2-2 突然の悩み事
—そんなある日のこと—。
アンサンブルを組むことになって以来、よく行動を伴にするようになった真智子と絵梨だったが、その日、絵梨は顔色が悪く、声をかけてもいつもとは違う虚ろな様子で真智子は気になった。
「絵梨、顔色が悪いけど、大丈夫?」
「えっ、うん……。実は昨日、落ち込むことがあったんだ。それで、夜もあまり眠れなかったし、朝から胸が苦しくて……」
「じゃあ、今日はあまり無理をしないようにしようね」
「……とにかく一人になりたくなくて……真智子、ずっと一緒にいてくれる?」
「もちろん、いいよ」
「よかった。それから後で真智子に聞いて欲しいことがあるの」
絵梨の様子が心配だったので、その日のアンサンブルの練習は早々に切り上げ、ふたりは帰途についた。
校門に向かって校庭を一緒に歩いている間、ずっと押し黙っている絵梨を気遣いながら、真智子はどうしたらいいかと思案していた。
「あのさ、突然だけど、今日、気分転換に家に来る?」
「えっ、それは……お家の方にご迷惑じゃないかしら?」
絵梨にそう言われて、まだ絵梨には慎一と同棲していることを話していなかったことを思い出して、真智子はハッとした。
「……何か話したいことがあるんだよね!?」
「うん。もうなんだかショックで何をしてても気分が落ち込むの。両親にもあまり心配かけたくないんだけど……誰にも相談できなくて」
「そっか……、それでどうしたの?」
「……うん。……まだ、苦しくて話せない」
「もしかして、長谷部先生のこと?」
「そう、先生のこと……。私、失恋したの」
絵梨の目から涙が零れ出して頰をつたったのを見て、真智子は慌てて絵梨の肩を抱き寄せた。
「そっか……、それは苦しいよね」
絵梨の髪を撫でながら真智子は慎一となかなか連絡が取れなくなった時のことを思い出していた。
「ごめん。こんなところで」
しばらくすると絵梨は涙を拭いて顔を上げた。
「ここ校庭だし、大丈夫だよ。それより、絵梨のことが心配……」
真智子は意を決して続けた。
「とにかく、今日はよかったら、家においでよ。話、聞いてあげるから」
「いいの?」
「うん、一応、今から連絡してみるけど、たぶん、OKだと思う。それでね、びっくりさせちゃうかもしれないけど、実は私、慎一とは一緒に暮らしてるんだ」
「えっ一緒に暮らしてるって、同棲だよね。そっか……、プロポーズされたって言ってたし、結婚前提のお付き合いでなんだか仲が良さそうって思ってたんだ」
「あっ、だけど、このことは他の人には内緒だよ」
「でも、ご両親に公認されてるんだよね」
「一応、そうだけど、内緒にしてね」
「うん、わかった……それで、ふたりの愛の巣に私がお邪魔しちゃっていいの?」
「……愛の巣って程のこともないけど今から一応、慎一には確認とってみる」
真智子は携帯を取り出し、アンサンブルのパートナーの絵梨を家に連れて行く旨のメッセージを慎一に送った。ふたりは校庭のベンチに座って、ぼんやりとしながら慎一からの返信が届くのを待った—。
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