第5話
私は臨床心理士。心の負担に押し潰されそうな人々の支えとなるのが私の生業である。
今日も私の前に、黒く重い苦しみを抱えた子羊が姿を現した。
私の前に座るのは、頭を明るい色に染めた女学生である。
「今日はどうされましたか?」
私は何色にも染まらないような声を発する。
「がっこで、ハブられてて。」
「そうですか。」
(ハブ?毒蛇か。あなたはよく無事で生きているな。)
「何してもリムられるってゆーか。」
「それは苦しいですね。」
(リム?リムジン?送迎付きなのか。若くしてお大尽ではないか。)
「生きててもしょうがない、みたいな。陰キャのぼっちに人権ないし。」
「そんなことはありませんよ。」
(人権とは、大きく出たものだ。若気の至りか。)
「ってゆーかセンセー、あーしの言ってること、分かってる?」
「大丈夫ですよ、伝わっています。」
(あなたの言葉の大半は意味不明だ。だが、不都合は無い。)
私は人を安心させるような笑みを浮かべた。
今日も良い仕事になりそうだ。
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