第108話無力な自分


なるほど、彼女は一人だったのか

俺はまだ足立さんという協力者がいたから

まだ正気を保てたが。

普通は正気なんて保てない

彼女には言わないが正直その精神は異常だ。

いや、それともこの世界の影響なのか?

わからない。


「それでね、最初は足立さんにも声をかけようとしたんだけどね」

「さっきも言った通り私が消えてしまいそうで声をかけれなかったの」


「そっか」


俺はそんな短い言葉しか言えなかった。


「だから桜井くんと姫野さん遊園地に行くって言ってきてそれに○○君が来るって聞いてこれは近づけるチャンスだと思ったんだ」


「なるほどね」


そういう理由で俺に話かけてきた訳か

いや、この場合打ち明けたというべきか。


「まぁ結果は変わらなかったけどね」


「その、すまない」


「ふふっなんで君が謝るの」

「別に君が何かしたわけではないでしょ?」


そうかも知れない、いや実際その通りだ。

俺に出来る事なんて

ほとんどない、出来ているならとっくの昔に

している。

ただ彼女の言い方で自分自身が役立たずの様に言われてる様な感じがしたのだ。

彼女自身にその様な意図はないだろう。

寧ろ、俺に非はないと言っているのだろうが

俺はそう捉えてしまった。

そんな自分が無力な自分が嫌になる。

そう自分自身に嫌気が指していると彼女

『松本花菜』が話かけてきた。


「なんか、ごめんね長々と」

「そろそろ次の授業だから私は行くね?」


「あぁ」


そう言って彼女は教室へと向かった。

俺は未だにその場から動く事が出来ずにいた。

これからどう動けばいい?

俺一人では限界がある。

やはりここは足立さんにもこの話はした方がいいのだろうか?

いや、でも先程の『松本花菜』の話を聞くと

足立さんには『松本花菜』の事は話さない方がいいのでは?

もし仮にこの事を話して彼女が消えてしまったら冗談では済まない。

しかし第三者からなら大丈夫なのでは?

でも絶対に消えないという保証はどこにもない。

くそっ!本当にどうしたら!

気が付けば昼休みの終える鐘が聴こえてきた。

冷静ではない頭で考えても余計にこんがらがるだけか、まぁ冷静でもいい案が出るとも考えにくいが、それでも取り敢えずは俺も教室に向かうか。

あぁご飯食べれなかったな。

そうやって俺は一口も口につけずにいた冷えきったご飯をしまい教室に足を向けた。


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