3-5 いきなりデートの約束!?
そして、翌日—。
いつものランチの時間に学食で一緒になった時に真智子は絵梨に伝えた。
「昨日、慎一から幸人さんに電話で聞いてみたんだけど、幸人さん、絵梨から名刺に連絡くださいって」
「えーっ!?それホント!?」
絵梨は一瞬、眉を顰めたが、考え込むように続けた。
「…えっとね、幸人さんからは名刺をもらって、なんでも相談してって言われたけど、ホントに連絡してもいいのかなって思ってたの。そっか……。演奏会の時に話せればいいなって思っていたんだけど、どうしよっかな」
「せっかくだから、連絡してみたら?」
「…だけど、いきなり電話かけても何、話していいかわからないし、緊張するよ」
「幸人さんは弁護士さんだし、電話の対応は慣れてると思うけどね」
「そうだよね…。じゃあ、アンサンブルの練習が終わった後で電話かけてみようかな。真智子、側にいてくれる?」
「えっ!?もちろん、いいけど」
「よかった。じゃあ、アンサンブルの練習の後でね」
緊張気味ながらも紅潮していてる絵梨の表情に真智子は内心ドキッとした—。
アンサンブルの練習は学内発表会が近づき佳境に入ってきたせいか、管弦楽のメンバーとの息も大分合うようになってきていた一方、他のメンバーそれぞれが他の課題や用事に追われていたため、その日は早々に練習を切り上げることになった。
—そしてその後、真智子と絵梨はいつものようにふたりで帰途についた。
「じゃあ、今から電話してみるね」
絵梨は校庭のベンチに座ると鞄の中から携帯と名刺を取り出した。真智子は絵梨の隣りに座ると電話番号をプッシュしている絵梨の様子をじっと見守った。
「もしもし、長井絵梨といいますが…」
「あっ、絵梨さん。こちら、真部幸人です。さっそく電話をくれたんですね」
「はい…」
「今はどこから?」
「まだ大学にいます」
「えっと、大学は真智子さんと一緒の桐朋短大ですよね?」
「はい…」
「大学の授業はもう終わったの?」
「ええ、まあ…」
「じゃあ、今日の夕方6時頃に何か予定は入ってますか?」
「特に予定はないです」
「じゃあ、一緒に食事でもしましょうか」
「いいんですか?」
「絵梨さんの都合がつくなら」
「私は大丈夫です。6時にどこで待っていたらいいですか?」
「練馬駅まで来れますか?」
「はい、たぶん大丈夫です」
「じゃあ、練馬駅大江戸線の改札付近で6時に」
「わざわざ、時間を作ってくださってありがとうございます」
「こちらこそ、電話をありがとう。では、後ほど。楽しみにしてます」
電話を終えると、絵梨はにこっと嬉しそうに真智子に顔を向けた。
「今日、一緒に食事することになっちゃった」
「もう、デート?」
「どうかな。とにかく会ってくる。それで、待ち合わせ場所が練馬駅なの」
「幸人さんの弁護士事務所、確か練馬にあるのよ。まだ時間があるし、家に来る?」
「うん。名刺にも書いてあるね」
「じゃあ、一緒に帰ろっか。夕飯の買い物も少し付き合ってもらおうかな」
「了解」
真智子と絵梨はベンチから立ち上がると校門へ向かって歩き始めた。
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