第3話破滅
「すべては世の中のせいだ!」と思う人。俺もそう思う。しかし、共感できても君の思いを世の中に認めさせる力がない。さらに世の中を君の思うようにできる物理的な力もない。自己責任という世の中だ。共存共栄という言葉は死語みたいだ。
ゆうたろう41歳。
世界を知ろうと日本を出る勇気もなければ、金もない。ただただ己の生活だけ無事でいさえすればいい。彼女も40後半でだらだらと付き合っている。小さいころに刷り込まれた、結婚して子供産んで、マイホームを建てて朗らかで幸せな家族を築くなんて、まったく真逆の人生だ。彼女は、この状態で文句1つもあるだろうが何も言わない。不思議だ。
そう、不思議だ。なんだか俺の人生は不思議な人生で終わるのだろう。これでも幸せだ。悔しい思いは山ほどあるけど、悔しい思いを解消するツールがない。ツールがないストレスを酒で逃がす。それでまたリセット。悔しい思いはそんな程度か。そんな程度と思わせるようになったのか。
カネがあればいい。あるだけあればいい。なんでもできる。欲しい欲しいと待っている俺。バカである。カネを作る才能がない。働いて金を貰うことはできる。自分で何かを売って儲ける才能がない。受動的な生き方は全てに受動的になるのか。
俺はなんなんだ。世の中をどうしたいんだ。刹那的な余裕が己に疑問を投げかけ、刹那的に疑問は消えて、日常の流れにさらされる。平和である証拠か。目標も目的もなく、ただ彷徨う。年も重ねてくると新しいことを嫌がる。面倒くさいからだ。無意識になって1日を過ごし、日を重ねていけば、それでいい。疑問はなんなんだ。なにかをしたいのだろう?それがわからない。きっかけがない。すべてが待ちの姿勢だ。
涙がでてくる。涙の理由がわからない。くやしさ・ねたみ・ふがいなさ・やるせなさがマーブル状に絡み合い、何をしても混ざらない。泣いて泣き止んで、また朝になる。日常の川に流される。なんなんだ、これ。
街で人を見る。今は年末。酒に酔った人たちが、カラオケとかもう一軒とか、言う。うれしそうな顔、迷惑そうな苦笑いの顔。幸せそうである。幸せそうである。俺の涙は何だったんだ。幸せそうに見える顔を見て安心する。楽しそうだな、面白うそうだな。俺も参加させてくれよ。さっきまで泣いていたのに、この変わり様。日々の1秒ごとに刻まれる事実は、たいしたことはないんだろう。それは死でリセットされるからだ。
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