第4話 女性の魅力とは容姿を除けば 強さと優しさ そしてツンデレに集約される
「はあ……はあ……。」
「うっ……ひっくえぐ……。」
「くっ!……こんな……。」
字面にすると少々、艶やかな吐息を、美女たちは三者三様に漏らしていた。
大仕事を成し遂げた俺は、そんな三人の事を確認するため、再度ステータスを開いている。
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『キャラクター名【セティア・エーゼス】
レア度【☆5 UR】
職業【聖剣士】』
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セティアは(実質、)最初に仲間にした黒髪ロングの美女だ。見た目は容姿端麗で、いかにも清楚に見える。先程、少し会話を重ねた感じでは、無口というわけではないが、クールな印象だ。薄手の防具と腰に下げた剣鞘がさらに堅固なイメージを助長している。こんな女性が先程あんな事を・・・・・・。などと考えると堪らなくなる。
俺は甘い回想を抑えて隣でうずくまるショートカットの少女のステータスを確認した。
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『キャラクター名【メル・マモット】
レア度【☆5 UR】
職業【魔元師】』
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メルは小柄な女の子だ。その体躯に似合う、華美な装飾の無いシンプルなローブと、【魔元師】という職業からして、魔法を扱うのに長けているのだろう。
「ぐすん……。うぅ……。」
先程の行いがよっぽど刺激の強いものだったらしく、メルは泣いていた。こんな嫋やかな女の子を泣かせてしまったのか、俺はなんて罪なのかと、少しばかり心を痛めていると。先程から元気な美女が俺を指さしてこう言ってきた。
「あんたね!目の前で女の子が泣いてるのに!ニヤニヤしてるって、どういう神経してるの!?」
そう言われて俺は口元をさすった。確かに口角が吊り上がっている。
(いかんいかん、天性の変態気質が表情に出てしまっていた。泣いている女の子を前に罪悪感と興奮が入り交じってしまった。前の職場では割とポーカーフェイスと言われていたんだけどな。)
表情を整えてから、俺を指さした人物のステータスを確認した。
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『キャラクター名【レビィ・ウォシュ・サラーヌ】
レア度【☆5 UR】
職業【神弓士】』
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さっきから、こちらに食ってかかる美女は、どうやらもう落ち着きを取り戻しているようだった。立ち上がったその姿は、美しいという言葉では安いように感じられる。すらりと伸びた手足と透き通るような肌。同じく透き通るような金色の毛髪は、頭の上部で二手に結わえられていた。こんなにメンヘラ性を感じないツインテールを、初めて見たかもしれない。
俺は3人のステータスを確認し終わり、 今後の行動を考えることにした。
「とりあえずこのまま日が暮れたら野宿になってしまう。どこか街を目指そう。誰か、この辺の土地勘のある人はいる?」
三人とも、暫し黙していたが、レビィが言葉を発した。
「この場所がどこかは分からないけど、人がいる場所なら多分探せると思う。」
「どういうことだ?」
俺が尋ねると、言葉を制止するようにレビィは目を瞑り、何やら小声で呪文のようなものを唱えた。
そのまま数秒の間、レビィは集中していたが、何かに気づくと斜め後方を指さしてこう言った。
「こっちの方角に丸一日ほど歩けば、集落に辿り着けるわ。人の気配も多いから、多分それなりに大きな町だと思う。」
「おお!感知能力か?すげえな!ありがとう!」
俺は素直に思った事を伝えると、レビィは顔を赤らめた。
「べ……別に!!ちょっと耳が良いだけよ!魔力でそれを少し高めただけ!・・・・・・それに、あんたの為にやった訳じゃないんだからね!あんたと野宿なんてしたら、ヤバいに決まってるんだから!!自分の身を守るためにやったの!」
(か……可愛い・・・・・・。)
これほどまでに綺麗なテンプレートのツンデレは素晴らしい。俺は心の中で大きなガッツポーズをしながら、平静を装うのに必死だった。
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レビィの指示した方角には草原の向こうに森が広がっていたが、街らしきものは見当たらなかった。一日歩いただけで、本当に街につくのか、少し懐疑的だったのだが、その答えはすぐに分かった。
ーー歩くのが速いのである。
というか、もう走っているんじゃないかというくらいのスピードで、レビィは歩を進めていた。その後ろをセティアも息を切らすことなく続いている。
(これが☆5 URのステータスか・・・・・・。)
「ふぇぇ・・・・・・。早いです~。」
すると、俺のすぐ後ろから声がする。メルだ。恐らく魔力に極振りステータスなのだろう。運動能力は初心者冒険者の俺と変わらないようだ。
「大丈夫か?確か回復薬がたくさんあったはず・・・・・・。」
回復薬を探そうとして立ち止まった俺に、追いついてきたメルが制止した。
「あ、大丈夫です。 ちょっと待っててくださいね・・・・・・」
そう言うとメルは、手を前にかざし簡単な詠唱を始めた。
フワッと身体が軽くなる。
「おおー!回復魔法か!一気に身体が軽くなったな。」
「いえ・・・・・・その・・・・・・正確には『スタミナ回復』の魔法です・・・・・・。それから・・・・・・行動が速くなる付与魔法もかけました。」
そう言うと、メルは物凄い速さで歩き出した。俺も追いかけようとして、 足を運ぶと、 足が物凄い速さで回転してすぐにメルに追いついた。
「すげぇな!これなら、あいつらのペースでも大丈夫だ!メル、ありがとう!」
そう言うと、メルは顔を赤らめ少し戸惑いながら、「ニコッ」と笑顔を向けてくれた。優しく朗らかなその笑顔を見て、俺はただただこう思った。
(ああ。メルたんマジ天使。)
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暫く進んで一行は森の中に入った。人幅以上の歩きやすい道を進んでいくと、急に前の2人が立ち止まり身構えた。
「いるわね。」
「うむ。」
どうやら、敵が近くにいるらしい。メルも俺の後ろに隠れてしまった。張りつめた空気の中、俺の上着の袖を掴むメルに萌えていると。突然、茂みの中から唸り声と共に、オオカミのような獣が現れた。
「ガルルルル!ガウァァア!」
オオカミにしてはかなり大きな体躯で、俺達を敵と見るなり、俊敏な動きでこちらに突進してきた。その刹那⋅⋅⋅⋅⋅⋅。
シュン!バサッ!
「クゥーン⋅⋅⋅⋅⋅⋅」
子犬のような断末魔と共に、大オオカミは倒れた。セティアが剣を鞘に戻している。
「かなりレベルの高い魔物ね。」
レビィが構えていた弓を下ろしながら呟いた。
セティアの方を見ると、既に何事も無かったように、歩みを進めようとしていた。一瞬の事に気を奪われていた俺は、楚々とした姿に心まで奪われそうになっていた。
(綺麗だ······。 )
ただ素直にそう思った。
こうして俺は、ログインボーナスの賜物で、強大な戦力とハーレムモードを手にしたのであった。
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この世の条理はいつも明確だ。
絶望の果てに光が差し込むこともあれば。
磐石な地盤がチクワブロックだったなんてことはいくらでもある。
(この先、何か悪い予感がするなぁ······。)
人間の第六感は意外と鋭い。こういう類いの予感は大概当たるのである。
(続く)
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