第15話急なテコ入れは困る
わぁーなんて素敵な場面でしょう。
その言葉をするのにどれだけの勇気や葛藤があったのでしょう。
昼下がりの屋上に二人の男女
そしてその台詞
うん!どこからどう見ても告白ですね!
ってえぇぇぇぇ!!!!
待ってちょっと待って確かにそういう感じの事を考えてました!
でもいくらなんでもこんな急展開ありますか!?
しかも相手はあの『桜井暖人』じゃん!
やっぱりイケメンはモテるんだねー
じゃなくて!展開に着いていけない!
一旦頭を冷やそう。
まず俺は一人で考えながら昼食をする為に
人気の少ない屋上へと足を運んだ。
そしていざ屋上の扉を開けようとしたら
絶賛悩みの種である『桜井暖人』が告白されている。
いや、待てよ
冷静なって考えてみたらこれはある意味物語が進んでいるのでは?
俺の推測ではここは何故かは不明だが
少女漫画の世界
ならばこの展開は俺が知らない内に何処かで
『桜井暖人』がフラグをきちんと建てて
今はある意味物語の大事な告白イベントと
いうやつでは?
もしこれが正しいのであればこのままいけば
俺や足立さんが何かをする必要はないのではないだろうか。
そうだよ、いって俺や言い方は悪いが足立さんはもし本当に少女漫画の世界なら
モブキャラでしかない。
物語の背景、それでしかない。
本来ならこんな事に巻き込まれていることが
可笑しいのだ。
ただ思うのは、なら何故俺と足立さんは
本来、存在しない人間を認知しているのだろう。
本当は最初から『桜井暖人』という人間は
存在していて
ただただ俺と足立さんの頭が可笑しくなったという事になる。
それと不自然な程の展開などもただの偶然で
そう感じているだけなのかもしれない。
謎が残るばかりだ。
でも正直どれが正解なのか分からない
だからこうして悩んでいるのが現状だ。
自分のお粗末な頭に嫌になる。
だが時は待ってくれない。
始まってしまった物語は勝手に進んでいく。
「あの、お返事をいただけますか?」
「えっと」
もうくっついちゃえばいいんじゃないでしょうか。
ない頭で考えても、もう分からない。
まぁヒロインが告白するにしては早すぎる気がするがまぁ別にいい
「綾地さんだよね?」
ん?
あれ?あの転校生の『姫野あかり』じゃないの?
えっ待ってここに来て新キャラ?
ちょっと聞いてないよ!
いいの?このまま話を進めても!
普通あの転校生がヒロインじゃね?
いや、最近の少女漫画などは複数のヒロインがいても可笑しくない。
ならこの展開もいいのかな?
「あの綾地さん、実は」
その言葉を聞いた時、このまま話を続けさせたら取り返しのつかないことになると
頭が痙攣を鳴らした。
まるで世界の終わるボタンを今、目の前で
押そうとしている用な
そんな危機感にも似た何かに襲われた。
ヤバいそう思った瞬間俺はこれ以上
二人に会話をさせるのは不味いと思い、
あえて大きく扉を開き直ぐに扉を閉めて
近くの影に隠れた。
すると
「「!?」」
二人はその音に気がついた。
幸いどうやら角度的に俺の姿は見られなかったようだ。
「そのごめん!」
「今は返事を返せない」
「だから少し待っていてもらえないかな」
「う、うん」
「本当にごめんね!」
「それじゃあその先に戻るわ!」
俺はそんな二人の言葉を聞き流しながら
未だに心臓がバクバクと大きく音を
たてながら考えていた。
なんで俺は今の会話に急に危機感を感じていたんだ?
というよりあまりにも不自然過ぎないかいまの?
訳が分からないが取り敢えずはあの奇妙な
危機感は去っていた。
なんなんだよ一体
俺は一人になった屋上でただただ安堵していた。
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