2-4 叔父との電話
一方、慎一は真智子からのメールに取り急ぎ返信したものの、突然、自分たちの部屋に真智子の同僚が来ることについて内心、慌てつつ、真智子が連れて来るという絵梨について想像を巡らせていた。こんな風にふたりの間に誰かが入るのは久しぶりだなと思いつつ、ふっと高三の頃のことが脳裏をよぎり、叔父の真部幸人のことを思い出した。
—そういえば、引っ越しの時お世話になって以来、連絡取ってなかったけど、叔父さん、どうしてるかな?演奏会の日程もそろそろ連絡した方がいいし、久しぶりに連絡取ってみるかな—。
慎一は叔父の真部幸人に電話をかけた。
「慎一君、何かあった?真智子さんとは仲良くしてる?」
「叔父さん、久しぶり。えっと……なんとなく、どうしてるかな?って思って」
「まあ、相変わらず、仕事に追われてるよ」
「そうだよね。えっと…今日、真智子が友達を連れて来るらしいんだけど、外で食事とか一緒にどう?」
「今から?」
「今から…というか、僕もまだ大学だし、もちろん、夜でいいんだけど。夕飯のことは任せてって言っちゃったからさ。叔父さん、食事処とか詳しいでしょ」
「ああ、そういうことね。…デスクの仕事は山積みだけど、出かける予定は今夜は入ってないし、いいよ。その…真智子さんの友達がどんな
「じゃあ、外食する場合は叔父さんに任せるけど、その友達のことは真智子が今日、突然、連れて来るって連絡してきたけど、絵梨さんって名前で真智子のアンサンブルのパートナーということしかまだ知らないんだ」
「そうか……。じゃあ、その絵梨さんって人は真智子さんとふたりで話したいことがあるんじゃないかな」
「そっか。じゃあ、僕たち邪魔かもしれないね」
「まあ、でも夕飯のことは任せるって真智子さんに言われたんだろ?」
「まあ、そうだけど……」
「それなら夕飯までふたりきりにしてあげればいいんじゃない?」
「そうだね」
「そうそう……、じゃあ、今、四時を過ぎたところだから夜七時頃に車でマンションに迎えに行くってことでいい?もし、急な用で無理だったら、連絡するけど、そうなった時は適当にファーストフードとかピザでも買って帰れば?」
「了解。じゃあ、そうするよ。あ、それから、演奏会の予定のこともそのうち伝えようと思ってたんだ。真智子も演奏会を控えているから、それぞれの日程とかリーフレットを後で送るから気分転換にでも聞きに来てよね」
「まあ、演奏会についても都合がついたらだけど、できるだけ聞きに行けるようにスケジュール調整するよ」
「ありがとう、日程については早めに送るよ」
「じゃあ、仕事もあるからそろそろ電話は切るけど」
「わかった。じゃあ、七時頃に。急な用が入ったら、すぐに電話してね」
「了解」
慎一は電話を切るとホッと胸を撫で下ろしながら、叔父と一緒に暮らしていた高三の頃、食事のことではよく叔父に世話になったことをしみじみと思い出していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます