第3話

その時は案外早くやってきた。

試験も終わって、後はほぼ休み……っていう寒い日の夜。お風呂上がりにtwitter覗いて、サブ垢で変なおじさん揶揄って遊んでた時。

窓から一瞬強い光が差し込んで、画面が白く霞んだ。慌ててバルコニーに出てみると、おしゃれなテーブルとチェアがあって、彼がそこで優雅にお茶してた。いやに丸いランタンの光で、彼の眼鏡が光って。でも、なんとなく笑ってるような気がした。


「おや、驚かせてしまいましたか」


私は部屋着一枚っきりで、でも、ちっとも寒く無い。眼下の夜景はいつも通りで、丸い月が、二つ並んでて……蒼いコートの裾が真っ暗な中に溶けて、私の足元まで伸びている。

「え、あの……」

「私の落し物を、預かってくださっているそうで」

目を離したすきに、私は彼の向かいに座っていて、手にはあの金細工が握られていて。私がそれをテーブルに置くと、まるで綿菓子のように溶けて消えた。替わりに、可愛いケーキと、良い香りを湯気に乗せて昇らせる、一杯の紅茶がテーブルから生えてきた。

「お礼と言っては何ですが、どうぞ。無理を言って、取り寄せたものです。味は確かですよ」

「あの、えと……」

彼は、無言でそれを勧めた。私はまた、月を見上げて、二つ並んだ満月で、明るい夜で、あぁ、これはきっと夢なんだ。そう、思った。多分スマホ握ったまま寝落ちてるんだ。やっちゃったなぁ……またママに叱られるかな。レスがないって、みんなが心配するかな。

「あぁ、それでしたらご心配なく。きちんとお送りいたしますので」

そんなことを考えてるのを、見透かしたみたいに彼がそう言ったから。私は何故か安心して、フォークを取った。

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