第107話偽物の世界


一体、何時から私がこの世界の人ではないと

気が付いたのか。

もうそれすらも忘れたよ。

だけど気が付いたら私はここに、この世界に

いた。

最初は頭がおかしくなったと思ったよ。

いや、もしかしたら今でもおかしいのかもね

私にも家族がいる、だけど私がこの世界の人ではないと思った瞬間、発狂しそうになったよ。

今ある記憶も作られたものかもしれない。

友達は?家族は?恋人は?

みんなみんな全部が偽物だったんだよ。

正直何がなにかわからないまま

私は自分が本当は誰かもわからない気分だったよ。

何もかもがモノクロに見えて気が狂う。

ごめんね、何か余計なこと言ったね。


そうそう何で足立さんが苦手かって事だよね

うーん何て説明したらいいか、わからないけど私が彼女に接触、又は仲良くなったら


自分が消えてしまいそうな気がするんだよ。


何でだろうね?

私にもわからないよ

ただ直感?それとも本能が拒否してるのかもね。

もう一度言うけどごめんね。

私にもよくわからない事が多くて

正直自分の事で頭がいっぱいなんだ。

これが私が『足立恵』さんの事が苦手な理由だよ。



・・・・・・・・・・・・・・・・


なんと返せばいいのだろう。

彼女の言っている事が本当なら俺や足立さん

よりも残酷だ。


「なんで、なんで松本さんは今は大丈夫なんだ?」

「見ている限りではそんな素振り見せてないけど」


そう、そこだ俺がそんな状況に立たされたら

家に引きこもるか最悪、自殺してしまいそうだ。

そのぐらい彼女から聞いた話は残酷だ。

聞いただけでもこんな最悪なのに

本人はもっと最悪だろう。

だからこそ何故、彼女が『松本花菜』が

今の状態を維持しているのか

わからない。


「ふふっまたデリカシーのないこと言っている」


「す、すまん!」


そりゃそうかそんなに親しくないのに

こんな事を聞くなんて。


「まぁ○○君ならいいよ」


「え?」


「だから貴方なら話してもいいよ」


強いなこの子は、俺みたいな奴より

ずっとずっと強い。


「そうだね、最初はさっきも言った通り発狂しそうになったよ」

「全部が全部作られたもの」

「どうしたらいいかわからなかったよ」

「正直学校に行くのも嫌でしょがなかったよ」

「それでもなんでだろうね、まるでロボットの様に学校に行く支度をしてたよ」


まぁ一週間ぐらい休んで更に遅刻したけどね


そういう彼女はあははと笑いながら話す。


「それで学校に着いたはいいもののどうしようと思ってふと屋上に足が向かったんだ」

「屋上からの景色をみてこのまま落ちたら今の状態から解放されるのかなと思ったよ」

「そんな事を考えてたら屋上のドアが開いたんだ」


やはり彼女もそんな事を考えてたんだな

当たり前か。


「そしたらね、君と足立さんが来たの」

「悪いとは思ったけどつい隠れて聞き耳をたてたの」

「そしたらこの世界、現象について話しているのが聞こえたんだ」


なるほどあの時彼女もその場にいたのか。


「そうしたらあぁ私だけじゃなかったんだと思って安心したよ」

「だけど話を聞いてみると私と君たちでは

事情が違うみたいだった」

「最初は落胆したよ、だけど君たちについていったら何か解るかも知れないと思って」


だから君に話をしたんだ。

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