を軽くあげた。
「もっとも、これには誰も関わってはおりませんが」
部屋の外で、大きな音がする。誰かが暴れている。何かを倒し、叩きつけ、引きずっている。
扉が開いて、それが投げ込まれる。
足元に転がったそれは。
「あぁ!お前たち、こんなことをしてタダで済むと思うな……!」
両腕と脚を縛られ、泥にまみれた、ルド王子だった。
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