3 鳥になって、世界を超える。
鳥になって、世界を超える。
「こんにちは」と私は黒い鳥に挨拶をした。
すると黒い鳥は「君はどこまで飛んでいくつもりなんだい? 僕はこのまま、海を越えようと思っているんだけどさ」と楽しそうな声で私に言った。
私は「今はまだ、目的地はないんです。ただ、空を飛んでみたいと思って、空を飛んでいるだけなんです」と言った。
その私の言葉を聞いて黒い鳥は「……ただ飛びたいと思って飛んでいる、か。うん。いい言葉だね。なんていうかすごく『イノセンス』だ」と言った。
その黒い鳥の言葉は褒め言葉なのか、あるいはそうではないのか、私には判断できなかったので、私はにっこりと微笑むだけで、なにも言葉を話さなかった。
それから私はその黒い鳥と友達になって、二羽で一緒に少しの間、広大な青色の空の中を飛んだ。
「じゃあ、僕はこの辺りで。いい旅を。お嬢さん」と黒い鳥は別れ際に私に言った。
「あなたも気をつけて。いい旅を」と私は言った。
それから私たちは空の中でお別れをした。
でも、それからすぐに黒い鳥は一度、私のところに戻ってきて、「ごめん。一つだけいい忘れたことがあった」と私に言った。
私は「それはなんですか?」と黒い鳥に答えた。(もしかしたら、恋の告白かもしれないと思った。もしそうだったらすごく素敵だ)
すると黒い鳥は少しだけ間をおいてから、「この先に進むとしたら注意したほうがいい。『きっと夜には嵐になるよ』」と私に言った。
それだけいうと黒い鳥は今度こそ本当に私の元から去って行った。
それ以来、私がこの黒い鳥と再会することは、もう二度とないことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます