第111話カクシゴト


「取り敢えずそこに座っててね」

「今お茶持ってくるから」

「今ちょうど親も居ないしね」


そう言って足立さんは部屋から出ていった

最初は足立さんが風邪なので遠慮したのだが

足立さんの押しが強く言われるがままになってしまった。

しかし女子の部屋に来るなんて初めてで

先程以上に緊張する。

あ、なんだかいい匂いがするなぁー

こう、なんていうか女子!って感じの?

いやいやいや違う違う!

そうじゃないだろ!

くそっ!こんなとき彼女居ない歴=年齢が

悔やまれる!

そもそも俺自身、女子とそんなに話さないからか余計に緊張する!

あれ?でも最近は女子と結構話しているな?

昔は女子と話すのが苦手だったのに

なんでだろう?

それに親が居ないって!

それはそれで緊張するんですけども!

そんな感じで悶々としていたら足立さんが戻ってきた。


「はい、お茶持ってきたよ」

「あれ?また百面相してるよ?」


俺ってそんなに顔に出るのかな?


「それより体調がまだ良くない様だし取り敢えず横になった方がいいよ」


「ごめんねなんだか気を使わせて」


「いやいや、病人なんだから」

「無理しないようにしないと」


「それじゃあお言葉に甘えて」


そう言って足立さんはベッドに横になった。

ふぅーなんとか誤魔化せたかな

まぁ誤魔化すもなにも、ないんだけどね

それに余り女子の部屋をキョロキョロ見るのは良くないしね。

俺は足立さんが横になったのを確認して帰ることにした。

なんというか緊張して上手く話せない。

別にやましい事なんてないよ?

たぶん


「それじゃあ余り長居するのも、あれだし

プリントはここに置いて俺は帰るよ」

「あ、あとこれお見舞い品」


俺はプリントとお見舞いの品を足立さんの

部屋にある机に置いて帰ろうとしたとき足立さんから声をかけられた。


「せっかくお見舞いに来たんだし、もう少しいたら?」


「あ、いや余り長居すると足立さんもキツイと思うし」

「風邪引いてるんだから安静にしないと」


「ううん、私はもう大丈夫だよ」

「それに何か話したい事があるんじゃないの?」


そう足立さんが言ってその言葉にドキリと

した。

え、なんでわかったの?

エスパー?


「い、いや特にないよ」


ここはやっぱり誤魔化して、また機会をうたがって話そう。


「本当に?」


「ほ、本当だよ」


やべぇなんか何時もと違って今の足立さんは

なんかプレッシャーを感じるぞ。


「ふーんまぁ○○君がいいならいいけど」


はぁーなんだか色々と疲れるな。


「ま、まぁそういう事だから」

「取り敢えず今日は安静にして早く治す様にな」


「わかってるよ」


さてと今日はなんだか話す雰囲気じゃないし

俺は帰るかな。


「それじゃあ今度こそ帰るよ」


「うん、わかった」

「玄関まで送るよ」


「いや、病人なんだし」


「でも玄関の鍵閉めないといけないし」


うぐっ!確かに


「わかった」


はぁーなんだか逆に気を使わせてしまったな




「それじゃあ今日はありがとう」


「いや、俺はただプリントを渡しただけだから」


「ううん、それでもだよ」


「そっか、それじゃあお邪魔しました」

「次はまた学校で」


「うん」


そうやって帰ろうとするとまた足立さんから

声をかけられた。


「何時かは話してね」


「何時かね」


そう言って俺は足立さんの家から出ていった

やっぱり気がついていたか。

まぁあんだけ挙動不審だとね

流石に気がつくか。

しかし今日改めて足立さんに会って思ったが

『松本花菜』の事は足立さんに話した方が

いいのだろうか?

よくよく考えてみると

『松本花菜』曰く足立さんに話すのは危険の

様な感じがするらしいし

それを俺が言って余計に事態がややこしくなるかも知れないしな。

話すべきか話さずべきか

俺は帰宅する途中までその事について考えて

いた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る